第66回江戸川乱歩賞受賞作「わたしが消える」

毎年楽しみにしている、江戸川乱歩賞受賞作。
今年は佐野広実さんの「わたしが消える」
が受賞!読みました!

元刑事で、今は古いマンションの管理人の藤巻。
最近物忘れがひどくなっているので、病院で
検査を受けたら軽度の認知症と診断された。

いつか自分がわからなくなってしまうという
恐怖を背負いながら、20年近く離れて暮らして
いた娘からの頼み事を引き受けてしまった。

それは、娘が働く老人福祉施設の門の前に
置き去りにされた、認知症の老人の身元を
調べて欲しいということだった。

20年前にあることがきっかけで、
刑事を辞めた藤巻だった。
いまさら刑事のようなことは
できないと思ったが、なんとか娘の力に
なりたいと、その老人に会うことに。

施設では警察にも届けていた。その時指紋は
とらなかったらしく、改めて指紋をとり、
それを昔のなじみの刑事に鑑定を依頼した。

だが、指紋照合をしても該当の人物はいない
とのことだった。
しかし・・・。

それからしばらくして、老人を置きざりに
した女性が名乗りでてきた。これで一件落着と
思ったが、彼女から見せられた老人の
持ち物を確認すると、なんらかの犯罪に
関わっていたのではという疑いがでてきた。

ここから事態は藤巻の想像をはるかに超えた
方向に動き出す!

藤巻の周辺で起こる不可解な事件。
謎の人物たちの監視・・・・。
暴力的脅迫・・・。
藤巻は何を突いてしまったのか?

物語が進むにつれ、謎が謎を引き寄せ
怒涛のような展開が読み手を惹きつける!

そして、老人の正体が明らかになる過程で
見えてくる警察の闇。
封印されていた、日本社会の暗部を暴き出だす。

21年前に「松本清張賞」を受賞した実力派が
描く、社会派ミステリーの傑作。

『わたしが消える』
著者:佐野宏実
出版社:講談社
価格:¥1,800(税別)