巧妙な殺人トリックに瞠目!「変若水(をちみず)」

積読から2012年に購入した、ミステリ作品が出てきました。
島田荘司氏選、第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作、
『変若水(をちみず)』(光文社刊)です。
著者は、島根県在住の吉田恭教(やすのり)さん。

ミステリの舞台は島根県の奥出雲にある架空の村。

厚労省に勤務する向井の幼馴染の女医が、ラッシュ時の駅で
突然死した。偶然その場に居合わせた、医者が必死になって
蘇生を試みてくれたが、意識を取り戻すことはなかった。
幼馴染は、向井にとって姉弟のような存在だった。
幼い時から上昇志向のない向井に喝を入れ続けてくれた。
亡くなった衝撃はあまりにも強く、日頃の怠け癖に
さらに拍車をかけ、働く意欲は失せていた。

そんな向井が再起するきっかけになったのは、幼馴染のパソコン
に友人から送られてきた一通のメールだった。
ウイルスメールに犯され動かなくなった彼女のパソコンを再起動し、
発見したメール。誰が何のためにウイルスを仕込んだのか?
さらに、そのメールの内容に向井は戦慄を覚えた・・・。
その友人は島根の病院に勤務する医者だ。
その病院では厚労省がひっくり返るような事件が起きていた。
これはその告発文ではないか!!
幼馴染はこの告発文のせいで殺されたのではないか?と疑惑を持つ。
すぐさま、該当の病院に勤務する幼馴染の友人に連絡をとった。
だが・・・その友人も亡くなっていたのだ・・・・。
告発文に関係する二人の若き女医の突然死・・・。
これは、連続殺人事件ではないのか・・?

またもや厚労省を揺るがす一大事件がおきたのでは・・・?
厚労省の上層部は、告発文の内容の真偽を確かめるために
向井に調査を命ずる。そのパートナーは、向井の元恋人。
向井の不誠実のせいで別れてしまった年上の美女。
そして上司・・・。向井は元恋人のパワハラまがいの
無理難題と格闘しつつ、事件の大本に迫ってゆく。

彼らが辿り着いたのは、島根県と広島県の県境にある雪深い村。
そこは変若水(をちみず)村と呼ばれ、ある一族が絶大な権力を
ふるっていた。そしてそこでは誰も見てはならないとされる、
雛祭りが行われていた・・・。

旧い因習にとらわれた閉鎖的な村で起きた連続失踪事件。
若い女性が眠る墓荒らしの過去。さらに隠蔽された奇病。
それら全ての事件の裏に踊る邪悪な人間の影・・・。
彼女たちの死の原因はここにある!?

現代医療を駆使した、大胆な殺人トリック。
閉鎖された村で起こるホラーまがいの事件。
そして、身勝手すぎる人間の悪意の介在。
ミステリーの面白さが凝縮された、本格医療ミステリー。

物凄く面白くて、いっきに読んでしまいました。

『変若水(をちみず)』
著者:吉田恭教
出版社:光文社
価格:¥2,000(税別)