第63回本の学校読書会レポート

7月26日(木)に第63回本の学校読書会を行いました。
課題図書は、「怖い絵」シリーズでおなじみの中野京子さんの「怖い絵で人間を読む」(NHK出版)です。男性5人、女性5人の計10人で話しました。

それでは、トピックです。

課題図書:中野京子『怖い絵で人間を読む』(NHK新書)
・「絵画」にはその絵に隠された意図がある。その意図や背景を知った上で「絵画」を見ると、絵画鑑賞が非常に面白くなる。人間の心の奥底を垣間見ることが出来る・・・。この本に収められている、名画の数々の「怖さ」について解説している。

・読後の全体的な感想は、「‘絵画鑑賞’に歴史背景や、画家の意図って必要?観て楽しめばいいんじゃないか?」「中世ヨーロッパの歴史が難しい。」「収録されている‘絵画’は全て素晴らしい。」「インパクトのある絵が多い。」「中世ヨーロッパが栄えている時代は、怖い時代だった。」「‘絵画’の歴史的背景が非常に面白かった。」「解説があっても、あまり絵が怖いとは思わなかった。」「著者のあとづけで怖くしているように思う。」「人間を読むと言っているけれど、人間ではなく歴史を読んでいるような気がする。」

参加者が印象に残った「絵画」
・ベラスケス作「フェリペ・プロスぺロ王子」の肖像画。
一見、可愛い王女様と見える。しかし本当は女の子の姿をさせられた2歳の王子。青白く病的に描いてある。スペイン・ハプスブルグ家の血統を守るために近親結婚を繰り返したため、子どもは長生きできない。そんな悲劇を背負った暗いイメージ。この時代は日本の貴族階級でも男の子が生まれると、小さいときは「女の子」の姿をさせていた。男の子は「弱い」という呪いから守るために女装をさせていた?霊性を高めるためとの説もある。
・ゴヤとルーベンスの描いた「わが子を喰らうサトゥルヌス」の比較。
一見すると、ほんとに恐ろしい絵。ローマ神話に登場する、農耕神サトゥルヌスの悲劇と狂気を描いた。ゴヤの描く絵は「人であることをやめた者」の表情が恐ろしい。画家の生き方をも絵に映し出した傑作。
・イリヤ・レーピン「皇女ソフィア」
ひと目見ると、もの凄い形相で怒っているおばさん。怖~い。近寄りたくない~。実はこの絵は、弟との権力争いに敗れた皇女ソフィアが修道院に幽閉されている。しかしこの憤怒の形相はいつか復讐してやるとの強い決意が感じられる。弟への復讐心がめちゃめちゃ感じられる怖い絵。
・ドラクロワ「怒れるメディア」
暗い洞窟に二人の子供をつれ隠れる女。その手にはナイフが握られている。そのナイフは我が子に向けられている!ギリシャ神話の英雄・イアソンに恋したメディアは、彼との間に子供をもうけるが、イアソンが裏切ったため彼の子どもを殺そうとする・・。復讐のために我が子を手にかけるって恐ろしいと思うけど、神話にはその手の話が多い。この絵が描かれる時代、こどもは虐げられていたのかな?童話も子どもたちが苦しめられる話が多いし・・・。
・クノップフの風景画「見捨てられた街」
誰が見ても不気味に感じる。まるでスティーブン・キングの映画のよう。「ミスト」とか。この絵を見せられたら、友人たちがフェイドアウトしてゆく感じがする。

・疑問に思ったこと
天才的な画家の描いた「絵画」。誰が評価しているのか?凡人が評価したものを一般人がありがたがって鑑賞しているのか?天才の絵を凡人が評価?何を基準にしている?
今は名画ともてはやされているけれど、生きている時に評価された画家は少ない。それってどういう事なのか?
宮廷画家、パトロン、将軍家お抱え絵師、バックに何者かがついていないと「絵」とは認められないという歴史がある・・・・。
などなど、芸術の世界についての疑問点などの意見もあった。

様々な意見が出たけれど、何も知らない状態で絵を鑑賞した場合と、バックグラウンドを知って鑑賞した場合、後者の方がより絵画を楽しめるのではないかという意見があり、課題図書にあげて良かったと思う。

次回、8月の本の学校読書会は、久しぶりに内田樹先生の本が課題図書になりそうです。

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