乱歩賞作家が描く、法律人情ミステリー『凸凹サバンナ』

昨年、異色のミステリー「完盗オンサイト」で江戸川乱歩賞を受賞した、玖村まゆみさんの受賞後第1作は、心が温かくなる、リーガルミステリーの連作短編です。

法律事務所を開業したばかりの田中貞夫。集まってくる依頼はどれもこれも一筋縄ではいかないものばかり。
離婚問題で相談にきた気のいい小さな会社の社長。
田中は社長の一方的な話から夫婦間には何か秘密があると感じる。さっそく彼の会社で聞き込みを開始する・・・・。豚のボニータが登場。とても可愛い。この豚さんがこの作品では重要な役割。
次に相談にくるのはなんと小学生の女の子。凄い美少女。タレントになりたいと母親に相談したところ全く話を聞いてくれない。ちゃんと話を聞いてくれる人・・・そう、ということで田中の元へ・・・。??母親が反対する理由は??
そしてこの回ではロシア人の女の子たちからも相談を受けてしまう。困惑する田中。
また、お隣さんとのトラブルで悩む主婦。
境界について隣の男性と話をしたいが、全く話をしようという気持ちがない。そこで田中に相談したのだが・・・・。この男性の過去に何が?
さらなる相談は、田中が死にそうになったとき助けてくれた、やや強面の仕事をしている原口。
小さな詐欺を繰り返し小銭を稼ぐ原口の知り合いから、資産家の婦人を助けてやってほしいとの依頼。人が好いのですぐに騙されちゃう気のいいおばあちゃん。
小銭を稼ぐ詐欺連中からはとても大事にされている。そんなおばあちゃんが、かなりやばい詐欺にあいそうだと情報が入ったらしい!原口の頼みを断れない田中は、その婦人を助けるために奔走する!・・・・
田中の真摯で生真面目な態度は相談者から信頼される。
そして田中もそんな自分を認めようとするが、ある日田中の事務所に一枚のメモが・・・・。
田中はそのメモをみて忘れようとしていた過去へと引き戻される・・・・。実は田中には誰にも言えない秘密があった・・・。

連作短編で、登場人物がすべて魅力的!そして話がとても面白い!一話一話のラストはぐっとくるエピソードが描かれてじわ~と心に沁みる。人情あふれる法律エンターティメントです。

『凸凹サバンナ』
著者: 玖村まゆみ
出版社:講談社
価格:¥1,400(税別)