「冤罪」の悲劇を問う!「完全無罪」

前から気になっていた、大門剛明さんの
「完全無罪」(講談社文庫)を読みました。

「冤罪」をテーマにしたミステリーでは
いかにして「冤罪」が生まれたのかを
問うた作品が多い中で、この作品は
冤罪によって生まれた悲劇が描かれていて
胸に迫りました。

大手弁護士事務所に所属する、
駆け出し弁護士・松岡千紗は、幼いころ
誘拐された恐ろしい過去を持っていた。

そんな千紗が、21年前の少女誘拐殺人事件の
冤罪再審裁判の担当に抜擢された。
その冤罪を訴えている男は、千紗を誘拐
監禁したかもしれない容疑者なのだ。

しかし、千紗は自分の過去と殺された
少女のため、事件の真相を突き止めると
心に誓い、容疑者と向き合う。

冤罪を訴えている男・平山は、そんな千紗の
態度にやがて心を開き、捜査に協力する。

平山は小学校の用務員をやっていた。
その頃から隠し撮りを疑われていた。
そして、一人の少女が誘拐され殺害された。
真っ先に平山が疑われる。
平山の車に毛根付きの髪が残っていたことから
DNA鑑定がなされた。そして被害者のDNAと一致。
平山は逮捕された・・・。

警察は平山犯人説で凝り固まった。
しかし、平山は否認を続けた。
ところが12日目に自白する。
一体何があったのか…。

密室での取り調べ、違法な聴取、
先入観…。そこから生まれる思い込み。

クライマックスの度肝を抜く真相に
思わず涙腺がゆるんでしまった。

ミステリー小説の形をとりながら
「冤罪」の悲劇を正面から訴えている。
重厚な法廷ミステリー。

『完全無罪』
著者:大門剛明
出版社:講談社(文庫)
価格:¥700(税別)