警視庁強行犯係・樋口顕シリーズ最新刊「無明」

今野敏先生の人気警察小説「警視庁強行犯係・樋口顕」
シリーズの最新作「無明」を読みました。
安定の面白さでいっき読みしました。

荒川の河川敷で、男子高校生の水死体が上がった。
所轄の千住署は早々に自殺と断定した。

警視庁強行犯係・係長の樋口のもとへ新聞記者が
面会を求めた。
千住署が自殺と断定した男子高校生の死についてだった。
遺族は、納得していない。遺体の首筋に
ひっかき傷があった上、旅行の計画もたてて
いたという。しかも両親が司法解剖を求めたのに
千住署の刑事に断られ、恫喝されたとのことだった。

新聞記者からの情報を受け、樋口は、直属の上司・
天童管理官に少し疑わしい点があると報告。
天童も千住署のその件に対して疑問を持っていたようで
別行動で千住署に探りを入れるように樋口に指示した。

樋口は部下の藤本とともに千住署へ赴き、
その件を担当した係長に話を通す。
現場を担当した二人の刑事に案内され、自殺現場を
確認すると、さらなる疑惑がわいてきた。

樋口は、自殺だと納得できない。藤本にもそう指摘される。

そんな時、小松川署の管内で強盗殺人事件が発生。
樋口班のメンバーも特捜本部に参加。
しかし、天童からは続けて別行動を指示された。

樋口の度々の来訪に、業を煮やす千住署の面々。
自殺と断定した捜査にケチをつけるのかと猛反発され、
さらに、本部の理事官からは、千住署から手を引き、
小松川署の特捜に行けと激しく叱責された。

これまでは、署内で争うことなく、他部署や上司とも
うまくやってきた樋口だったが、今回はどうも
上のやり方が気に食わない。

組織のルールや秩序を守ることが、殺人事件かもしれない
案件をうやむやにするより大切なことだろうか?
それは違うだろうと、遺族が納得する捜査をし、
何があったのか事実を見つけることが最優先だ!
そう悟った樋口は、警察の組織論を振りかざす
上司に自らの信念をぶつける。

味方が数人しかいない四面楚歌の状況で、樋口は
絶対に引かない。
覚悟を決めた樋口の強さに心が震えた。

読み終わったとは、じわじわと樋口の言葉が
心にしみてくる。

このシリーズで一番好きな作品となった。

『無明 警視庁強行犯係・樋口顕』』
著者:今野敏
出版社:幻冬舎
価格:1,760円 (本体1,600円+税)

神奈川県警刑事部長・竜崎を脅かすライバル出現!『探花 隠蔽捜査9』

神奈川県警に刑事部長として異動になった
竜崎伸也にまたまた難題が持ち上がった!?
横浜中華街の次は横須賀で事件が・・・・。
今野敏先生の代表作シリーズ最新刊
「探花 隠蔽捜査9」を読了。

神奈川県警刑事部長として着任した、竜崎伸也は
まだまだ慣れない日々を過ごしていた。
警視庁大森署でもかなり変わった署長として
有名だった竜崎。こちらでもやはり変人扱い・・・?

竜崎のもとに横須賀の有名な公園・ヴェルニー公園で
男性の変死体が発見されたと知らせが入った。
阿久津参事官は殺人事件のようだと報告。
米軍基地が近いため、米軍からみの事件だと
やっかいだと言う。
捜査本部の件も考えるべきだと進言する。
竜崎は検視官の報告待ちと判断。

その後、佐藤本部長に呼ばれた竜崎は、
福岡県警から警務部長として、八島が異動して
くると知らされる。八島は伊丹と竜崎の同期だった。
三人の中で八島がトップ入庁だった。
優秀な八島だったが、彼には黒いうわさが
つきまとっていた。

殺人事件と断定され、横須賀署に捜査本部がおかれた。
しばらくして、事件の目撃者が現れた。
ナイフを持った白人らしき男性が米軍基地
あたりに逃走したという。

阿久津の懸念があたってしまった。
竜崎は米軍基地へ出向き事の仔細を話した。
そして、NCISから捜査協力という
名目で日系人捜査官・キジマが捜査に加わることに・・・。
だが、竜崎の周囲のものたちは明らかに迷惑顔だった。

神奈川県は、中華街に米軍基地など下手を打つと
国際問題になりかねない事情を抱えた、
警察にとってはやっかいこの上ない県だった。
しかし、竜崎はここでも警察の原理原則を押し通す。

さらに、この事件と同時並行で竜崎を悩ませたのは、
息子が留学先で逮捕されたのでは・・・?という
娘からの連絡だった!

竜崎の頭にあるのは、警察官としての職務だ。
殺人事件が起きたら捜査し、容疑者特定し逮捕する。
実にシンプルだ。それをややこしくしているのは
出世・保身・打算・忖度だ。
なぜ、そんなものにこだわるのか?
竜崎の思いはいつもそこにつながるのだと思う。

竜崎自身も新たな地で新たな役職を得て右往左往するが
やることは決まっていると割り切っている。
それを少しずつ周囲の者たちが理解してゆく。
その過程をスリリングな事件捜査とともに読める。
面白くて仕方ない。

刑事部長として、仁義を通すため八面六臂の活躍を
する竜崎。どんなに変人と言われようと、かっこいい。

今回も竜崎他、魅力的キャラたちとの掛け合いが心地良い。
特に、竜崎をやりこめた阿久津参事官、掴みどころのない
佐藤本部長とのやりとりがちょっとコミカルでいい味を
出している。

『探花 隠蔽捜査9』
著者:今野敏
出版社:新潮社
価格:¥1,815(本体¥1,650+税)

ハマの用心棒シリーズ、文庫最新作!「スクエア 横浜みなとみらい署暴対係」

今野敏先生の「スクエア 横浜みなとみらい署暴対係」
を読みました。
今野先生、人気シリーズの一作。
ハマの用心棒こと、諸橋係長と城島
コンビが不動産詐欺の事件に挑む!

横浜・山手の廃屋で、二つの遺体が発見された。
一人は中国人で長く日本に住んでいて横浜中華街の
大物だった。
そしてもう一体はすでに白骨化し身元不明だった。

その事件にマル暴が絡んでいるとの情報があり、
マル暴に強い、みなとみらい署・諸橋係長
と相棒の城島に県警本部長から直々に
捜査に参加するように特命が下った。

被害者は中華街で一財産を築いたが、
三年前から消息不明だったらしい。
ところが、捜査が進むと被害者の中国人
が別人だと判明する。

さらに、所有者不明の土地を利用した
不動産詐欺事件が浮上する。

白骨遺体は何者なのか?
暴力団が詐欺事件にどのように関与したのか?
諸橋たちは真相究明のために奔走する!

捜査一課担当の殺人事件、捜査二課担当の
詐欺事件。そこへさらに暴力団関与となると
どこの課が仕切るのか?揉めそうだが
無理なく話が展開されて、警察小説として
読んでいて興味深い。

諸橋と城島の捜査のやり方に納得が
いかない警務部監察官の笹本は、本部長
命令で捜査に参加する諸橋たちにべったり
張り付く。
しかし、次第に彼らのペースにはまってゆく
過程の描き方は今野先生らしくかっこいい。

また、県警本部長が「神風会」の組長・
神野に興味津々なところがちょっと笑える。

今作も横浜を愛する、諸橋と城島の強い
思いがあふれている。

『スクエア 横浜みなとみらい署暴対係』』
著者:今野敏
出版社:徳間書店
価格:¥891(本体¥810+税)

オズヌ、再び降臨!「ボーダーライト」

今野敏先生の最新刊「ボーダーライト」を
読みました。
「わが名はオズヌ」のエンノオズヌが
またしても高校生・賀茂晶に降りてくる!
痛快な警察ミステリー。

神奈川県警生活安全部少年捜査課の係長・
堀内が「今月は街頭犯罪が急増している」
とつぶやいた。
それを聞いていた、丸木巡査と高尾巡査部長は、
少年の街頭犯罪が増えてると察知し、早速
情報収集に出かける。

丸木は高尾の気まぐれな捜査につきあい、
ネットカフェでインターネット記事を
検索。神奈川県内で話題のバンド
「スカG」のニュースを読み漁った。
それを高尾は車のことかと勘違いする。

しかし、この時調べたバンド「スカG」が
今後の事件の捜査に関わってくる。

本部に戻った二人を待っていたのは、
組対本部・本部長からの呼び出しだった。
恐縮した二人だったが、本部長の口から出た
「赤岩猛雄」という名前に高尾が反応した。

赤岩は、みなとみらい署のマル暴に
身柄をとられていると言う。
二人はみなとみらい署のマル暴に
向かい、諸橋係長と係長補佐の城島に
会った。
赤岩は薬物の取引現場にいたところを
検挙されたという。
赤岩は事情を話すなら高尾にと言ったのだ。
そして、高尾は赤岩に事情を聞いた。
赤岩は、友人を止めるために現場に居たと言う。
決してや薬物取引には関係ないと言う。
しかし、さらに踏み込んで聞くとたちまち黙秘した。

仕方なく、赤岩はみなとみらい署に拘留された。
そこへ、赤岩の担任・水越陽子が賀茂晶とともに現れた。
高尾は一目見て、賀茂晶にオズヌが降りていると気づく・・・。

オズヌは、神奈川の街で良くないことが
起こり始めていると勘づいているが、
詳細は掴め切れずにいるようだ。

高尾はオズヌらとともにきな臭い事件の
捜査を開始する!!!

またしても、賀茂晶にオズヌが降臨!
彼の不思議な力によって、誰も刃向かう
ことが出来なくなる。
その姿がかっこいい。
また、今作はみなとみらい署のマル暴・
諸橋係長と城島が登場。

賀茂の不思議な力と、オズヌの関係を
真剣に受け止めている二人。
高尾たちをバックアップするところが清々しい!
サービス満点のコラボにファンは狂喜!!

そしてバンド「スカG」はこの事件にどう
関わってくるのか?!

読みごたえ満点の警察ミステリー。
傑作の今野敏ワールド!

『ボーダーライト』
著者:今野敏
出版社:小学館
価格:¥1,870(本体¥1,700+税)

傑作!!警察小説アンソロジー「矜持」

人気警察小説作家が描くアンソロジー集を
読みました。
傑作短編揃いで、読み応え満点でした。

「熾火」今野敏
強盗犯を逮捕し自白も取れた事件だったが、
新人刑事の安積は、納得できないでいた・・・。
「警視庁臨海署安積班」、安積剛志の若き
刑事時代のエピソード。
周りの空気に流されず、信念を通す姿が
後の安積警部補に通じている。

「遺恨」佐々木譲
札幌の小さな町の交番勤務にはげむ川久保巡査。
ある日牧場主が殺害された。同日その牧場で働いて
いた中国人研修生らがが逃亡。
警察は中国人研修生が雇用問題で揉め、
牧場主を殺害したと判断した。
しかし、川久保はこの町の交番勤務だ。
本部の捜査員よりは町の人間関係を把握している。
川久保は本部とは別の角度から事件を見た・・・。
どれほど町に馴染もうと、川久保は警察官
としての正義を貫こうとする。

「帰り道は遅かった」黒川博行
タクシー強盗で、運転手が行方不明に!?
大阪府警東淀川署の黒マメコンビが事件の
行方を追う。
捜査を進めるうちに、この事件の裏にある
巧妙なカラクリに気づくが・・・。
大阪の刑事さんの漫才みたいなやり取りが
緊迫した事件を少し和らげてくれる。

「死の初速」安藤能明
マンションから男性が墜落したとの通報。
現場に臨場した、鎌田中央署・地域係の
神村五郎と西尾美加。神村は元教師。
高校で物理を教えていた。西尾はその
教え子だった。そんな二人が警察で再会。
まさか、相棒になるとは!!
神村は墜落死体を見て、違和感を感じる。
そして西尾と二人その違和感の謎に迫る
事件の真相があまりにも切なく衝撃的!!

「悩み多き人生」逢坂剛
お茶の水署生活安全係の名物コンビ。斉木斉
警部補と梢田威巡査。小学校の幼なじみで、
いつも小学生みたいな言い争いと手柄の奪い
合いをしている。今回はこの係にもう一人
配属されるという。
焦った二人は、ある事件でまたしても
お互いを出しぬこうとするが・・・・。
ラストは爆笑の展開!

「水仙」大沢在昌
新宿署の鮫島は、ある中国人女性から
殺人事件の重要情報を得る。
しかし、それには中国人女性の
思惑があった。
孤高の刑事・鮫島の刑事の勘が
冴えわたる。傑作短編。

どの作品も警察ミステリー面白さが
際立ち、事件の真相を追う刑事たちの
真摯な姿が描かれた傑作アンソロジー集。
警察小説ファン垂涎の1冊。

『警察小説傑作選 矜持』
著者:今野敏/佐々木譲/黒川博行/安藤能明/
   逢坂剛/大沢在昌
出版社:PHP研究所(文庫)
価格:¥780(税別)

明治の警察官が活躍!シリーズ第2弾『サーベル警視庁2帝都争乱』

今野敏先生の単行本最新刊は、
明治時代の警察を描いた作品。
「サーベル警視庁2帝都争乱」。

日露戦争が終わり、国民は日本の
勝利に酔いしれた。

しかし、明治38年8月30日「時事新報」
の号外で、それまでの戦勝の喜びが
失望と怒りに変わっていった・・・。

それは、外務大臣の小村寿太郎全権大使が
ポーツマスで交わした講和条約で
国民の期待を裏切ったからだ。

戦争には勝利した、ところがその後の
戦いに日本は負けてしまったのだ。

国民は、怒りの矛先を桂首相に向けた。

警視庁第一部第一課・葦名警部と四人の
巡査たちは、赤坂榎坂にある桂首相の
妾宅の警備を担当することになった。

暴徒が桂の妾宅に近づきつつあった。

そして、9月5日「講和問題国民大会」
が日比谷公園で開かれた。興奮した
暴徒たちにより、日比谷焼打事件が
起こってしまう!

桂首相の愛人は危険を察知し、屋敷から逃れた。
その後、暴徒たちが乱入!屋敷を破壊しつくし逃走。

警官らとともに妾宅の警護をしていた、
伯爵の孫で探偵の西小路が屋敷に
足を踏み入れると、男の刺殺体が転がっていた。

混乱に乗じた事故死なのか?それとも殺人事件か?
赤坂署は焼打事件に巻き込まれての死として
片付けようとするが、葦名警部たちは
殺人事件の疑いがあるとして、捜査を開始する。

明治時代に本当に起こった事件を背景に
殺人事件の謎を提示。
首相の妾宅で誰が何のために殺人を犯したのか?

元新選組の斎藤一、作家の黒猫先生(夏目漱石?)
など実在の人物を架空の人物に絡ませ捜査をすすめる
過程が非常に面白い!

また、桂首相の愛人・お鯉のきっぷの良さ
にスカッとする!

さらに、政界・財界で暗躍する者たちの
姿もリアルに描かれていて、明治という
時代のあり様がまざまざと伝わってくる。

明治時代を知ることのできる作品でもある。

第3弾が待ち遠しい!

『サーベル警視庁2 帝都争乱』
著者:今野敏
出版社:角川春樹事務所
価格:¥1,600(税別)

映画館で映画を観たくなった・・・。『任侠シネマ』

今野敏さんの「任侠」シリーズの最新刊が
出ました!!
「任侠書房」「任侠学園」「任侠病院」
「任侠温泉」に続く、第5弾「任侠シネマ」です!

一本筋の通った任侠道で、数々の組織を
建て直してきた、阿岐本組。
今度は、映画館の建て直しに奔走する!?

阿岐本組組長の弟分・永神がまたしても
仕事を持ってやってきた。
阿岐本組の代貸・日村は心の中でため息をつく。

永神は、映画館の建て直しに力を貸してほしい
と阿岐本に頼み込む。
その映画館は、不動産会社が経営しているが、
映画館の客足が遠のき、営業が難しく
なっているため、閉館しようとしていた。
ところが、その映画館のファンクラブが
閉館を反対しているとのことだった。
不動産会社の社長も、映画館を閉館してしまうのは
残念だと思っているようだ・・・。

阿岐本はその社長に会って話を聞くことに。

社長の話を聞いたあと、阿岐本は日村を誘って
リバイバル上映されていた、高倉健の任侠
映画を観る。
映画館で映画を観るのはいいもんだよな~とつぶやく。
日村は映画館で映画を観たことがなかったが、
健さんの映画にどっぷりはまってしまった。

映画館は素晴らしい。建て直すところはない。
では何が問題なのか・・・・?

この問題を解決したのは、今までパソコンに
しか興味がなかったテツの言葉だ。
テツは不器用な言葉で阿岐本や日村に訴えかける!
このテツの言葉が心を打つ!!!
素晴らしい!泣ける!思わず泣いた。
「形だけのイベントなんてやっても人は集まらない。
やっている人が楽しいと思わないとだめなんだ!」

いつものように、やっぱり悪い奴は登場するが、
今までの任侠シリーズと一味違う「任侠シネマ」だ。

また、暴対係なんだけど頼りない甘糟刑事が
今回はちょこちょこ顔を出す。
新しい係長が非常にヤクザに厳しいのだ。
お店にヤクザと関わるなと過度な指導をしたせいで
阿岐本組の面々はご飯にありつけない。
配達してもらえないからだ。
そんな中でも、阿岐本組に世話になった大将たちが
新参者の暴対係の係長など無視して配達してくれる
シーンはじ~んとする。

やっぱりこのシリーズはほんとに面白い!
どのシーンも爽快な気分にさせてくれる。
そして、読み終わった後、無性に映画館に
行きたくなりました。

『任侠シネマ』
著者:今野敏
出版社:中央公論新社
価格:¥1,500(税別)

スリリングな展開!特捜本部VS.特捜検事「焦眉 警視庁強行犯係・樋口顕」

今野敏先生の人気警察小説シリーズ
「警視庁強行犯係・樋口顕」シリーズの最新作
「焦眉」を読みました。

このシリーズは、「隠蔽捜査」(新潮社)
「東京湾臨海署・安積班」(角川春樹事務所)
「警視庁捜査一課・碓氷弘一」(中央公論新社)
シリーズと並ぶ、今野作品、警察小説シリーズ
ベスト4の中の1作です。

このシリーズの主人公・樋口顕は
「熱い情熱を秘めた静かなる男」
と言ったイメージで、はまさきは
安積警部補の次に好きな人物です。

今作品は、東京地検特捜部の検事たちの
暴走を食い止められるのか!という物語。

捜査二課の氏家から衆院選の
選挙係になったと報告を受けた樋口。
そのことでナーバスになった氏家の様子が
気になり、二課に寄った樋口だったが、
いきなり東京地検特捜部が来ていると
知らされる。

衆院選が終わった頃、世田谷区の住宅街で
殺人事件が発生した。
被害者はファンドを経営する中年男性だった。

警視庁は直ちに特捜本部を設置。
ところがその捜査本部に地検特捜部の
灰谷と荒木が現れる。

彼らは、今回の衆院選で与党のベテラン議員を
退け当選した野党の衆議院議員・秋葉康一を
政治資金規正法違反で内偵中だった。
殺された男性と秋葉は大学時代親しかったらしい。

さらに殺害現場付近の防犯カメラには
秋葉の秘書の姿がうつっており、灰谷らは
秋葉が殺人事件に関与しているのではないかと
疑っていたのだ。

捜査本部内では、殺人事件の特捜本部に
部外者がいるのはおかしいし、彼らの
やり方に憤りを感じていた。

そして、灰谷らは秘書の身柄を拘束、樋口は
証拠不十分を主張したが、独断で逮捕に
踏み切ってしまう!

検事による不当逮捕。こんなことが許されて良いのか?
国家権力を武器に、民間人を恐怖のドン底に陥れる。
送検されれば、有罪率は99.9%なのだ。

その恐ろしさが物凄いリアリティをもって
描かれ、ただただ怖い。
ほんの些細な状況証拠だけで、犯罪を作り出す。
冤罪が生まれる過程を読んでいるようだった。

樋口のように当たり前に考えればそれはない!
と言い切る刑事がいなければどうなるだろう。

間違った方向に向かうとき、きちんと
正しいことが言える。
それが大切なんだということを痛感した
作品だ。

いつもながら、読後の爽快感がたまらない!

『焦眉 警視庁強行犯係・樋口顕』
著者:今野敏
出版社:幻冬舎
価格:¥1,600(税別)

昭和・平成の豪華作家陣が描く警察小説アンソロジー『葛藤する刑事たち』

警察小説の黎明期から覚醒期まで
3期に分け、その時代の警察小説
作家による傑作短編を集めた。
警察小説がどのようにの進化して
きたのかが読めます!

第一期(黎明期) 
松本清張『声』
新聞社の女性電話交換手は、深夜に繋いだ
電話先から不審な男性の声を聞いた。
耳朶に残る、不審な男の声・・・。

藤原審爾『放火』
ある社長の建築中の家が放火された。
若い巡査は初めての放火事件で張り切るが、
聞き込みをしてゆくと意外な事実が浮かび
上がる。

結城昌治『夜が崩れた』
暴力団と関わりのあった兄を持つ
刑事の婚約者。その兄が強盗殺人
事件を起こした。刑事は単独で事件を
追うが・・・。

黎明期の警察小説の面白さは、刑事たちが
徹底して現場にこだわる捜査。チーム力で
捜査を行う警察小説の醍醐味を味わえる。
特に松本清張の「声」は、印象に残る
ストーリー展開。
また、小説に登場する事件も現在に
通じるところがあり、今読んでも新鮮に感じる。

第二期(発展期)
大沢在昌『老獣』
新任の警官が老婆の許を訪ねる。
彼はこの街を守れるか・・・?
不思議な世界観が印象に残った。

逢坂剛『黒い矢』
女性が夜帰宅途中、ボーガンの矢が刺さるという
事件が発生した。御茶ノ水署の斉木と
梢田は捜査に駆り出される。
犯人はすれ違った暴走族のはずだったが・・・
人気の御茶ノ水署シリーズ。

今野敏『薔薇の色』
ジャズバーの一輪挿しに活けてある薔薇の花。
いつもは赤いバラだが、時々、違う色の薔薇が
ある。その意味は?交機隊の速水が出した
問いに、安積班の須田と村雨が推理を展開する。
果たして安積班長はどう答える・・・?
安積の推理に誰もがうなる。
大好きな短編。東京湾臨海署安積班シリーズ。

発展期は、それぞれ警察小説にシリーズ化が
生まれ、そのキャラクターたちの魅力と、
事件要素、そして推理、リアルな警察捜査の
過程が描かれて面白さが増した。

第三期(覚醒期)
横山秀夫『共犯者』
銀行強盗の通報訓練のはずが、実際に
銀行強盗が起こってしまった!
「顔FACE」の平野瑞樹巡査が主人公。

月村了衛『焼相』
対テロ用に開発された歩行型軍用有人兵器を
着用した極悪犯が、児童を人質に立て籠もり
事件を起こした!
SITとSAT、攻防の行方は・・・!
近未来警察小説、「機龍警察」シリーズの短編。

誉田哲也『手紙』
女性会社員が殺害された。姫川玲子は
その捜査本部で女性警官とパートナー
を組む。姫川はこの頃から上昇志向が
強く、コンビを組んだ女性警官を出し抜いて
真相を暴くことに成功する。
女刑事・姫川玲子の若かりし頃のエピソードだ。

この頃は、多くの女性刑事が登場する。
男性社会の警察組織の中でいかに生き抜くか?
平野瑞樹のようなタイプや、姫川の
ようにタフに生き抜く強さが描かれる作品もある。
また、複雑な警察組織内部に焦点をあてた
作品が多く生まれた。「機龍警察」は特に
特捜部と刑事部との軋轢が非常にリアルに
描かれ、さらに近未来のSF的な面が見事に
融合した傑作だと感じる。

思う存分警察小説が堪能できる短編集だ!

『葛藤する刑事たち 警察小説アンソロジー』
著者:村上貴史編集
出版社:朝日新聞出版
価格:¥800(税別)

竜崎、神奈川県警刑事部長として着任!『清明 隠蔽捜査8』

待ちに待った「隠蔽捜査」シリーズ新作
「清明 隠蔽捜査8」を読みました。

大森署署長から、神奈川県警の刑事部長として
新たな局面を迎える竜崎伸也。どうなる!!?

神奈川県警刑事部長に着任した、警察官僚では
かなり変わり者ととらえられている、竜崎伸也。

着任早々、事件が起きた!
東京と神奈川の県境で、男性の死体遺棄事件が発生した。
県境ということもあり、早速伊丹に連絡する。
警視庁主導で町田署に捜査本部が設けられた。

竜崎は、伊丹にすべて任せるつもりだったが、
参事官から指摘され、結局捜査本部に顔を出すことに。

つい最近まで仕事を一緒にやってきた
警視庁の面々だったが、妙なやりにくさを感じる。

捜査本部では、事件の情報が集まりつつあった。
当初、身元不明だと思われた被害者は中国人だと判明。

神奈川県独特の問題も発生する。
横浜中華街を中心とする、中国人の組織だ。

悩ましい様相を呈してきた事件。
そんな時、竜崎の妻が交通事故を起こしたと
一報が入る。
すぐさま所轄に顔を出した竜崎だったが、
立場をわきまえろと今度は妻から指摘が!
ドライバーズスクールでの自損事故。
スクール側から壊れた塀や車の弁償をしろと言ってきた。
そこに登場したのは、神奈川を知り尽くした警察OB。
彼はドライバーズスクールの校長だった!

立ちはだかる中国の壁、そして公安の影も
ちらつく。
竜崎はどう動くのか?

原理原則の男だったはずの竜崎。
しかし、すこしずつ変わってきている。
丸くなったのかと指摘されるほど。
そうなのか?

そうではない。
竜崎は人の話をきちんと聞いた上で、
問題解決のためには何が一番重要なのか
きちんと判断する。
間違いは認める、部下を大切に思う。
正しいと思ったら、だれにも忖度しない。
言うべきことを言う。

それは、少しも変わっていない。
それが心地よい。

神奈川県警の面々…
本部長の佐藤、ものわかりの良さをアピール
している風に見えるが….。
そして、参事官の阿久津。
なんと、彼は‘警察’の原理原則で、
竜崎をやり込めた!強者!阿久津参事官!

益々面白くなる、いっき読み必至の警察小説

『清明 隠蔽捜査8』
著者:今野敏
出版社:新潮社
価格:¥1,600(税別)