犬飼刑事シリーズ第4弾「ドクター・デスの遺産」
を読みました。
「安楽死」に対する著者の深い考察が
この作品をただの警察ミステリーと
して終わらせていない。
日本社会の背景がしっかりと描き込まれ
さらに問題提起されている。
警視庁本部に設置された通信指令
センターに一人の少年から通報があった。
闘病中の父が悪い医者に殺されたというのだ。
少年は昨日も同じことを通報してきた。
話を聞いた女性警官は、2日続けての
少年の訴えに同情し、捜査一課の
高千穂刑事に事情を説明した。
高千穂は、相棒の犬飼刑事に相談。
露骨に嫌そうな顔をされるが、
二人は少年の家に事情聴取に向かった。
母親は息子の勘違いだと説明したが、
近所の聞き込みにより、親子の
意見が食い違うことが発覚。
嘘をついているのは母親のようだ。
そこで、犬飼らが母親の周辺を調査すると
「ドクター・デス」という怪しい
サイトにアクセスしていることを
突き止める。
「ドクター・デス」は、安らかで
苦痛のない死を20万円で提供する
という医師が開設したサイトだった・・・。
この少年の通報を契機に、日本各地で
類似の事件が次々と明らかになる。
難航する捜査。
ドクター・デスと名乗る医師の正体とは?
海外ではすでに認められている「安楽死」。
日本では未だにタブー視されている。
しかし、苦しい痛みを伴う難病や末期がん
の凄惨さは本人もつらい、看病する家族もつらい。
愛する人の苦しみを少しでも軽減したい。
そして楽にしてあげたいと思うのは
いけないことなのか?
もし自分がそういう立場になったら
どうするだろう・・・?
「生」と「死」について、深く考え
させられる。
そして、物語中盤の驚くべき展開に
衝撃を受けた!
日本社会の歪みに「どんでん返しの帝王」が
鋭く斬り込んだ、究極の社会派ミステリー。
『ドクター・デスの遺産 刑事犬養隼人』
著者:中山七里
出版社:KADOKAWA(文庫)
価格:¥640(税別)