昨年発表された、このミス海外編1位「その女アレックス」の
著者、ピエール・ルメートルの最新刊「悲しみのイレーヌ」を
いっき読みしました。
「その女アレックス」は著者の作品の第3作目に当たり、
「悲しみのイレーヌ」は第1作目でデビュー作です。
「悲しみのイレーヌ」は、「その女アレックス」に登場する刑事が主人公です。
刑事の名前はカミーユ・ヴェルーヴェン警部。
チェインスモーカーの母親は、カミーユを妊娠していた時も
変らず喫煙していたため、カミーユは発育不良で、成人しても
身長が145センチ。それでも美しい妻を得て、さらにもうすぐ
子どもも生まれるという幸福の絶頂にいた。
また、仕事では優秀な捜査官で彼のまわりには優秀な部下たちが集った。
そんなある日、部下の一人から殺人事件の知らせが入った。
その現場は、彼らが今までに見たこともないほどの残虐さだった。
女性二人が殺害されたらしいが、身体がすべてバラバラにされている上に、
頭部も原型をとどめていない、誰のものだかわからない死体だった。
狂気としか言いようのない現場。そしてそこに残る奇妙な指紋。
ヴェルーヴェン警部たちはいったいどこから手を付けてよいのかわからない状態。
これまで経験したことのない事態に、皆ショックを受けていた。
だが、ヴェルーヴェンは何とか皆を鼓舞し事件解決に向かうよう捜査の指揮をとる。
手掛かりは、「奇妙な指紋」だけ。
そして難解なパズルのピースをひとつひとつはめていくような地道な捜査の結果、
ある重要なヒントが見つかる。
「指紋」を追った結果、事件はこれだけではなく以前にもあり、その事件現場はみな
有名なミステリー小説の殺害現場を再現したものだったのだ・・・。
「その女アレックス」でこれまでにないミステリーの世界観を示してくれた著者。
ただの犯罪小説で終わる理由がない・・・。と思っていたら・・・。
この作品にはまだ壮大な仕掛けが施されていた。
最後まで読まないと絶対に辿りつけないその大きな仕掛け。
それに気が付いた瞬間、思わず唸ってしまった!
デビュー作でこれだけやってしまうミステリ作家っていったい何者!?
ある意味「その女アレックス」以上の読後感。
このルメートルと言う作家、ただ者じゃないですぞ!
『悲しみのイレーヌ』
著者:ピエール・ルメートル/橘明美訳
出版社:文藝春秋(文庫)
価格:¥860