不死身の女スパイと少年の逃避行を描くハードボイルドミステリー「リボルバー・リリー」

今年話題のミステリーということで読みました。
長浦京さんの「リボルバー・リリー」。

関東大震災後の東京を舞台に、不死身の女スパイと、
ある組織に家族もろとも殺され、たった1人生き残った
少年との逃避行を描くハードボイルドだ。

読んでいて、1980年に制作されたハリウッド映画
「グロリア」を思い出した。
マフィアの元情婦・グロリアをジーナ・ローランズがかっこよく演じ、
組織を裏切り殺されたアパートの隣人の息子を連れて
命懸けで殺し屋たちから逃げ続けるというストーリー。
鳥肌が立つくらい面白い映画だった。

そしてこの「リボルバー・リリー」はその映画も上回る面白さだ。

リリー

関東大震災で焼け野原になった東京のある一画。
二人の女性が、陣痛の始まった妊婦の世話をしていた。
そこに、不穏な空気を醸し出す男たちが近づいてきた。
一人の女性が、男たちに立ち向かう。彼女の名は小曽根百合。
若く美しい容姿からは考えられない殺気、華奢な手には不似合いな
S&WM1917リヴォルバーが握られていた。
最強の女スパイ「リボルバー・リリー」。

ある家族が名前を偽り、秩父に引っ越してきた。
父の都合らしいが、慎太と恭太の兄弟はなじめない。
家庭でも学校でも居場所のない二人は、老狼と暮らす
国松という男と仲良くなる。
やがて、父親の居所が知れ追跡者が迫ってきた!
父は、慎太に何かを託し恭太とともに逃げるように言う。
慎太たちは家の床下に隠れた。その時追跡者に
家族全員が虐殺されたことを知る。
慎太たちは恐怖で震えながら、国松を訪ねた。
そこで事情を話す。国松は慎太たちが、国を裏切った
男の息子たちだと知った。国松と老狼の余生に
彩りを添えてくれてことに感謝し、二人をある人物に
託すことを決意。二人を逃した後、国松も追跡者に
襲われる。

国松が慎太たちを託した相手、それはリボルバー・リリーこと
小曽根百合だった。
百合は、国松に借りがあった。国松が命を懸けて守ったもの、
百合はその意志を受け継ぎ、慎太たちを助けることを決意する。
百合が慎太たちを迎えに行くと、弟の恭太は焼死し、慎太一人
が生き残っていた。家族を皆殺しにされた慎太は、暗い眼で
百合を見つめ、固く復讐を誓っていた。

そして、二人は二方向から迫る追跡者をかわし、逃げ続けることになる。

美貌の女スパイと少年の逃避行・・・。
簡単に言ってしまえばシンプルなストーリーだが、
肉づけが凄い!
何と言っても、アクションシーンの描き方が凄まじい!
まるで映画を観ているような圧倒的リアル感で迫ってくる!
陸軍、またヤクザの両方から、同じ目的で襲われるが
百合は、襲い来る敵をバッタバッタとなぎ倒す。その爽快感といったら・・・・。
一番凄いのは、銃弾を受けながらも致命傷にならなかったら、
痛さは多少感じても恐れることはないと言い切る百合の鋼のメンタルだ。
そして、逃避行の過程で、成長してゆく慎太。
百合と慎太の心の絆が次第に深くなってゆく。

さらに、この時代の陸軍のきな臭さ・・・
海軍と陸軍の軋轢、陸軍の独走を阻む日本政府。
暗躍する錬金術師・・・。
史実&虚実を織り交ぜながらのストーリー展開が
この作品を奥の深い、ハードボイルドミステリーに仕立てあげている!

破格な面白さと、ヒロイン、リボルバー・リリーの美しさと
かっこよさにノックアウトさせられる!!

『リボルバー・リリー』
著者:長浦京
出版社:講談社
価格:¥1,850(税別)