メイントリックが最初に明かされる!?「殺しの双曲線」」

西村京太郎さんの「華麗なる誘拐」に
続き、「殺しの双曲線」を読みました。

トラベルミステリーに移行する前に
描かれた、陸の孤島の密室殺人ものです。
アガサ・クリスティの
「そして、誰もいなくなった」に
挑戦した本格ミステリーで、
さらに、興味深いのはこの作品の
メイントリックは双生児であることを
利用したと最初に断っているところ。

通常ならネタバレになりそうですが、
推理小説のタブーである、双生児の
替え玉トリックを利用する場合は
読者に対しアンフェアになるため、
あえてそれを予告したということ。

どんな展開なのか?
ワクワクしつつ読みました。

差出人不明の招待状が6名の男女に届けられた。
それは東北の山荘への招待状だった。

不信感を抱きながらも、多少豪華な
旅行が当たったと思い、彼らは
その山荘に集まってきたのだ。
それは、美しい銀世界にたたずむ洋館。

ところが、彼らの到着直後から、
雪上車の故障、電話線の切断など、次々と
不運なことが襲い連絡手段の一切が断絶。
陸の孤島に閉じ込められてしまう。

そして、招待客は次々と何ものかによって
殺害されてゆく。
雪に覆われた山荘には、誰も近づくことも
逃げることも出来ない。
そうなると、誰が殺害の犯人なのか?
招待客の誰かが犯人ということに・・・。
彼らは互いに疑心暗鬼に陥る。

同じころ、東京では双生児による連続
強盗事件が発生していた。
犯人は明らかなはずなのに、決定的な
証拠がなく逮捕できない!
警察はその知能的犯罪に翻弄されていた。

双生児の替え玉トリックだと最初に
断っているにも関わらず、
犯人の目的、殺害動機、どんなトリックが
使われているのか?一向に見えない。
そして、双生児による強盗事件と
山荘の連続殺人・・・。
これらの関係は!?

あえてメイントリックを明かしたことで
読み手はさらに著者に翻弄されたのではないか?

簡単にはトリックの謎は解けない。
まんまと騙された、その快感がたまらない作品。

「華麗なる誘拐」に勝るとも劣らない、西村
作品初期の屈指の名作。

『殺しの双曲線』』
著者:西村京太郎
出版社:講談社(文庫)
価格:¥800(税別)