心が震える!北欧発「超」傑作ミステリー第4弾「湖の男」

アイスランドのベストセラー、
レイキャヴィク警察が舞台の
犯罪捜査官・エーレンデュルシリーズ第4弾
「湖の男」を読みました。

「湿地」「緑衣の女」「声」とシリーズ
3作品を読みましたが、はまさきはこの
4作目の「湖の男」が一番心に響きました。

犯罪小説で感動した!心が震えた!という表現は
誤解を生む表現かもしれませんが、
アーナルデュル・インドリダソンの作品は
ただ事件が起きた、捜査した、犯人が判明した、
というシンプルなストーリーだけではない、
物語の底辺にある「テーマ」に心を動かされるのです。

人間の心の奥深くにある生の感情が何かのはずみで
迸った!そして悲劇が起きた。
その背景とそこに至るまで過程、人間の心の葛藤が
これでもかと読み手の心に訴えかけてくるのです。

そしてこの「湖の男」はシリーズ中で一番強く訴えかけた
作品だと思います。

干上がった湖の底から人間の頭蓋骨が見つかった。
その頭蓋骨には穴が空き、さらにソ連製の盗聴器の
ようなものまで巻きつけられていた。

レイキャヴィック警察のベテラン犯罪捜査官・
エーレンデュルは、同僚のエリンボルクや
シグルデュル=オーリらと共に捜査を開始する。
鑑識の結果、発見された骨は三十年前の男性の
骨と判明する。

エーレンデュルたちが三十年前に行方不明になった
男性を丁寧に調べてゆくと、一つの失踪事件にいきあたる。
一人の農機具セールスマンが婚約者を残し消息をたって
いたのだ。その男性は偽名を使っていたらしく
アイスランドに彼の記録はいっさいなかった。
果たして男は何者で、なぜ消されたのか?
過去に遡って捜査を続けると、やがて当時の社会的背景の
中に呑み込まれた若者たちの悲劇に辿り着く・・・。

エーレンデュルたちが失踪した男の過去を捜査する現在と
一人の大学生のモノローグが交互に描かれ、事件との
関連性を示唆してゆく。
その展開に読み手はぐいぐいと引き寄せられてゆく。

エーレンデュルのプライベートも変化する。
娘のエヴァ・リンドとの確執から、今回は息子・シンドリの登場で
エーレンデュルの心は乱れてゆく。
彼の心を癒すのは、女ともだちのヴァルデュルゲル。
友達以上恋人未満の微妙な関係が心地よい。しかしそれも
彼女の夫の干渉で危うい・・・。
エーレンデュルが行方不明事件に情熱を燃やす意味も
少しずつ判明してゆく。

今回は「大切な人を失う」悲しみが切々と描かれ、
「深い愛」を感じた。
読み終わった後、心に余韻が残る傑作。

『湖の男』
著者:アーナルデュル・インドリダソン
出版社:東京創元社
価格:¥2,100(税別)