オーストラリア発の警察ミステリー「邂逅」が面白い!!

今年も海外ミステリーは北欧の作品が強いですが、
その中で1点、オーストラリアの警察小説に眼が止まり、読んでみました。
初めて読む、オーストラリアミステリー。
「邂逅 シドニー州都警察殺人捜査課」キャンディス・フォックス著
オーストラリア推理作家協会賞受賞作の注目作品。
すでに本国ではシリーズ化されているようです。

この作品、英米、北欧のミステリとはまた違った味わい。
あの大陸が舞台なので、登場人物など明るく、おおらかな感じなのかな
と思いましたが、猟奇的事件を背景に、その事件を追いかける刑事など
複雑な人間模様が描かれていて、グイグイと物語に惹き込まれて
いきました。

邂逅

冒頭は、いきなりショッキングなシーンから始まる。
ある男の元へ子どもの死体だと思われるものが2体届けられる。
移植用の臓器を取り出すために、子どもを誘拐し殺害し金に換える
犯罪者グループの仕業だ。しかし、子どもたちに騒がれ、その
子どもたちの目の前で両親を射殺。さらに子どもたちにも手をかけてしまった。
その事情を聞いていた男は、犯罪者の一人に、この所業に関わったものたちの
名前を書かせ、静かに拳銃を構えるとその犯罪者を殺害する。
男は死んだ犯罪者の始末をつけると、子どもたちが包まれたシートを見た。
そして女の子の方の指が動いているのに気がつく。

シドニー州都警察殺人捜査課に異動してきたフランク・ベネットは、
新しい相棒の女性刑事・エデンと共にシドニーのマリーナで発見された
少女殺害事件の謎を追う。
スチール製の収納ボックスには、傷だらけの少女の遺体が収納され、
同じようなボックスが20個も見つかったのだ!

この猟奇殺人事件の捜査を進める内に、フランクはエデンと親しくなってゆくが、
驚くほどの美貌の持ち主なのに、男顔負けの強さと、どんな現場でも
パニックを起こさない鋼のメンタル、鋭い感と明晰な頭脳に圧倒され、
時に自己嫌悪に陥った。

エデンには同じ警察官の兄・エリックがいた。
このエリックはやたらとフランクにちょっかいを出す困った奴だった。

だが、エリックとエデンが二人でいると、何かを抱えているように見える。
フランクは二人には秘密があると感じていた・・・。

猟奇殺人事件を捜査する現在の物語と、冒頭の事件の犠牲者である子どもたちと
男の触れ合いが交互に展開してゆく。
なぜか、男と子どもたちの物語に強烈に惹かれてゆくのだ。
残虐な猟奇殺人事件が背景にあるが、このシーンだけは、男が子どもたちに向ける
無償の愛が感じられるからだと思う。
この子たちはまともに育つのだろうかと、気をもんでしまう。
しかし、男は、子どもたちを心から愛すると同時にある目標を課す・・・。

読み進めると、誰が猟奇殺人犯のかわかってくるのだが、この作品は、
そう簡単には終わらせてくれない。
最後の最後にそれこそ、目ん玉が飛び出る!くらいの衝撃的展開が
待っているのだ。

さすが推理作家協会賞受賞しただけはある!
このシリーズ、お宝発見かも!

『邂逅 シドニー州都警察殺人捜査課』
著者:キャンディス・フォックス/冨田ひろみ訳
出版社:東京創元社(文庫)
価格:¥1,100(税別)