司法の歪みを鋭く抉る!「潔白」

「尖閣ゲーム」の著者、青木俊さんの新作は「潔白」。
「冤罪」と「死刑」という社会派の問題点に真っ向から
挑んだ、社会派ミステリー作品です。

この作品は、文庫X「殺人犯はそこにいる」の著者で
ジャーナリストの清水清氏協力のもと、1992年に
起きた「飯塚事件」をモデルに描いたもの。
フィクションですが、ノンフィクションに近い読み応えです。

30年前に小樽で発生した母娘惨殺事件に前代未聞の
再審請求が起こされ、札幌地裁に激震が走った!
被告の死刑はすでに執行済みで、もし冤罪ならば
国は無実の人間を殺したことになる!

司法の威信をかけた攻防が始まる!
偽造、隠蔽、証拠の廃棄・・・・
検察側は再審を阻止すべき、ありとあらゆる
手段を講じてきた。

片や、原告側は30年前に無実の罪で逮捕され、
再審請求中に突如死刑執行された兄の汚名を
灌ぐため、妹は冤罪事件を扱う人情弁護士とともに
ひたすら、新たな証拠集めに奔走していた。
真実を知っているのは、当時幼かったこの妹。
しかし、警察は妹が幼すぎると証言を採用せず
事件当時のアリバイもないということで
逮捕に踏み切っていたのだ。

さらに、DNA型鑑定は足利事件の
鑑定方法が採用されていた。
当時のDNA鑑定方法は、科警研が誇る最新式の
鑑定方法で、多くの事件に採用されていた。
もし、この鑑定方法が間違いであり証拠能力が崩れたと
なると、このDNA型鑑定で立件した事件はほぼ
冤罪の可能性が出てくるのだ。
司法はそれをなんとしてでも避けなくてはならない・・・。

検察の横暴と非道に何度も煮え湯を飲まされるが、
決してあきらめない原告側。

双方の攻防が迫力に満ちた筆致で描かれている。
どれほど無実の可能性がある証拠を提示しようと
決して過ちを認めない、司法と国。
こんなことがあっていいのか?
これが現代日本の司法のどうしようもない「歪み」だ。

司法は弱者のためにあるべきではないのか?

その矛盾に鋭く斬りこんだ、社会派法廷ミステリの傑作だ。
今こそ読むべき作品だと思う。

『潔白』
著者:青木俊
出版社:幻冬舎
価格:¥1,500(税別)