直木賞作家・池井戸潤氏の原点

昨日に引き続き、江戸川乱歩賞受賞作を紹介します。なんと言ってもミステリー小説の登竜門なので、ミステリ小説を語るなら乱歩賞受賞作は避けて通れない。しかも傑作が多いです。

昨年7月に『下町ロケット』で直木賞を受賞した、池井戸潤氏も乱歩賞受賞作家さんです。第44回江戸川乱歩賞受賞作『果つる底なき』でデビュー。『果つる底なき』は直木賞作家・池井戸潤氏の原点。

近年、池井戸さんは骨太な企業小説が多いですが、実はミステリー作品も非常に面白い!『果つる底泣き』はデビュー作とは思えない完成度。

元銀行マンという池井戸さんの経歴を活かし、銀行を舞台にしたミステリー作品です。

「なあ、伊木これは貸しだからな」という謎の言葉を残して坂本は死んだ。死因はハチによるアナフィラキシーショック。翌日、坂本の不正が発覚する。顧客の口座から自分の口座へ送金していたのだ。しかし伊木は坂本の無実を信じ、坂本が生前何をしようとしていたのか調べ始める。

作品発表当時は、大手銀行の破綻、不良債権の焦げ付きなど金融不祥事がクローズアップされていた時期。この作品で、銀行の内幕を知った人も多かったのではないかなと思います。
かくいうはまさきも、銀行内でどのようなことが起こっているのか、全くわからなかった。この作品を読むことで、銀行の内幕や、不正などあまり表に出ない、銀行の闇の部分を知った。その闇の部分をミステリーとして描くことで、この作品の面白さが増しているような気がする。じっくりと味わって読める、硬派な大人のミステリー作品。(渋い!!)

近年、池井戸さんが描く企業小説は、‘正しいことを貫く精神’のようなものが常に描かれているようです。その思いはこの『果つる底なき』から描かれている。池井戸さんの原点とも言える作品だと思います。

『果つる底なき』
著者:  池井戸潤
出版社: 講談社
価格:  ¥648(税別)