本格ミステリー警察小説「愚者の連鎖」

堂場瞬一さんの警察小説シリーズの中で一番好きな
シリーズ「アナザーフェイス」の新刊が発売!
タイトルは「愚者の連鎖」です。

刑事にしておくにはもったいないと周りの刑事から
いつも嫌味?を言われるくらいハンサムな大友鉄。
しかし、捜査一課の捜査員としては非常に優秀。
なので、愛妻を亡くし、一人息子を育てるため、
一線を退きたいと申し出た時、上層部は困り、
苦肉の策で大友の申し出に応えた。
それは、捜査への助っ人。いつか捜査一課に
復帰を果たした時、すぐに活躍できるように、
刑事の勘を忘れないようにと上司が気を配ったというところだ。
しかし、大友鉄は、若干ありがた迷惑に感じている。

最新作「愚者の連鎖」で、大友鉄の息子・優斗は
中学生になっている。なんと冒頭のシーンでは
息子が夕飯を準備して父の帰りを待っているという
微笑ましいシーンから始まる。
はまさきがこのシリーズを好きな理由は、この父子の触れ合いが
殺伐した事件を描いた中で、読んでいてホッと一息つけるからだ。

愚者の連鎖

夕食後、父子二人の穏やかな時間・・・。
大友鉄の携帯が鳴った!
捜査の応援要請か・・・?
電話に出ると、いつもの慇懃無礼な物言いが聞こえた。
刑事部参事官・後山からだ。
南大田署で扱っている窃盗事件で現行犯逮捕した
容疑者が完全黙秘を続けているので、助けてやって
欲しいとの要請だった。
だが、大友は凶悪犯罪を専門にしている。たかが
窃盗事件の捜査本部に駆り出されるとは・・・。
ま、参事官の命令だ。NOとは言えないと思い、
しぶしぶ南大田署へ向かった。
そこには、大友を全く歓迎しないムードが蔓延。
特に容疑者の取り調べをおろされた玉城警部補は
大友に敵意剥き出しだった。
そして、大友は完黙を続けている容疑者・若居と
向き合う。
だが、若居は大友が何を聞いても全く反応しなかった。
ただ、他の事に気を取られイラついているという
そういう気がした。
大友は、すでに終わったであろう、容疑者周辺の
聞き込みを再度行うことにした。

「愚者の連鎖」は取り調べのシーンが多く、完全黙秘
を続ける容疑者のどこがウイークポイントなのか?
見極める過程がとても面白い。
さらに、ただの窃盗事件から意外な事件へと繋がる!
その影で暗躍する不気味な存在も次第に明らかになり、
事件は一筋縄では終わらない。

この作品は、地道な警察捜査の描写はもちろん、
2転3転する展開が本格推理小説を読んでいるようで
特に面白い作品だと思う。

次の作品では、大友と息子・優斗の関係がどう変化しているのか?
楽しみ。

『アナザーフェイス7 愚者の連鎖』
著者:堂場瞬一
出版社:文藝春秋(文庫)
価格:¥720(税別)