富野刑事シリーズ最新刊!「脈動」

妖しくうごめく、怪異が引き起こす事件を
富野刑事と祓い師・鬼龍光一が解き明かす。
警察小説と伝奇ミステリの融合が面白すぎる
ファン待望の新作。

警視庁内で警官による容疑者への暴行事件、
警察官同士の淫らな行為など、非違行為が
相次いで起こった。

警視庁生活安全部少年事件課の巡査部長・
富野は、ある筋から警視庁内に
亡者の存在を指摘される。

事態の悪化を恐れた富野は、祓い師・鬼龍光一
と奥州勢の隆景らを呼び出し、庁内の捜査を
行った。
その結果、警視庁を守る結界が破られて
いることが判明する。

それだけではない。
富野は、所轄で傷害事件を起こした少年の
送検に立ち会うと、半グレ集団による
少女売春の情報を掴んだ。

全く無関係な事件かと思いきや、捜査を
進めるうちに奇妙な繋がりを見出す!

鬼龍や隆景のほか、今回は新たな組織の
長たちも加わり、警視庁崩壊の危機に
立ち向かう。

所轄で事件の概要を説明する富野は、いつも
どう話すか迷う・・・しかし結局本当の
事を伝えるしかなく、その話に警戒しながらも
富野に協力する同僚たちの心意気が良い。

「超」リアリストの警察組織で、得体の知れない
者の仕業という事件。それがもしかして現実に
起こるかもしれないと思わせる、今野先生の
物語の描き方に感服する。

『脈動』
著者:今野敏
出版社:KADOKAWA
価格:¥2,035(本体¥1,850+税)

記者&刑事異色コンビの活躍!シリーズ第5弾「オフマイク」

今野敏さんの記者と刑事が「たまたま」(?)
同じ事件を追うことになる人気シリーズの
文庫最新刊「オフマイク」を読了。

警視庁捜査一課特命捜査係継続捜査班の
黒田は、捜査二課の同期の刑事から、
二十年前に起こった大学生の自殺案件
について再捜査して欲しいと頼まれる。
その死に大物政治家の贈収賄が関わって
いる可能性があると言われる。

秘密裏にと念を押された、黒田と相棒の
谷口は自殺した大学生の周辺から調べ
を進めることに。

一方、TBNの報道番組のデスク鳩村は、
「ニュースイレブン」が打ち切りになるかも
しれないと言う噂を遊軍記者・布施から
聞かされる。

布施は飄々としていて、他人に警戒心を
抱かせない。誰とも容易く距離を縮められる、
そんな性格で、大物と呼ばれる人物などと
交友があり、とても人脈が広かった。
IT長者の藤巻とも交友があり、番組
打ち切りの噂の元は、藤巻だと判明する。

そして、藤巻の過去を調べたことで、
大学生自殺事件との関連が明らかになる。
事件のキーマンは藤巻だと黒田は推理
するが・・・。
そこで新たな事件が起こってしまう・・・。

布施の情報が黒田の事件と結びつき、藤巻の
過去を暴く。
すると、二十年前の大学生自殺事件の真相は
意外な様相を見せ始める・・・。

布施の機転と、黒田の推理。
このコンビネーションが埋もれていた事件を
明らかにし解決に導く。

異色のコンビの活躍に、いつも心
踊らされる!
さわやかなラストに感動!

『オフマイク』
著者:今野敏
出版社:集英社(文庫)
価格:¥902(¥820+税)

竜崎の後任署長はなんと!?「署長シンドローム」

今野敏さんの「署長シンドローム」(講談社)読了。

竜崎署長が去った後の大森署。
後任の署長は誰だ。
そこへやってきたのは、目の眩むような、
美貌を持った女性キャリアだった・・・。

新署長の美貌は、大森署内で少なからず
混乱を招いた。
しかし、3日もすると慣れてくる。
落ち着きを取り戻した大森署だったが、
今度は、来なくてもいい人たちが
視察と言って頻繁に足を運ぶようになった。
みな、新署長・藍本小百合の顔を拝みに
やって来るのだ。
本人たちは署長に会えば機嫌よく帰って
ゆくが、来られた方はたまったものではない。
みな、警視や警視正という肩書の
超えらい方々なのだ。心臓がいくつ
あっても足りないくらい気を遣うのに。

大森署の刑事組対課に新任の刑事がやってきた。
教育係は戸高があてられた。
新人刑事・山田はなんとなく覇気のない男だったが、
彼にはとんでもない異能力が備わっていた。

そんな大森署に大きな事件の情報が舞い込んだ。
羽田沖の海上で武器と麻薬の密輸取引が
行われるという。
しかもテロの可能性も否定できない!
大事になりそうな国際的な難事件だ。
お隣の所轄署、警視庁、厚労省に
海上保安庁までが乗り出し、大森署は
パニック寸前に陥った!

藍本署長の天然キャラが炸裂!
彼女の言っていることは、組織の常識を
ぶち壊してゆく!
彼女のユーモアとその美貌は凝り固まった
幹部の頭を柔らかくしてゆく!

颯爽と事件を解決する、藍本署長がとても
魅力的だ。

とても面白く、読後の清涼感が半端ない!

シリーズ化、決定?ですよね?

『署長シンドローム』
著者:今野敏
出版社:講談社
価格:¥1,870(¥1,700+税)

大人気シリーズ「東京湾臨海署安積班」最新作「秋麗」。

今野敏先生の人気警察小説シリーズ
「東京湾臨海署安積班」の新作長編
「秋麗」を読了。

安積班の紅一点・水野が新聞記者の
山口からセクハラの相談を受けている
と安積に報告してきたあと、海に遺体
らしきものが浮いていると無線が流れた。

安積班は現場に臨場。唯一臨海署に設置
されている船艇「しおかぜ」で海に
浮いている遺体の回収と鑑識作業を行った。

遺体はどこから流れ着いたのか?

遺体の身元を特定できるものがいっさいなく、
SSBCの顔認証システムを頼ることに。
するとしばらくして遺体の身元が割れた。

74歳の男性で、警視庁に記録が残っていた。
この男は特殊詐欺に関わっていたことが判明する。

安積は、その特殊詐欺事件を担当した、葛飾署の
広田係長に問い合わせる。
警察は、終わってしまった過去の事件について
調べることにいい顔はしない。
だが、広田はその男のことを覚えており、
初犯でしかも非常に反省していて、検事が起訴猶予
にしていた。広田は常習犯だと疑っていたのだ。
広田は安積の話を聞くと捜査に協力したいと言ってきた。
口調はのんびりしているが、優秀な刑事だと感じた。

さらに、須田がSNSなどを調べる過程で、男の
遺体が見つかる前日に釣り仲間二人と一緒に
いたことが判明。
早速、該当の仲間の聴取を行った。
二人とも何かに怯えているような様子だった。

そして、安積たちが再度彼らに会いに行くと、
誰もおらず彼らもまた消息が途絶えてしまう。

まじめだった年配者をも犯罪者に仕立てる
特殊詐欺事件の深い闇。
その犠牲になってしまった年配男性の
最後のあがき・・・。

葛飾署・広田、交機隊・速水も協力して
特殊詐欺事件の真相を追う安積たち。

本当の悪人は誰なのか!?

現在起きているリアルな事件を彷彿と
させる展開にも驚愕!

ラストに描かれる安積と速水の会話が印象深い。

『東京湾臨海署安積班 秋麗』
著者:今野敏
出版社:角川春樹事務所
価格:¥1,980(本体¥1,800+税)

警視庁強行犯係・樋口顕シリーズ最新刊「無明」

今野敏先生の人気警察小説「警視庁強行犯係・樋口顕」
シリーズの最新作「無明」を読みました。
安定の面白さでいっき読みしました。

荒川の河川敷で、男子高校生の水死体が上がった。
所轄の千住署は早々に自殺と断定した。

警視庁強行犯係・係長の樋口のもとへ新聞記者が
面会を求めた。
千住署が自殺と断定した男子高校生の死についてだった。
遺族は、納得していない。遺体の首筋に
ひっかき傷があった上、旅行の計画もたてて
いたという。しかも両親が司法解剖を求めたのに
千住署の刑事に断られ、恫喝されたとのことだった。

新聞記者からの情報を受け、樋口は、直属の上司・
天童管理官に少し疑わしい点があると報告。
天童も千住署のその件に対して疑問を持っていたようで
別行動で千住署に探りを入れるように樋口に指示した。

樋口は部下の藤本とともに千住署へ赴き、
その件を担当した係長に話を通す。
現場を担当した二人の刑事に案内され、自殺現場を
確認すると、さらなる疑惑がわいてきた。

樋口は、自殺だと納得できない。藤本にもそう指摘される。

そんな時、小松川署の管内で強盗殺人事件が発生。
樋口班のメンバーも特捜本部に参加。
しかし、天童からは続けて別行動を指示された。

樋口の度々の来訪に、業を煮やす千住署の面々。
自殺と断定した捜査にケチをつけるのかと猛反発され、
さらに、本部の理事官からは、千住署から手を引き、
小松川署の特捜に行けと激しく叱責された。

これまでは、署内で争うことなく、他部署や上司とも
うまくやってきた樋口だったが、今回はどうも
上のやり方が気に食わない。

組織のルールや秩序を守ることが、殺人事件かもしれない
案件をうやむやにするより大切なことだろうか?
それは違うだろうと、遺族が納得する捜査をし、
何があったのか事実を見つけることが最優先だ!
そう悟った樋口は、警察の組織論を振りかざす
上司に自らの信念をぶつける。

味方が数人しかいない四面楚歌の状況で、樋口は
絶対に引かない。
覚悟を決めた樋口の強さに心が震えた。

読み終わったとは、じわじわと樋口の言葉が
心にしみてくる。

このシリーズで一番好きな作品となった。

『無明 警視庁強行犯係・樋口顕』』
著者:今野敏
出版社:幻冬舎
価格:1,760円 (本体1,600円+税)

神奈川県警刑事部長・竜崎を脅かすライバル出現!『探花 隠蔽捜査9』

神奈川県警に刑事部長として異動になった
竜崎伸也にまたまた難題が持ち上がった!?
横浜中華街の次は横須賀で事件が・・・・。
今野敏先生の代表作シリーズ最新刊
「探花 隠蔽捜査9」を読了。

神奈川県警刑事部長として着任した、竜崎伸也は
まだまだ慣れない日々を過ごしていた。
警視庁大森署でもかなり変わった署長として
有名だった竜崎。こちらでもやはり変人扱い・・・?

竜崎のもとに横須賀の有名な公園・ヴェルニー公園で
男性の変死体が発見されたと知らせが入った。
阿久津参事官は殺人事件のようだと報告。
米軍基地が近いため、米軍からみの事件だと
やっかいだと言う。
捜査本部の件も考えるべきだと進言する。
竜崎は検視官の報告待ちと判断。

その後、佐藤本部長に呼ばれた竜崎は、
福岡県警から警務部長として、八島が異動して
くると知らされる。八島は伊丹と竜崎の同期だった。
三人の中で八島がトップ入庁だった。
優秀な八島だったが、彼には黒いうわさが
つきまとっていた。

殺人事件と断定され、横須賀署に捜査本部がおかれた。
しばらくして、事件の目撃者が現れた。
ナイフを持った白人らしき男性が米軍基地
あたりに逃走したという。

阿久津の懸念があたってしまった。
竜崎は米軍基地へ出向き事の仔細を話した。
そして、NCISから捜査協力という
名目で日系人捜査官・キジマが捜査に加わることに・・・。
だが、竜崎の周囲のものたちは明らかに迷惑顔だった。

神奈川県は、中華街に米軍基地など下手を打つと
国際問題になりかねない事情を抱えた、
警察にとってはやっかいこの上ない県だった。
しかし、竜崎はここでも警察の原理原則を押し通す。

さらに、この事件と同時並行で竜崎を悩ませたのは、
息子が留学先で逮捕されたのでは・・・?という
娘からの連絡だった!

竜崎の頭にあるのは、警察官としての職務だ。
殺人事件が起きたら捜査し、容疑者特定し逮捕する。
実にシンプルだ。それをややこしくしているのは
出世・保身・打算・忖度だ。
なぜ、そんなものにこだわるのか?
竜崎の思いはいつもそこにつながるのだと思う。

竜崎自身も新たな地で新たな役職を得て右往左往するが
やることは決まっていると割り切っている。
それを少しずつ周囲の者たちが理解してゆく。
その過程をスリリングな事件捜査とともに読める。
面白くて仕方ない。

刑事部長として、仁義を通すため八面六臂の活躍を
する竜崎。どんなに変人と言われようと、かっこいい。

今回も竜崎他、魅力的キャラたちとの掛け合いが心地良い。
特に、竜崎をやりこめた阿久津参事官、掴みどころのない
佐藤本部長とのやりとりがちょっとコミカルでいい味を
出している。

『探花 隠蔽捜査9』
著者:今野敏
出版社:新潮社
価格:¥1,815(本体¥1,650+税)

ハマの用心棒シリーズ、文庫最新作!「スクエア 横浜みなとみらい署暴対係」

今野敏先生の「スクエア 横浜みなとみらい署暴対係」
を読みました。
今野先生、人気シリーズの一作。
ハマの用心棒こと、諸橋係長と城島
コンビが不動産詐欺の事件に挑む!

横浜・山手の廃屋で、二つの遺体が発見された。
一人は中国人で長く日本に住んでいて横浜中華街の
大物だった。
そしてもう一体はすでに白骨化し身元不明だった。

その事件にマル暴が絡んでいるとの情報があり、
マル暴に強い、みなとみらい署・諸橋係長
と相棒の城島に県警本部長から直々に
捜査に参加するように特命が下った。

被害者は中華街で一財産を築いたが、
三年前から消息不明だったらしい。
ところが、捜査が進むと被害者の中国人
が別人だと判明する。

さらに、所有者不明の土地を利用した
不動産詐欺事件が浮上する。

白骨遺体は何者なのか?
暴力団が詐欺事件にどのように関与したのか?
諸橋たちは真相究明のために奔走する!

捜査一課担当の殺人事件、捜査二課担当の
詐欺事件。そこへさらに暴力団関与となると
どこの課が仕切るのか?揉めそうだが
無理なく話が展開されて、警察小説として
読んでいて興味深い。

諸橋と城島の捜査のやり方に納得が
いかない警務部監察官の笹本は、本部長
命令で捜査に参加する諸橋たちにべったり
張り付く。
しかし、次第に彼らのペースにはまってゆく
過程の描き方は今野先生らしくかっこいい。

また、県警本部長が「神風会」の組長・
神野に興味津々なところがちょっと笑える。

今作も横浜を愛する、諸橋と城島の強い
思いがあふれている。

『スクエア 横浜みなとみらい署暴対係』』
著者:今野敏
出版社:徳間書店
価格:¥891(本体¥810+税)

オズヌ、再び降臨!「ボーダーライト」

今野敏先生の最新刊「ボーダーライト」を
読みました。
「わが名はオズヌ」のエンノオズヌが
またしても高校生・賀茂晶に降りてくる!
痛快な警察ミステリー。

神奈川県警生活安全部少年捜査課の係長・
堀内が「今月は街頭犯罪が急増している」
とつぶやいた。
それを聞いていた、丸木巡査と高尾巡査部長は、
少年の街頭犯罪が増えてると察知し、早速
情報収集に出かける。

丸木は高尾の気まぐれな捜査につきあい、
ネットカフェでインターネット記事を
検索。神奈川県内で話題のバンド
「スカG」のニュースを読み漁った。
それを高尾は車のことかと勘違いする。

しかし、この時調べたバンド「スカG」が
今後の事件の捜査に関わってくる。

本部に戻った二人を待っていたのは、
組対本部・本部長からの呼び出しだった。
恐縮した二人だったが、本部長の口から出た
「赤岩猛雄」という名前に高尾が反応した。

赤岩は、みなとみらい署のマル暴に
身柄をとられていると言う。
二人はみなとみらい署のマル暴に
向かい、諸橋係長と係長補佐の城島に
会った。
赤岩は薬物の取引現場にいたところを
検挙されたという。
赤岩は事情を話すなら高尾にと言ったのだ。
そして、高尾は赤岩に事情を聞いた。
赤岩は、友人を止めるために現場に居たと言う。
決してや薬物取引には関係ないと言う。
しかし、さらに踏み込んで聞くとたちまち黙秘した。

仕方なく、赤岩はみなとみらい署に拘留された。
そこへ、赤岩の担任・水越陽子が賀茂晶とともに現れた。
高尾は一目見て、賀茂晶にオズヌが降りていると気づく・・・。

オズヌは、神奈川の街で良くないことが
起こり始めていると勘づいているが、
詳細は掴め切れずにいるようだ。

高尾はオズヌらとともにきな臭い事件の
捜査を開始する!!!

またしても、賀茂晶にオズヌが降臨!
彼の不思議な力によって、誰も刃向かう
ことが出来なくなる。
その姿がかっこいい。
また、今作はみなとみらい署のマル暴・
諸橋係長と城島が登場。

賀茂の不思議な力と、オズヌの関係を
真剣に受け止めている二人。
高尾たちをバックアップするところが清々しい!
サービス満点のコラボにファンは狂喜!!

そしてバンド「スカG」はこの事件にどう
関わってくるのか?!

読みごたえ満点の警察ミステリー。
傑作の今野敏ワールド!

『ボーダーライト』
著者:今野敏
出版社:小学館
価格:¥1,870(本体¥1,700+税)

傑作!!警察小説アンソロジー「矜持」

人気警察小説作家が描くアンソロジー集を
読みました。
傑作短編揃いで、読み応え満点でした。

「熾火」今野敏
強盗犯を逮捕し自白も取れた事件だったが、
新人刑事の安積は、納得できないでいた・・・。
「警視庁臨海署安積班」、安積剛志の若き
刑事時代のエピソード。
周りの空気に流されず、信念を通す姿が
後の安積警部補に通じている。

「遺恨」佐々木譲
札幌の小さな町の交番勤務にはげむ川久保巡査。
ある日牧場主が殺害された。同日その牧場で働いて
いた中国人研修生らがが逃亡。
警察は中国人研修生が雇用問題で揉め、
牧場主を殺害したと判断した。
しかし、川久保はこの町の交番勤務だ。
本部の捜査員よりは町の人間関係を把握している。
川久保は本部とは別の角度から事件を見た・・・。
どれほど町に馴染もうと、川久保は警察官
としての正義を貫こうとする。

「帰り道は遅かった」黒川博行
タクシー強盗で、運転手が行方不明に!?
大阪府警東淀川署の黒マメコンビが事件の
行方を追う。
捜査を進めるうちに、この事件の裏にある
巧妙なカラクリに気づくが・・・。
大阪の刑事さんの漫才みたいなやり取りが
緊迫した事件を少し和らげてくれる。

「死の初速」安藤能明
マンションから男性が墜落したとの通報。
現場に臨場した、鎌田中央署・地域係の
神村五郎と西尾美加。神村は元教師。
高校で物理を教えていた。西尾はその
教え子だった。そんな二人が警察で再会。
まさか、相棒になるとは!!
神村は墜落死体を見て、違和感を感じる。
そして西尾と二人その違和感の謎に迫る
事件の真相があまりにも切なく衝撃的!!

「悩み多き人生」逢坂剛
お茶の水署生活安全係の名物コンビ。斉木斉
警部補と梢田威巡査。小学校の幼なじみで、
いつも小学生みたいな言い争いと手柄の奪い
合いをしている。今回はこの係にもう一人
配属されるという。
焦った二人は、ある事件でまたしても
お互いを出しぬこうとするが・・・・。
ラストは爆笑の展開!

「水仙」大沢在昌
新宿署の鮫島は、ある中国人女性から
殺人事件の重要情報を得る。
しかし、それには中国人女性の
思惑があった。
孤高の刑事・鮫島の刑事の勘が
冴えわたる。傑作短編。

どの作品も警察ミステリー面白さが
際立ち、事件の真相を追う刑事たちの
真摯な姿が描かれた傑作アンソロジー集。
警察小説ファン垂涎の1冊。

『警察小説傑作選 矜持』
著者:今野敏/佐々木譲/黒川博行/安藤能明/
   逢坂剛/大沢在昌
出版社:PHP研究所(文庫)
価格:¥780(税別)

明治の警察官が活躍!シリーズ第2弾『サーベル警視庁2帝都争乱』

今野敏先生の単行本最新刊は、
明治時代の警察を描いた作品。
「サーベル警視庁2帝都争乱」。

日露戦争が終わり、国民は日本の
勝利に酔いしれた。

しかし、明治38年8月30日「時事新報」
の号外で、それまでの戦勝の喜びが
失望と怒りに変わっていった・・・。

それは、外務大臣の小村寿太郎全権大使が
ポーツマスで交わした講和条約で
国民の期待を裏切ったからだ。

戦争には勝利した、ところがその後の
戦いに日本は負けてしまったのだ。

国民は、怒りの矛先を桂首相に向けた。

警視庁第一部第一課・葦名警部と四人の
巡査たちは、赤坂榎坂にある桂首相の
妾宅の警備を担当することになった。

暴徒が桂の妾宅に近づきつつあった。

そして、9月5日「講和問題国民大会」
が日比谷公園で開かれた。興奮した
暴徒たちにより、日比谷焼打事件が
起こってしまう!

桂首相の愛人は危険を察知し、屋敷から逃れた。
その後、暴徒たちが乱入!屋敷を破壊しつくし逃走。

警官らとともに妾宅の警護をしていた、
伯爵の孫で探偵の西小路が屋敷に
足を踏み入れると、男の刺殺体が転がっていた。

混乱に乗じた事故死なのか?それとも殺人事件か?
赤坂署は焼打事件に巻き込まれての死として
片付けようとするが、葦名警部たちは
殺人事件の疑いがあるとして、捜査を開始する。

明治時代に本当に起こった事件を背景に
殺人事件の謎を提示。
首相の妾宅で誰が何のために殺人を犯したのか?

元新選組の斎藤一、作家の黒猫先生(夏目漱石?)
など実在の人物を架空の人物に絡ませ捜査をすすめる
過程が非常に面白い!

また、桂首相の愛人・お鯉のきっぷの良さ
にスカッとする!

さらに、政界・財界で暗躍する者たちの
姿もリアルに描かれていて、明治という
時代のあり様がまざまざと伝わってくる。

明治時代を知ることのできる作品でもある。

第3弾が待ち遠しい!

『サーベル警視庁2 帝都争乱』
著者:今野敏
出版社:角川春樹事務所
価格:¥1,600(税別)