ぶっ飛んだ面白さ!スパイ小説に新たなヒーロー誕生か?「県警外事課 クルス機関」

2017年「このミステリーがすごい!」大賞の優秀賞受賞作
「県警外事課 クルス機関」柏木伸介著(宝島社)
あまりの面白さにぶっ飛びました!!!

優秀賞受賞作でぶっ飛びの面白さって・・・。
ちなみに「このミス大賞」受賞作は「がん消滅の罠」です。
今とっても話題になっていて、はまさきまだ読んで
いないのですが、大賞受賞作はどれだけ面白いんだ・・
って期待がふくらみます!!!!

神奈川県警外事課の来栖惟臣(くるすこれおみ)は、型破りで
組織のやり方からはみ出すため、一人諜報組織‘クルス機関’の
異名をとっている。

上にばかりいい顔をする来栖の上司は、来栖を目の敵に
していて、いつも嫌味やひと言が多い。しかし、それが
外事課の職員の発言かッ!?とツッコミをいれたくなる
くらい世間知らずな事を言う。

来栖は、ある筋から日本に潜入している北朝鮮の工作員が
大規模テロを企てているという情報を得る。
関係者に探り入れるが、「南を差し置いて北が日本にテロを
仕掛けるなど前代未聞」と言われる始末。
だが、情報は正確だと確信している来栖は、徹底的に
調査しそれが事実ならば絶対にテロを回避すると断言する。

同じ頃、北の関係者だと思われる人物が次々と暗殺されていた。
実行犯は、呉宗秀(オ・ジョンス)。日本名は尾崎陽一。
彼は、暗殺方法や日本教育も徹底的に訓練されていた。
そして誰にも怪しまれず日本社会に溶け込み、祖国からの
指令を冷酷に遂行していた。

しかし、思いもよらない人物との出会いや謎の
女子高生の出現により、呉宗秀の完璧なる
計画に狂いが生じ始める。

国際社会において、現在、日本をとりまく危機的状況を
背景に、冷酷な北朝鮮の工作員と来栖の攻防が非常に
リアルに描かれていて、フィクションでない恐ろしさを感じる。
さらに、スパイ天国と揶揄される脳天気な日本のイメージが
刷りこまれ、よりいっそう日本の危うさを感じてしまう。

しかし、キャラクターは非常に魅力的!
一人諜報組織と異名をとる来栖が非常にスマートな
イケメンであると想像できる。
全てにおいて優秀。非常時でもクールに対処できる
公安刑事としては理想的な人物。
しかも、少しだけ組織からはみ出すやんちゃな部分も
持ち合わせ、ハードボイルド的要素が鮮明になる。
また、北朝鮮の工作員・呉宗秀のキャラは来栖よりも練られている。
冷酷な暗殺者が人の優しさに触れた時、また、あまりにも
予想外なことが起きた時、どうなるか・・・?
そこに人間的魅力を感じてしまう。

誰かの意志で自身を殺し、祖国のためのロボットに
成りきろうとしても、人は絶対にロボットにはなれない。
それがヒューマン・エラー。それこそが人間の証。
呉宗秀のキャラにそんなことを思ってしまった。

物語の背景、キャラ設定、ストーリー展開そのすべてが
申し分ない。面白さもこのミス大賞級!

来栖のその後が読みたくなる。シリーズ化してほしい1作!

『県警外事課 クルス機関』
著者:柏木伸介
出版社:宝島社(文庫)
価格:¥650(税別)