貫井徳郎さんの最新ミステリー『微笑む人』が不気味で怖い

貫井さんいわく、『僕のミステリーの最高到達点です』。人間の心の奥に潜む闇が、多分一番恐いと思える、ゾクゾクするミステリーです。
「本を置く場所がなくなって困る」という理由から、妻子を殺害し、逮捕・拘留された仁藤。殺害動機の異常性から、連日ワイドショーで報道され、世間の注目を浴びる。
その事件の目撃者は、その時の異様な光景に目の錯覚だと自分自身に言い聞かせた。
そうでもしないと納得できなかったからだ・・・。
いつ人に見られるかわからない、真昼間の海で、男は自分の妻らしい女性を海の中に沈めようとしている、それを必死に止める幼い娘・・・。しかし状況証拠だけで本当に殺害したのかはっきりしない。
その事件に興味を覚えた作家は、彼に関わった人たちに取材を試みる。
そうすると、彼の周辺の人物は、「彼は‘とてもいい人’で家族を殺害するなんて絶対にありえない」と口をそろえて言う。
彼らの口から語られる人物像は、ありえないくらい完璧。
しかし一部の人から聞こえてくるのは、彼はとても冷酷であったこと・・・・。
そこで彼の過去を調べていくと、大学の同級生が不審な死を遂げていたが判明。
どちらが彼の本当の姿なのか?本当に妻子を殺害したのか・・・?
クライマックスに登場する謎の女、もうわけがわからない・・・・!
常に微笑を浮かべているこの男。その微笑みには何の意味があるのだろうか?
読んでいて、あまりにも完璧すぎるこの男に嫌悪感を感じてしまった。
著者の人間描写がとても見事。不気味に微笑む人の正体は・・・・?
『微笑む人』
著者 :貫井徳郎
出版社:実業の日本社
価格:¥1,500(税別)