想像を絶する過酷な捜査!「見当たり捜査官」

最近の警察小説は、リアルな捜査部署から、架空の
捜査部署まで、虚実織り交ぜた様々な部署を
舞台にした作品が多く、面白さに幅が出てきた感じです。
でも、戸梶圭太さんの「見当たり捜査官」を
発見して、「見当たり捜査」っていうのは
まだ読んでいない!ということで読んでみました。

「見当たり捜査」・・・とにかく過酷な捜査です!!

見当たり捜査というのは、通常の捜査班には所属せず
単独で指名手配犯を探し出して逮捕するという仕事。
時々テレビドラマでも取り上げられるが、聞きなれないので、
一般市民はもちろん、警察内部でも知らない人がいるらしい。

著者曰く、指名手配になって何年も捕まらない犯罪者は、
大都市の雑踏の中に紛れ込んでいることがある!とのこと。
その雑踏の中からたった一人の犯罪者を見つけ出す。
途方もない、気の遠くなるような仕事。

そのため見当たり捜査官は、指名手配犯の写真を見続けその顔を頭に
叩き込み寒さに震える冬も、猛暑の夏も、ただひたすら犯罪者が現れ
そうな場所に潜む・・・。

その功績で過去には警視総監賞という表彰も受けたことがある、
警視庁捜査共助課・久米山警部補は、最近全く調子が上がらず
なかなか結果を出せずにいた。負けは60敗以上・・・。
俺はほんとに税金泥棒じゃないかと真剣に悩む始末。
おまけに逮捕を焦り誤認逮捕までやらかしてしまった!
かつての自分を取り戻すべく、なりふりかまわず捜査に没頭している。

それでもやっと目当ての犯罪者を見つけた時は、身体中に電流が走る!
脱兎のごとく犯罪者の前に飛び出し手錠をかける!というか、かけたい!
だが、そう簡単にはいかない!!
犯罪者の多くは優秀な日本の警察官の手で逮捕されるが、
ずる賢いを犯罪者は、あの手この手を使って逃げる。
指名手配になっても逃げおおせる。
そんな犯罪者が、簡単に御用になるはずはない。
犯罪者の悪あがきがとにかく凄い!凄すぎる!!
久米山の逮捕への執念と、なんとしてでも逃げようとする犯罪者との
命懸けの攻防に眼を見張る。

久米山の苦悩ぶりが時におかしく切なく、そして妙にリアル。
思わず負けるな!頑張れ!と応援したくなる。

あまりに過酷で、正義とか、スマートさ、かっこよさとは
無縁の警察小説だが、ひたすら犯罪者を追う刑事の喜怒哀楽を
臨場感たっぷりに描いた傑作。

『見当たり捜査官』
著者:戸梶圭太
出版社:双葉社(文庫)
価格:¥648(税別)