レジェンドが描く圧巻ミステリー『たかが殺人じゃないか』

このミステリーがすごい2021版国内編第1位
週刊文春2020ミステリー・ベスト10国内部門第1位
ミステリが読みたい!国内編第1位!
年末の主要ミステリーランキングで3冠に輝いた
辻真先さんの「たかが殺人じゃないか」
(東京創元社)を読みました。
辻真先さんは88歳、ミステリーランキング
史上最高齢での栄冠!

昭和24年、学校制度の変更で突然
男女共学になった、高校生たち。
その高校生たちの目線で描かれる。

私たちがあまり知らなかった戦後
数年の陰の歴史がこの作品で詳細に
描かれている。

それは、著者自身が青春時代に
経験したことであり、今作品で
著者は本音を書いたと言っている。

戦後4年も経過しているのにいまだに
敗戦を認めない年配の男たち。
そのうえ、男尊女卑も甚だしい。

なんと、日本政府は進駐軍のアメリカ兵士を
慰めるために、「進駐軍慰安」と称して日本人
女性を募集し、アメリカ兵士に差し出した。
お金と食料のため、意味もわからず応募した
女性はたくさんいた。
今では考えられない、信じられない事実・・・・。
この時代の日本社会の混乱ぶりを伺わせる。

推理小説&映画研究会に所属する高校生たちは、
男女共学をとまどいながらも受け入れる。
推理小説大好きの主人公は、初恋と失恋を一度に
経験!なんて明るいドタバタもある。

母の病気を治すためにアメリカ兵士のオンリーに
なるしかなかった同級生の女の子の哀しみ。
様々な事情を抱えた高校生たちの姿が
瑞々しく描き出されている。

そんなある日、研究会の面々が近場の温泉に
修学旅行に行ったとき、密室殺人事件に遭遇する。
被害者は誰もが良く知る人物だった。
推理小説研究会のメンバーたちは、刑事を交えて
密室の謎の解明に挑むがなかなか真相にたどり着けない。

そんな中、台風の夜学校で研究会活動をしている最中、
バラバラ殺人に遭遇した!!!

いったい誰が何のためにどうやって殺人を犯したのか?

緻密に練り上げられた謎とトリック!
事件が起きた悲劇的な真相!
本格ミステリの醍醐味が味わえる、圧巻の展開!

そして何より、この時代の日本社会、時代背景を
知ることができたのは貴重な体験!

88歳のレジェンドだからこそ描けた青春×ミステリー。

『たかが殺人じゃないか 昭和24年の推理小説』
著者:辻真先
出版社:東京創元社
価格:¥2,200(税別)