暗号ミステリの最高峰、このミス1位にふさわしい傑作『涙香迷宮』

このミステリーがすごい2017年のランキングが
発表されました。
国内編1位は竹本健治さんの「涙香迷宮」です。

ミステリーファンと言いながら初めて読む作家さんです。
暗号ミステリーということで、少し苦手意識があったのですが、
ものすご~く面白かったです。

涙香迷宮

若きイケメンの囲碁棋士・牧場智久は、囲碁の試合会場で、
顔なじみの刑事に出会った。彼も囲碁をやるらしく、牧場を
とてもリスペクトしている。さらに以前、ある事件で牧場に
世話になったらしい。そんなとき、殺人事件発生の知らせを受け、
牧場はその刑事とともに現場へ向かった。
殺された男は、囲碁をさしている最中に背中から鋭利なもので
刺されたらしい。その周りには夥しい数の碁石が散らばっていた。
牧場は碁石の数が多すぎると指摘。
男の身許がわからず、謎だらけで迷宮入りが懸念された。

その夜、近くで開催されたミステリナイトに顔を出した
牧場とガールフレンドの類子。麻生という男性に声をかけられる。
麻生は、明治時代に活躍した黒岩涙香の熱心な研究者だった。
黒岩涙香とは、作家でジャーナリスト、「萬朝報」という新聞を発行し、
江戸川乱歩が活躍する以前から、海外ミステリの翻訳ものを日本に
紹介。さらに囲碁やかるたなど様々な遊戯に通じる非凡な才能を持った人物だった。

麻生は以前から、涙香の隠れ家を捜索していたが、翌日
その隠れ家らしき遺跡が発見されたとのニュースが入った。
牧場と麻生はすっかり意気投合。ガールフレンドとともに
その隠れ家の地下に眠る、涙香の資料の発掘調査に同行する。

その発掘現場で、地元のミステリマニアの男女、
パズル作家、ゲーム研究家、涙香研究家らを紹介される。
彼らは早速、発掘調査を開始する。
そこで彼らが発見したものは、十二ある部屋の四方の壁に
刻まれた詩のようなもの。それは47文字を一度づつ全部使って
作られる「いろは」だった!?
彼らは夢中でそのいろはを読んで行く・・・・。

牧場は、IQ208の頭脳を持つ天才だ。
彼はあるヒントで、殺された男の身元を明らかにした。
その後、囲碁の試合に出かけ、発掘現場に戻る途中、
落石にあい大怪我を負った。
命に別状はなかったが、なぜか疑惑が残った・・・。
そして・・・台風のため、彼らは発掘現場で足止めを喰らってしまう。
そんな中、第二の事件が起こった・・・・!!!

冒頭の殺人事件から一転、いきなりの発掘現場に足止め?
クリスティの「そして誰もいなくなった」的な展開に衝撃だ!

発掘現場に次々現れるいろは48首。
そのいろはの素晴らしさと解説に唸る・・・!
このいろはを読み進んでいくと、いかに日本語が美しいか?
奥が深いのか?改めて知らされる!鳥肌物の衝撃だ。
さらに、明治の鬼才・黒岩涙香についての半端ない薀蓄!
囲碁の知識!!!

殺人事件の謎の解明と涙香がいろはに託したもの?
涙香が仕掛けた空前絶後の大暗号を解読できるのか?
2つの謎に、牧場が挑む究極の頭脳戦。
超絶技巧の謎解きに悶絶すること間違いなし!

『涙香迷宮』
著者:竹本健治
出版社:講談社
価格:¥2,200(税別)