幽霊か人間の悪業か?どっちも超怖いホラーミステリー。「可視(み)える」

「変若水(をちみず)」で、ばらのまち福山ミステリー文学新人賞
優秀賞を受賞し作家デビューした、島根県在住のミステリ作家、
吉田恭教さん。
デビュー作が面白かったので、その後に「堕天使の秤」を読み、
さらに面白かったので、怖そうな表紙の「可視(み)える」に
トライしてみました。

幽霊と猟奇殺人事件が交差する、ホラーミステリーです。

警視庁組織犯罪対策課の刑事だった槇野は、自信の犯した
過ちから警察をクビになり、元上司だった鏡に拾われた。
鏡は探偵事務所を開いており、槇野を捜査員として雇った。

ある時、「幽霊画」の作者を捜してほしいと画商から依頼を受けた
槇野たちは、その幽霊画が収められている島根県のある神社へと向かった。
世界遺産・石見銀山で有名な土地に佇む「龍源神社」で
「幽霊画」と対面した槇野は、その絵のあまりの恐ろしさに絶句する。

やがてその絵の作者を突きとめた槇野は画家に会いに
島根県松江市に向かった。
槇野は画家と話すうち、何か秘密があるのではないかと疑う。

一年後、警視庁捜査一課の東條有紀は、ベテラン刑事でも目を
背ける残虐な猟奇殺人事件を追っていた。
猟奇殺人事件の被害者が次々発見されるが、いずれも
ひどい拷問のあとがあり、次第にそれがエスカレートしていた。

同じ頃、男性が陸橋から飛び降り、通過しようとした車に
ぶつかり亡くなるという事件が発生した。
亡くなった男は、あの「幽霊画」を描いた画家だった。
警察はその状況から自殺と断定したが、例の画商から、
「彼は自殺ではない、彼と約束していた。調べて欲しい」と
槇野たちのところへ再び調査の依頼が入った。

槇野たちが調査する、幽霊画と画家の事件、
東條たちが捜査している猟奇殺人事件がある1点で結びつく。

警察に未練を残しながら、探偵として生きる槇野と
自身の出生の秘密を抱え、鉄仮面とあだ名される女性刑事
が互いの腹を探り合いながら難事件を追う。

多くの謎が配され、それらがひとつひとつ繋がり
次第に事件の大筋が見えてくる。
読者もあるところでで犯人らしい人物の目星がつくが、
そこからが想像を絶する恐怖の展開が待っているのだ。

怨念がこもった幽霊が怖いか・・・?
それとも、憎しみと、妄執と、妬みと恨みに支配された
生きている人間が怖いのか・・・?
この作品は本当にどちらも怖い、ホラーミステリー。

『可視(み)える』
著者:吉田恭教
出版社:南雲堂
価格:¥1,800(税別)