連日の雨が嘘のようにやんだ、2015年2月15日、本の学校で京極夏彦さんの講演会を行ないました。
会場は、京極さんの登場を今か今かと待ちきれない様子のお客様で超満員。
大きな拍手とともに、京極夏彦さんの講演会が始まりました。
お着物で登場の京極さん。この日は茶色でコーディネート。ちらりと見える襦袢の黄色が差し色でとってもおしゃれ!さすがですね!

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今回の講演会のテーマは「妖怪と、本」。
冒頭から「最近、車に轢かれたネコが活躍するものが流行ってますね」と妖怪ウォッチの話からスタート。
いきなり会場も笑いに包まれます。
「『あんなの妖怪じゃない!』なんていう人がいますが、妖怪と書いてあるんだから妖怪なんですよ」と京極さん。
仏教哲学者の井上円了、江戸時代の絵師・鳥山石燕、民俗学者の柳田國男、それぞれの妖怪学や妖怪画、民俗学を私たちが知っている「妖怪」としてプレゼンテーションしたのが水木しげるさん。
水木しげるさんがプレゼンテーションしたお陰で「妖怪」というキャラクターが私たちの目の前にでてきたとのこと。
これまでの妖怪の作り方と、妖怪ウォッチはなんら変わりはなく、妖怪ウォッチはプレゼンテーションが非常に今日的で優れていたから、少し違和感を覚える人があるのでしょう、と。
流行っているということは、確実に大衆のなにかを掴んでいるのだから、流行っているからといってバカにしたり見なかったりするようなことはしてはいけません。
そこから学ぶものはたくさんあるので、流行しているものはちゃんと見ましょう とおっしゃってました。

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良いコンテンツはゴロゴロしているので、自分で見つけて面白かったならそれを周りに広めていけば、たくさんの人たちに読んでもらえるようになります。
「それは“読者の力”ですよ」
聞いている私たちも、無意識に力が入ります。
面白いものは必ずあって、自分で見つけなければダメなんだそうです。
「本読みにプロもアマもありません。本を読んだら読んだ人が王様です。自分が面白いと思ったら他の人が面白くないと言っても、面白いと言い続けるくらいの人でないと、ちゃんとした読書はできませんよ」
ついつい私たちも、誰かのオススメに頼ってしまいがちです。“本を読んだら読んだ人が王様”、この言葉を聞いて震えました。

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京極さん曰く、
“妖怪”というのは概念であり、実在するものではありません。
妖怪という枠があって、そこに何かを入れることによって生活や人生を乗り切る為のツールにしているにすぎない。
その枠には何を入れるのか・・・
それは実際にあるものではなく、気持ちや文化や記憶など“目に見えないモノ”。
私たちは実際に目で見ている現実の部分と同じ分量だけ頭の中や胸の中に現実でないものを抱えています。
それがなければ生きていけなくて、目に見えないものを形にしたのが、“妖怪”であり、“本”である。
本に書いてあることはどんなに事実だと言われても、文字という記号でしかないのだから事実ではありません。
ならんだ文字を読んでいくことによって、読む人の心や頭の中にドキドキやワクワクが自ら湧き出ます。
物語はテキストの中ではなく、読んだ人の中に湧くのです。
・・・京極さんの一言一言に、会場はシーンとなり、みなさん真剣な表情です。

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「面白がろうと能動的に本を読むと、人生が2倍も3倍も楽しくなるんですよ」
京極さんの声にも力がこもります。
みなさん、大きく頷きながら聞き入ってます。
「目に見えない世界は大事なもの。妖怪も本も“枠”だけあって、その時々の人たちの求めるものがその“枠”の中に入るのです。
妖怪を心に、本を手にしていると人生がより楽しくなります」
なんて素敵な言葉なんでしょう!この締めの言葉に、会場からは割れんばかりの拍手が!

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時に真剣に、時に笑いも起こり、時に声に出してしまうほど感心し、あっという間の1時間でした。
けれどとっても濃密な1時間だったことは間違いありません。
最後に、感謝を込めてスタッフから花束を贈らせていただきました。

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“本を読んだら読んだ人が王様”
“妖怪を心に、本を手に”
忘れられない言葉になりました。
京極夏彦さん、貴重なお話をありがとうございました!

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