シリーズ最新作「アナザーフェイス8」切ない展開・・・。

「アナザーフェイス」は堂場先生のシリーズ中で一番好きな作品。
最新作が発売されました。
「アナザーフェイス8 潜る女」です。

このシリーズは事件の捜査とともに、主人公の大友鉄の
プライベートが赤裸々に描かれ、大友と息子の親子の絆、
また、父としての大友の微妙な心の変化、彼の息子の成長も
読むのが楽しみな作品。

警視庁刑事総務課に所属する大友鉄は、元捜査一課の刑事。
妻を亡くし、息子を育てることになった大友は、定時に
帰ることのできる部署へ異動することになった。
しかし、彼の優れた捜査能力を買っている上層部は、
何かあると、大友に現場(強行犯系)の応援をさせていた。

だが、現在は大友のバックアップをしていた上司はいない。

ある日、捜査二課の同期・茂山から声がかかった。
捜査二課は詐欺などの経済犯罪を担当する部署だ。
そんなところから声がかかるなど珍しい。
大友は、上司の許可をもらい、捜査二課が現在
扱っている、結婚詐欺事件を手伝うことになった。

茂山は、警視庁きってのイケメン、大友に現在捜査中の
結婚詐欺事件で、マーク中の男性と関係してると思われる
女性を監視してほしいという。
その女性は、都内のスポーツクラブのインストラクターだ。
元、劇団員だった大友は、ちょっと軽めのIT企業の営業マンを
装い、そのスポーツクラブの会員になり、女性に接近した・・・。

複雑に絡みあう、詐欺事件。
その中に静かだが、強烈なインパクトを放つ、
女性インストラクター。
大友は、女性インストラクターの全てを悟りきった
冷静さに、刑事としての判断が出来なくなってしまった・・・。
そんな中、事態は急展開!大友と捜査二課を予測不能な事件が襲う。

様々な現場を支援し、颯爽と事件を解決に導いてきた大友鉄だったが、
今回ばかりは勝手が違う。

大友の人間としての優しさが、裏目に出てしまった。
大きな後悔と深い絶望、切ないラストが胸に沁みた。

『潜る女 アナザーフェイス8』
著者:堂場瞬一
出版社:文藝春秋(文庫)
価格:¥720(税別)