どこまで騙される!?「モノマネ芸人、死体を埋める」

「逆転美人」で大注目!藤崎翔さんの
「モノマネ芸人、死体を埋める」
(祥伝社文庫)読了。

元お笑い芸人の著者が描くミステリーは、
絶妙なブラックユーモアが随所に散りばめられ、
読んでいると思わずクスっと笑ってしまう。
しかも、ミステリー小説として完成された、
伏線回収もの!

往年の名投手・竹下のオンリーワンの
モノマネしかできない、モノマネ芸人の浩樹。
本者さんに嫌われては芸人として生きて
いけない弱みがあった。
モノマネ芸人としてそこそこ人気があるのは、
本物さんのおけがだ。太鼓持ちするのは当たり前
と割り切って、竹下の言いなりになっていた。

竹下は野球のことしかわからない世間知らず。
大人だけど子どもみたいなやつ。
結婚していても女癖は全く治らず、そういう
お店に行ってはお持ち帰りをしていた。

ところが、ある日浩樹が竹下に呼ばれ彼の
家に行くと、頭から血を流した女性の
死体が転がっていた。

どうも竹下は裸の写真を撮られたらしい。
それを週刊誌に売ると言われ逆上したあげく
殺してしまったとのこと。

浩樹は警察に通報と言ったが、警察に通報したら、
竹下が警察に殺人容疑で捕まり、竹下のモノマネ
しかできない浩樹は、仕事が無くなってしまう。
竹下に説き伏せられ、二人は死体を埋めることに・・・。

浩樹の完璧な隠蔽工作で、彼らのやったことは
闇に葬られたかに見えたが・・・・。
小心者の浩樹は、いつばれるかと冷や冷やもの。

殺人事件を隠蔽したあとの浩樹の苦闘ぶりは
半端ない。どんどん悪い方へと巻き込まれてゆく。

ブラックユーモアで笑いを誘いながら、巧妙に
伏線が張り巡らされている。
次々と繰り出される「どんでん返し」。
お~っとそういう展開だったのか?
浩樹とともに読んでる方も仰天の連続だ。

欲に溺れた人間の恐ろしさは戦慄ものです!

「やられた!」と叫びたくなる傑作サスペンス!

『モノマネ芸人、死体を埋める』
著者:藤崎翔
出版社:祥伝社(文庫)
価格:¥814(本体¥740+税)

都市伝説が人の心を惑わす・・・「みどり町の怪人」

彩坂美月さんの「みどり町の怪人」
(光文社文庫)読了。

以前、「向日葵を手折る」(実業之日本社刊)
を読んで、それがとても素晴らしい作品だったので
他にも読んでみたいと思っていたら、この作品
に出会った。

七つの連作短編で綴られる。

舞台は、1990年代初めで、携帯電話も
スマホもましてやSNSなどない時代。

田園にかこまれた、どこにでもある
郊外の町「みどり町」には、
不気味な都市伝説があった。
雨でもないのにレインコート纏い、女・子ども
だけを殺す?
とても痩せていて、髪はボサボサで目がギョロ
っとしている、日本刀を持っているらしい・・。
「怪人」・・・・。
その大元は、20年前に実際に起きた凄惨な
事件が隠されていた。

そんな伝説があるこの町に引っ越してきた
若いカップル。二人にはある秘密があった。

姑の過干渉に辟易する嫁。夫が単身赴任に
なり、姑の娘と3人で暮らすことになったが、
嫁は、姑の行動に不審を抱くようになる。

ある日から、仕事場で机を並べている隣人の
視線が気になり始め、次第に恐怖を抱くように・・・。

担任の先生を巡る子どもたちの諍い
切ない展開。子どもたちの切実な思い。

大学生たちがみどり町の怪人の正体を
追うと意外な真実に行き着く。

閉塞感漂う、郊外の町で起こる事件の数々。
人の心の中にある不安やうしろめたさが
恐怖を増幅させ人々は疑心暗鬼に陥る。

物語を通じて「怪人」が登場する。
その都市伝説の大元になった事件の真相が
あまりにも切なく衝撃的・・・。

それぞれの物語は自分自身が作り
出した妄想の中で恐怖を感じるが、
真実は意外な形で明らかになり、ホッとする。

ひねりの効いた展開が面白い。

『みどり町の怪人』
著者:彩坂美月
出版社:光文社(文庫)
価格:¥770(¥700+税)

驚天動地の衝撃作!「方舟」

「週刊文春ミステリーベスト102022」国内編1位。
 MRC大賞2022 第1位にランクイン
さらに本屋大賞ノミネート。
2022年のミステリー界を席捲した衝撃作。
SNS上ではネタバレ厳禁のコメントも多数。
ほんとに面白かった!

大学時代の友人たち、そして従兄と一緒に
興味本位で、山奥の地下建築を探しに行った柊一。
やっと見つけた時には日も暮れてしまい、
夜の山道を歩いて別荘に戻ることもできず、
この建築物に一泊することになった。

不気味な建築物を探検するうちに、偶然3人家族に
出会う。彼らも柊一たち同様の理由で行動を
共にすることになった。

何事もなく一夜を過ごしすぐに帰れるはずだった。

ところが翌朝地震が発生し、出口の扉が岩でふさがれてしまった。
さらに、地盤に異変が生じ水が流れ込んできたのだ。
このままでいくと、いずれこの建物は水没する・・・。

山奥の地下建築内、スマホは圏外で外に連絡する手段がない。
誰もが脱出の策を必死になって探すなか、殺人が起こった。
たった一人を犠牲にすることで、残りの人間が脱出
することが出来る。
タイムリミットはおよそ一週間!?
犠牲にはその犯人がなるべきではないか・・・・。

今までにない、タイムリミット付きの
超特殊なクローズドサークルの設定。
さらに哲学的トロッコ問題も絡め、
フワイダニット&フーダニットを提示。
本格ミステリーの面白さを存分に描き、
最後の最後で大仕掛けを施した、前代未聞の
ミステリー。

『方舟』
著者:夕木春央
出版社:講談社
価格:¥1,760(本体¥1,600+税)

度肝を抜かれる展開!「爆弾」

呉勝浩さんの「爆弾」(講談社)読了。

「このミステリーがすごい2023年版」国内編1位。
「ミステリが読みたい」国内編1位。と
年末恒例のミステリーランキング2冠達成の
話題のミステリー。
それも納得のストーリー展開!凄すぎる!

中年男が居酒屋でけんかをしていたところ、
通報され警察に連行された。

「スズキタゴサク」と名乗った男。
当初は事件だと思われたが、
取り調べで妙なことを言い始めた。
「爆弾」に関する情報だ。
霊感が働くと嘯くと、10時ぴったりに
秋葉原で何か起こると予言した。

そして予言された時間ぴったりに
その場所で爆破事件が起こった。
そして男はこのあとも三度爆破事件が
続くと言った。

とにかく不気味な男で取調官の尋問を
のらりくらりとかわし、代わりに
クイズを出してくる。まるでゲームを
楽しむように取調官を試す男。
激高し、強行的に自白させようとすると
頑なに黙秘し、ダラダラと持論を展開、
そして自分のペースへと引きこむ。

事件を起こした動機も目的も引き出すことが
出来ないばかりか、爆弾の在処の手がかりは
容疑者が出題する「クイズ」のみ。
限られたヒントから、必死に答えを読み解く
捜査官たち。

そして、密室では取調官と男の駆け引きが延々と続く・・・。

スズキタゴサクは、ものすごく頭がいい奴だ。
彼の理論は自分勝手でめちゃくちゃだが、
彼の言葉に振り回される。
そして、彼を相手にした人間は自分の心に巣食う
己に対する嫌悪を煽られる。

絶対に相手にしたくない人間。
人間の心を壊し絶望の淵に追いやる
ロジックを繰り出す、人間の仮面を
かぶった恐ろしいモンスター。

そんな男を相手に、ひたすら事件解決に
奮闘する警察官たちの闘いが読み応えたっぷりに描かれる。

確かに、2022年NO.1ミステリーに間違いない!

『爆弾』
著者:呉勝浩
出版社:講談社
価格:¥1,980(本体¥1,800+税)

かつてない超絶トリック!「逆転美人」

今、ミステリーファンの間でかなり注目
されている、藤崎翔さんの「逆転美人」
(双葉文庫)。
気になって気になって我慢できずに読みました。

あまりにも美人に生まれついたがために、
幼いころから犯罪に巻き込まれたり、
いじめを受けたりと数々の不幸に見舞われてきた、
シングルマザーの香織(仮名)。

とうとう娘の学校の教師にまで襲われ、
その事件が大々的に報じられたのを機に
手記「逆転美人」を出版。

読み進めると、この「手記」は違和感満載。
それは著者が仕掛けた罠だった!

空前絶後の超絶トリックに唖然!
紙の本でしかできない大仕掛けに
あなたは気づくことが出来るか?

藤崎翔さんの作品は横溝正史ミステリ大賞
受賞作「神様の裏の顔」が、どんでん返しに次ぐ
どんでん返しで、とんでもなく面白かったが、
この「逆転美人」はその作品を超える
仰天トリック!その凄すぎる仕掛けに
脱帽しかない。

おススメ度NO.1のミステリー作品。

『逆転美人』
著者:藤崎翔
出版社:双葉社(文庫)
価格:¥836(本体¥760+税)

戦慄のサスペンスミステリー「花束は毒」

読みたかった織守きょうやさんの
「花束は毒」を読了。
随所に仕掛けられた罠に絶句!!

中学生の時に、木瀬の従兄はいじめを受けていた。
それを解決したのが木瀬の1年先輩の北見理花。
彼女が解決してくれたおかげで従兄は
いじめから解放された。
しかし、その「解決」に疑問を持った木瀬は
心に棘のようなものが残ってしまった。

それから六年後、木瀬はかつての家庭教師・
真壁と出会う。
当時はイケメンで快活、医者志望で女子に
人気があったが、再会した真壁は別人のように
変わっていた。

それでも木瀬との再会を喜び、久しぶりに
一緒に食事をした。
近ぢか結婚する予定であることを少し
照れくさそうに話した。
ところが、木瀬が真壁をアパートに送って
行ったとき、ゴミ箱からくしゃくしゃに
なった手紙を発見する。
それは脅迫状のようなものだった。

度々脅迫状が来るという真壁の話に衝撃
を受けた木瀬は、真壁に調査会社を通して
調べてもらうことを提案する。

探偵事務所を探してたどり着いたのは、
中学時代の先輩・北見理花がいる事務所だった。

木瀬は北見に事情を話して、真壁から連絡が
きたら協力して欲しいと頼む。

しかし、真壁から北見に調査の依頼は無かった。
業を煮やした木瀬は、真壁の代わりに調査を
依頼する。
北見と二人で真壁の周辺を調べ始めると、
真壁が大学を中退し医者の夢をあきらめたと知る。
そして、真壁にはその脅迫者を追及できない理由が
あった・・・・。

二人の調査によって明かされる真壁の過去。
脅迫者とは誰なのか?
謎は深まり、混迷してゆく・・・。

何者かの巧緻な計略によって、幾重にも
張り巡らされた罠。
誰もがその罠にはまってゆく。

読み進め、真相がわかった時には鳥肌が
たってしまった。
読了した後、呆然自失。
そして徐々に背筋が凍るほどの衝撃が
襲いかかる。

更にラストに提示された深すぎる問い。
自分だったらどうするのか?
その答えは・・・・!?。

『花束は毒』
著者:織守きょうや
出版社:文藝春秋
価格:¥1,870(本体¥1,700+税)

開署準備に追われる署員たちを襲う前代未聞の事件!?『開署準備室 巡査長・野路明良』

「女副署長」シリーズでおなじみの
松嶋智左さんの新シリーズ「巡査長・野路明良」
第一弾「開署準備室」読了。
元警察官で、初の女性白バイ隊員だった
著者の、白バイの描写がものすごくリアル!

巡査長・野路明良は、白バイ隊員のエース
で、全国白バイ安全運転競技大会で優秀な
成績を収め、Y県警本部を優勝に導いた
男だった。しかし、後輩とともに捜査中
車の事故で後輩を死なせたうえに、自分自身も
右手の指二本に障害を負い、二度と
白バイには乗れなくなった。
リハビリ後の復帰先は、吸収合併で
出来た姫野市に置かれる、姫野署の開署準備
のために臨時で作られた総務担当だった。
その異動で、野路は自棄になっていた。

四日後に開署予定の姫野署の準備は終盤を
迎えていた。
野路は、総務担当の山辺礼美らとともに
最終チェックに明け暮れている。
ところが、不審な出来事が次々と起こる
発注外の大型什器の搬入、防犯カメラの
誤作動、不審人物の目撃など・・・。
本部のお偉方を招いてのセレモニーに
暗雲が立ち込める・・・。

一方Y県にそびえる信大山のキャンプ場で
人間の白骨遺体が発見された!?
捜査本部が出来るが、身元が判明しないまま
捜査は膠着状態に陥った・・・。

開署準備に追われる野路らを放って、
ベテラン刑事だった上司の飯尾は、
白骨死体の捜査に首をつっこむ始末・・・。

だが、飯尾の行動は膠着状態だった
捜査が動き出すきっかけとなるのだ。

開署前の姫野署で続く不審な事件、
さらに白骨死体の事件が交差した時
迷宮入りしていた事件に繋がる!

しかしその事が、姫野署を大惨事に
巻き込んでゆく!

白バイが疾走し、奇跡的な運転技術を見せる
シーンは、元白バイ警官の知識と経験が
これでもかと発揮され、圧倒的な
臨場感で描かれている。

大胆不敵、空前絶後の展開で読者を
翻弄する、稀にみる面白さで迫る警察小説!

『開署準備室 巡査長・野路明良』
著者:松嶋智佐
出版社:祥伝社(文庫)
価格:¥770(本体¥700+税)

大江戸科学捜査八丁堀おゆう、第9弾!「司法解剖には解体新書を」

江戸と現代を往来する、元OLの関口優佳・
通称おゆう。
江戸で起きた事件の謎を現代の科学捜査で
解き明かす!
めちゃめちゃ面白い時空探偵ミステリー。

現代では、コロナ感染拡大第2波が囁かれる中、
優佳こと、女親分・おゆうは、南町奉行所同心・
鵜飼伝三郎と源七親分とともに、鵜飼の上司・
戸山から内偵を依頼される。

前長崎奉行の配下だった、河村右馬助の死に
不審な向きがあるという。
おゆうたちが調査を始めると、ほかにも
同じ状況で急死していたものが現れた。
唐物商の平戸屋の主人だ。
もしかして、食あたりか・・・?
しかし二人とも医師の見立ては現代で
いうところの心臓麻痺で亡くなったらしい。
二人の死の共通項を調査しているところで
また新たに急死者が出た!

おゆうたちは毒殺ではないかと疑いを持つ。
そして、おゆうは東京へもどり、事件の
詳細を宇田川に報告。
当時の江戸にはない「毒物」が使われたのでは
という推測がたったが・・・・

杉田玄白、その弟子や漢方医のほか、
蘭学医が徐々に増えている背景の中、
毒殺事件の謎を追う、おゆうたち。
毒は何が使われたのか?それを突き止めるには
司法解剖しかないが、江戸時代は禁じられている。
果たしてそれが出来るのか・・・?

歴史の事実とフィクションが見事に融合。
さらにロジカルに解き明かされる真相に驚愕!
毒の正体と、一連の事件の黒幕は誰なのか?
など「謎解き」の醍醐味が味わえる。
安定した面白さでシリーズが積み上げられてゆく。

そして、いつもやきもきさせられるのは
おゆうと鵜飼と宇田川の三角関係は
どう転ぶのか・・・だ。
宇田川のおゆうに対する気持ちは何?
気になる気になる~~~。

ということで、大変面白かった。

『大江戸科学捜査八丁堀おゆう 司法解剖には解体新書を』
著者:山本巧次
出版社:宝島社
価格:¥780(¥709+税)

バチカン奇跡調査官シリーズ最新作!「秘密の花園」

藤木稟さんの人気シリーズ「バチカン奇跡調査官」
最新刊は、「秘密の花園」(角川ホラー文庫)。
アメデオ・アッカルディ、エレイン&ジュリア、平賀&ロベルト
が登場する三つの短編が収録されている。

アッカルディ大佐は息子から「父さんみたいな
りっぱなカラビニエリの軍人になりたい」と
言われ、とても幸せに感じた。
そんなアッカルディ大佐のもとへ、またしても
不可解な事件の捜査が舞い込んできた。
「ローレン」案件だと思ったが、息子のために
今回は自分一人で捜査をすることに決める。
汚職事件の真っただ中にいる、保険大臣が
殺害された。その殺人を自白したのはなんと
獄中にいる殺人鬼。自分の生霊が脱獄して
犯行に及んだと言っているらしい。
アッカルディ大佐は、ローレンの支援なしに
真相に辿り着けるのか!?
【生霊殺人事件】

ウオール街でいくつも会社経営を行うルッジェリの
第一秘書・エレインは、彼の命令で
ヨーロッパ貴族の血をひくセレブ・ジュリアの
身辺調査をすることになった。周到な準備を整え
ジュリアに面会することに成功するが・・・。
自らもセレブになるべく、人生の全てをかけて
磨き抜いた才能を身につけたエレイン。
彼女の計画は成功するのか?
【エレイン・シーモアの秘密の花園】

奇跡調査官のロベルトは、平賀の誕生日
を祝うために食事に誘った。
その帰り道、何かを探している少女に出合った。
聞けば。飼い猫が行方不明になったという。
泣き出した少女を放っておけず、二人も猫
探しに協力することに!
二人の優しい行動に心が癒される。
【迷い猫】

シリーズ中、人気のキャラクターが登場する短編集。
猟奇殺人事件に挑む、アッカルディ大佐・フィオナ
ローレン。不可能犯罪「ハウダニット」と
犯人あて「フーダニット」。謎解きの醍醐味が
味わえる、短編ながら読み応えあり。
エレインが多彩な仕掛けと駆け引きで
ターゲットに迫る物語は読んでいて「凄い」と
唸ってしまった。
二つの短編は、殺人であったり、誰かを
騙したりという人間の暗い部分が描かれているが
ロベルトと平賀の優しさが炸裂する章で心が
救われた。

『バチカン奇跡調査官 秘密の花園』
著者:藤木稟
出版社:KADOKAWA(文庫)
価格:¥792(本体¥720+税)

ワクワクが止まらない、凄すぎるミステリ作家ラインナップ!「本格王2022」

本格ミステリ作家クラブが厳選した6作品。
ミステリファンにはたまらない超豪華
ラインナップに期待が高まる!

その町で50年ぶりに殺人事件が起きた。
事件があった夜、一匹の犬が事件現場から消えた。
その犬を必死に探す、女刑事。
その犬を探すため、女刑事は怪しいと知りながら、
民間の動物専門の探偵会社に依頼する。
なぜ、そんな危ない橋を・・・?その理由にハッとする。
道尾秀介「眠らない刑事と犬」

悪役を演じてきた俳優の家にお茶に誘われた
女性。彼女はかつて家政婦を務めた初日に、
毒殺事件を目の当たりにしたという。
犯人も、どうやって毒を盛られたのかもわからず迷宮入り。
「カラマーゾフの兄弟」からインスパイアされた、
犯人当てミステリー。その真相に「こうきたか!?」と思わず唸る。
大山誠一郎「カラマーゾフの毒」

庭付きのマイホームを購入しようと思い立った
元刑事は、早速不動産屋へと向かう。
そこで紹介された物件は、元刑事が現役時代
事件の捜査で何度も足を運んだ物件だった。
マンションの階段から転落死した女性。
当初は自殺とみられたが、遺書も動機も
なく、他殺の疑いがあるとされた・・・。
元刑事が辿る思考・・・。ぞわりぞわりとさせられる。
芦沢央「アイランド・キッチン」

生物の影を喰らい、その生物を死に至らしめる影魚。
友人と二人、別荘へいくつもりが山で迷ってしまい、
「影魚」の生息地へ踏み込んでしまった。
影を食べられると1時間で死んでしまう。
その前に影魚用の特効薬を飲めば助かる。
しかし手元には1錠しか残っていない。
その影魚に喰われたのは、友人か?愛犬か?
どちらに飲ませるか?究極の二者択一!
著者得意の特殊設定物。驚きのどんでん返し!
方丈貴恵「影を喰うもの」

初めての合コンに参加した、男子大学生に
ふりかかった思わぬ幸運。5人もの女性から
好意を持たれるが、一人だけが本命であとの
4人は地雷だらけの訳ありなのだ。
本当に彼を好きな女性は誰なのか?
「彼を好き」という情報しかない中、
地雷を踏まず、運命の人を見つけることは
出来るのか?細々と探り当てる情報から
消去法で「運命の人」を推理する。
超面白いユーモアたっぷりのミステリ。
浅倉秋成「糸の人を探して」

兄が執筆中の犯人当て推理小説の手書き
原稿を汚してしまった弟とそのクラスメート。
二人は何とかして汚れてしまった部分を
復元しようと試みるが・・・。
復元場所が提示され、読者もついつい推理に
してしまいそうになる「読者への挑戦状」
めいた展開にもなっていて楽しい。
森川智喜「フーダニット・リセプション」

人気ミステリ作家競作!短編だけれど
読み応えたっぷりの傑作アンソロジー集。

『本格王2022』
著者:道尾秀介/大山誠一郎/芦沢央/方丈貴恵/浅倉秋成/森川智喜
出版社:講談社
価格:¥924(¥840+税)