百田尚樹先生、会心の傑作『海賊とよばれた男』心が熱くなります!

今回は、ミステリー本の紹介をお休みして、先日講演会で百田尚樹先生がお話された、『海賊とよばれた男 上下』(講談社)について書きます。
百田先生の講演会を聴いて、どうしても読みたくなりました。
読んでる間中感動の連続でした。この出光佐三という人、すごい人です。

出光佐三は小説の中では、国岡鐵造という名前で登場します。
1945年、終戦。日本は戦争に負けた。
国岡商店は海外資産から何からすべてを失う。
大方の会社がリストラする中、国岡商店も役員たちからリストラ案を出されたが、鐡造はその案を一蹴し、一番大切な社員が残った、彼らとともに会社を復活させよう!と役員たちを説き伏せる。
上巻では、終戦後の国岡商店の復活の兆しと、鐡造がどのように会社を立ち上げ大きくしていったのかが描かれている。
いち早く石油に目をつけた鐡造は、石油事業を自分の一生の仕事にするべく、お世話になった会社を辞め、新たに会社を立ち上げる。そのとき無償で鐡造に資金を提供してくれた、日田重太郎氏はその後の鐡造の人生の師ともなる。

この上巻でなぜ国岡鐡造が‘海賊’とよばれるようになったのか?その由来も描かれている。
このくだりを読むと仕事とは工夫次第でいかようにも出来るんだな~と感心します。
また、鐡造が社員を家族同様に大切にしていることも描かれている。
勉強はもちろんのこと、立居振舞や、しつけなど本当に社員をわが子同様に扱っている。
社員を馘首にしない、出勤簿はない、組合はない、定年はない。
大きな会社になればなるほど必要なルールが国岡商店にはないのだ。
鐡造と社員との信頼関係がどれほどあついのかがわかるエピソード。

こんな国岡鐡造が店主だからこそ、会社がどんなに大変な状況になろうとも社員は落ち込まない。辞めない。
厳しい状況に置かれた時こそ、国岡商店の社員は大いなる働きを見せる。

下巻では、国岡商店が戦後、社員の猛奮闘で危機を乗り越え、業界でも1位2位を争う石油会社に復活している。
しかし日本の石油業界は、外国資本の石油会社に蹂躙され、民族資本で頑張っているのは『国岡商店』のみだった。
次々に難問を繰り出す外国資本に対して、鐡造は、日本の石油業界のために、信念を曲げず、ただ一人立ち向かっていく。
そして、とうとうイランへと旅立つことになる。
これが『日章丸』。日本初の大型タンカーが、イギリスの石油会社に乗っ取られていた、イランの石油を輸入するために出航するのだ!!このシーンは涙なくしては読めません!!!
このことが、何も知らされていなかった日本と英米ほか世界中を驚かす大ニュースとなったのだ。

上下巻をずっと読んでいて、なぜこんな凄い人が、歴史の中に埋もれていたのか・・・?不思議でならなかった。でも読み終わってなんとなくわかる気がします。

日本の未来のため、日本の石油業界のためには信念を曲げず、アメリカだろうが、イギリスだろうが、日本の発展を阻む者たちに敢然と立ち向かっていく。
利権ばかりを追求する官僚たちでは歯が立たない!
しかし鐡造のこの思いは、当時の世界の石油業界を牛耳っていた、セブンシスターズ(七人の魔女)をも味方につけてしまったのだ。
敵からも惚れられる男です。こんな日本人がいたとは・・・。感動しました・・・。
この本を読んでいるとき、日本人であることをとても嬉しく感じました。

この本を読むと、元気が出ます。どうか皆さんに読んでほしい。そして出光佐三のことを知ってほしいです。

『海賊とよばれた男 上下』
著者: 百田尚樹
出版社:講談社
価格:上下各¥1600(税別)