12月はミステリ好きにはたまらない月です!
師走で忙しいけれど、ミステリランキングが
もうじき発表され、わくわく!!ドキドキ!
待ちきれな~い。
このミス、文春ミステリなどいったいどれが1位になるの・・・?
はまさきは、絶対にこれはランキングに入ると思います。
昨年の「王とサーカス」に続く、ジャーナリスト・大刀洗万智シリーズ。
今回は短編集です。「真実の10メートル手前」。
「真実の10メートル手前」
福祉を目的とするIT企業を立ち上げた若い兄妹。
だが、経営不振に陥り、さらに起死回生を狙った
事業は詐欺だと責められた。
二人は誰にもわからない場所へと逃げた。
だが、会社の広告塔であった妹・真理は、もう一人の妹・弓美へ連絡をとった。
その電話に不安を掻き立てられた、弓美は、信頼できるジャーナリスト・
大刀洗万智に相談する。真理からの電話を聞いた大刀洗は
すぐさま行動を開始する。
大刀洗はたった1本の電話の会話から、真理の居場所と苦悩に辿り着く!!
「正義漢」
ホームで人身事故が起こった!それを冷徹な目で観察する男。
一人の女性が、バッグからメモ帖を出し書き留めている。
さらに携帯でその事故の様子を撮影している!
男は、その女性に激しい憎しみを覚え、一歩踏み出した・・・。
だが、男はそこで何者かにとりおさえられる。
大刀洗万智は、人身事故が殺人事件だとわかっていた。
だから自分がおとりになれば、必ず自分の方に犯人がやってくる
と言ったのだ。そしてその通りになった。
大刀洗はなぜそれがわかったのか?大刀洗の洞察力が冴えわたる1作。
「恋累(こいがさね)心中」
ある高校で、男女二人の高校生が亡くなった。
遺書もあり、二人は心中したものと判断された。
男の子は橋のたもと、女の子は崖の下流で発見された。
だが、大刀洗はなぜ二人が離れた場所で発見されたのか不思議に思った・・・。
さらに二人が通っていた高校では、爆発騒ぎも起こっていた。
大刀洗は、二人の生徒が関わっていた教師に話を聞くが・・・。
高校生の心中事件の裏に隠された陰謀を暴く!
「名を刻む死」
中学生の男の子が通学路にある、老人宅を見た。
老人が寝ているように見える。次の日もまったく同じかっこうだったので、
少年は親を呼び警察に通報した。
老人は亡くなる前から一切食べ物を口にしていなかったらしい・・・。
少年は心の奥ので「いつかこんなことになると思っていました」という
言葉をずっと呑み込んでいた。そんな少年の前に大刀洗がやってくる。
不思議な雰囲気を持った女性に少年は心を開く・・・。
老人の最期の時にあった真実を、大刀洗は暴いてゆく・・・。
「ナイフを失われた思い出の中に」
17歳の男性が3歳になる自分の姪を殺害した事件。
その事件の取材に同行する羽目になった、ロシア人の男性。
彼の妹は学生の時、大刀洗の親友だったらしい。
何十年も前に妹の友人だった女性に会いに行くのはためらわれたが、
せっかく日本に行くのに会っておきたいと、ロシア人男性は思った。
妹が言う様に、大刀洗は謎めいた女性だ。事件の取材なのに何も語らない。
しかし、彼女は事件の真相に気づいているようだ・・・。
犯人は裸の女児にナイフを刺したと自供しているが、女児の体からは
繊維の一部が発見されていた・・・。
わずかな情報から、事件の全貌を解き明かす大刀洗・・・。
「綱渡りの成功例」
夏の台風の大洪水で土砂崩れにあい、老夫婦が取り残された。
たくさんの人たちが悲劇にあい、その老夫婦だけでも助かって欲しい!
その救助の模様はテレビで放送され、誰もが祈るように見守った。
無事に救助された老夫婦。しかしインタビューではなぜか、
申し訳ありませんを繰り返していた・・・。
なにを食べて生き延びたか?それは息子が持ってきた
コーンフレークを食べていたからだというニュースも入った。
そんなニュースが流れている中、大刀洗は現場にやってきた。
その地区には、大刀洗の大学の時の後輩がいた。
地元の消防団に入っていて、その老夫婦の救助にも参加したらしい。
彼の家は、その地区唯一の食料雑貨店。コーンフレークは
老夫婦の息子が後輩の家でその年の正月に買ったものらしかった。
微笑ましいニュースだったが、大刀洗はなぜか違和感を感じていた・・・。
事件の大小に関わらず、大刀洗はその真実を知るために取材を続ける。
フリージャーナリスト・大刀洗万智は、その鋭い洞察力と推理で
些細な情報から真実を見分ける眼を持っている。
この作品はそんな大刀洗万智の魅力を存分に味わうことのできる短編集だ。
「王とサーカス」に続き、フリージャーナリスト・大刀洗万智が
深く静かに事件の本質を見つめる・・・。
米澤穂信氏の傑作のシリーズです!
『真実の10メートル手前』
著者:米澤穂信
出版社:東京創元社
価格:¥1,400(税別)