学校が地獄と化す!学園サスペンス『暗鬼夜行』

「機龍警察」シリーズで人気の月村さん。
最近はこのシリーズ以外で話題作が多く
なってきています。「東京輪舞」「悪の五輪」
「欺す衆生」など強烈なエンタメ作品が
印象に残ります。

今作「暗鬼夜行」(毎日新聞出版)は、中学校が舞台。
学校内の様々な問題を背景に、ある事件で
何者かの「悪意」が学校中を恐怖に
陥れる、そんな物語です。

小説家を目指していた汐野由悠紀夫だったが、
その夢を半ばあきらめ、中学校の教師になった。

読書感想文に力を入れているこの中学校で、
汐野はその指導にあたっていた。
彼が学校代表として推薦した女子中学生の
読書感想文について、SNS上で盗作疑惑が浮上した。

いったい誰が告発したのか?

この事件を発端に次々と告発が続き、
生徒の間では小さなパニックが広がっていった。

それは、学校内だけにとどまらず
教育委員会、政治家たちも巻き込み
騒動は過熱していった。

子どもたちは大人の思惑に翻弄され、
傷つき、疲弊してゆく。

そういう状況の中で教師たちは、生徒を
傷つけまいと必死になる。

しかし、そうした教師たちをも惑わせるこの事件。
姿を現さない不気味な告発者の影に踊らされ
学校内は地獄と化してしまう。

汐野が生徒のためにと起こした行動はすべて
裏目にでてしまい、彼が精神的に追い詰められて
行く過程は、息が詰まるようだ。

人間の嫉妬が次第に肥大し、憎悪へと変わる。
そしてそれは「悪意」となって一人の人間を
破滅に追いやるのだ。

教育現場の圧倒的リアルを背景に、人間の
心の闇に迫った、異色の学園サスペンス。

『暗鬼夜行』
著者:月村了衛
出版社:毎日新聞出版
価格:¥1,800(税別)