新聞記者たちの熾烈な闘い「ミッドナイト・ジャーナル」

以前からずっと気なっていた、本城雅人さんの
「ミッドナイト・ジャーナル」を読みました。

今までは警察小説を読むことが多かったので
新聞記者の目線で描かれたこの作品はとても
新鮮で面白かったです。

女児誘拐殺人事件が、解決に向け山場を迎えていた。
中央新聞の記者の一人がスクープをとるため、
トイレで所轄の副署長を待ち構えていた・・。

そんな緊迫した場面から始まる物語。

犯人が逮捕され、四日前に誘拐された女の子の
捜索が行われていた。
中央新聞は、副署長からの取材で少女は
亡くなったと報道した。
しかし少女は生還したのだ。
大誤報を打ったチームの責任者・関は
さいたま支局へ飛ばされ、副署長に
取材した男性記者は、自ら申し出て
本社整理部へ、女性記者のみ本社の
社会部記者として残った。

7年後、さいたまで女児連れ去り事件が発生する。
さいたま支局県警キャップとなった関は、
その連絡を受け7年前の事件を思いおこす。
7年前の女児誘拐殺人事件には、逮捕された男の
ほかにもう一人関わっていたのではないか
という線で取材を進めていた。
一度は警察にぶつけてみたが、否定された。
それでも警察とは違う角度から取材を続けた
関たちだったが、大誤報の影響でその取材も
諦めざる負えなくなってしまった。

しかし新たな事件発生で、関は7年前の事件に
再度向き合う決意をする。

同じ事件でも警察官と新聞記者では見えるものが全く
違うことに気づく。(それは当然か・・・)

記者と警察官との腹の探り合いや、駆け引き、
反目しあう記者、他紙とのスクープ合戦。
生き残るために必死だ。
とにかく、取材!裏どり、その繰り返しで新聞は出来る
記者の血を吐くような思いの結晶が新聞なのだ。

記者と刑事の駆け引きのシーンは、あまりの緊張感に
こぶしを強く握りしめてしまっていた。

警察との軋轢を避けるため、警察発表を鵜呑みにし
事件を報道する新聞・・・・。
世間では、一部そんな見方もあると聞く。
しかし、この小説を読んでいると、被害者やその遺族に
対する思い、仕事に対する熱意、新聞記者としての
矜持がストレートに伝わってくる。

『ミッドナイト・ジャーナル』
著者:本城雅人
出版社:講談社
価格:単行本¥1,600(税別)
   文庫¥840(税別)