「64」から6年ぶりの新作、心に沁みわたる美しいミステリー「ノースライト」。

「64」から横山秀夫さんの新作を心待ちに
していました。
新刊情報が届いた時、やっと新作が読めると
嬉しくなりました。

待ちに待った新刊は、横山さんらしい、
胸に迫る作品でした。

建築士の青瀬は、クライアントからの依頼で、
家を建てた。そのクライアントは、
「あなたが一番住みたい家を建ててください。
私たちはあなたが建てた家に住みたいんです。」
そういってくれた。
青瀬は、今までの自分を捨て、再起をかけて
設計に臨んだ。完成した後クライアントは
とても喜んでくれた。
雑誌の特集にも組まれるほど注目された。

しかし、ある顧客からあの家には誰も
住んでいない感じがすると言われた。
青瀬はそんはずはないと思った。
しかし、引渡し後感想を聞こうと思い
何度か連絡したが電話は繋がらなかったのだ。
その時は忙しいのだろうと思っていた。
だが・・・。

事の真偽を確かめたくて、青瀬は家を訪ねた。
やはり誰も住んでいなかった・・・。
その家には引っ越してきた形跡さえない。
ただ、たった一つ、古ぼけた椅子が置いてあるだけだった。

青瀬はその椅子を頼りに、クライアントを
探し始める。
彼らはどこへ消えたのか?

バブルの時代、家族を顧みずがむしゃらに働いた。
大切なものを失ったと気づいた時は手遅れだった。
いまだに過去の自分に囚われている・・。
この仕事で再起できると思っていたのに!

行方を断ったクラインアントを追ううちに
今まで疑念を抱いていた「謎」が明らかに
なってゆく・・・。

激しい競争の中で、苦悩と葛藤、嫉妬と羨望
が渦巻き、次第に自分を見失っていった戦士たち。
そんな男たちの再起の物語でもある。

真実が見えた先の「希望」に満ちた結末に
心が激しく揺さぶられる!

横山さんの新境地です!

『ノースライト』
著者:横山秀夫
出版社:新潮社
価格:¥1,800(税別)