スリリングな展開!特捜本部VS.特捜検事「焦眉 警視庁強行犯係・樋口顕」

今野敏先生の人気警察小説シリーズ
「警視庁強行犯係・樋口顕」シリーズの最新作
「焦眉」を読みました。

このシリーズは、「隠蔽捜査」(新潮社)
「東京湾臨海署・安積班」(角川春樹事務所)
「警視庁捜査一課・碓氷弘一」(中央公論新社)
シリーズと並ぶ、今野作品、警察小説シリーズ
ベスト4の中の1作です。

このシリーズの主人公・樋口顕は
「熱い情熱を秘めた静かなる男」
と言ったイメージで、はまさきは
安積警部補の次に好きな人物です。

今作品は、東京地検特捜部の検事たちの
暴走を食い止められるのか!という物語。

捜査二課の氏家から衆院選の
選挙係になったと報告を受けた樋口。
そのことでナーバスになった氏家の様子が
気になり、二課に寄った樋口だったが、
いきなり東京地検特捜部が来ていると
知らされる。

衆院選が終わった頃、世田谷区の住宅街で
殺人事件が発生した。
被害者はファンドを経営する中年男性だった。

警視庁は直ちに特捜本部を設置。
ところがその捜査本部に地検特捜部の
灰谷と荒木が現れる。

彼らは、今回の衆院選で与党のベテラン議員を
退け当選した野党の衆議院議員・秋葉康一を
政治資金規正法違反で内偵中だった。
殺された男性と秋葉は大学時代親しかったらしい。

さらに殺害現場付近の防犯カメラには
秋葉の秘書の姿がうつっており、灰谷らは
秋葉が殺人事件に関与しているのではないかと
疑っていたのだ。

捜査本部内では、殺人事件の特捜本部に
部外者がいるのはおかしいし、彼らの
やり方に憤りを感じていた。

そして、灰谷らは秘書の身柄を拘束、樋口は
証拠不十分を主張したが、独断で逮捕に
踏み切ってしまう!

検事による不当逮捕。こんなことが許されて良いのか?
国家権力を武器に、民間人を恐怖のドン底に陥れる。
送検されれば、有罪率は99.9%なのだ。

その恐ろしさが物凄いリアリティをもって
描かれ、ただただ怖い。
ほんの些細な状況証拠だけで、犯罪を作り出す。
冤罪が生まれる過程を読んでいるようだった。

樋口のように当たり前に考えればそれはない!
と言い切る刑事がいなければどうなるだろう。

間違った方向に向かうとき、きちんと
正しいことが言える。
それが大切なんだということを痛感した
作品だ。

いつもながら、読後の爽快感がたまらない!

『焦眉 警視庁強行犯係・樋口顕』
著者:今野敏
出版社:幻冬舎
価格:¥1,600(税別)