堂場作品初!女性刑事が主人公「聖刻」

これまで数々の警察小説のシリーズを
描いてきた堂場瞬一さん。
この「聖刻」(講談社)で初めて
女性刑事が主人公として描かれます。

朝のワイドショーで長く司会を務める
人気司会者の息子が、元恋人を殺害した
として自首してきた。

捜査一課の女性刑事・柿谷晶は、
取り調べを行うが半落ちだった。
犯行は自供するが、動機の追求を
すると黙秘してしまう・・・。

晶は、犯行動機を探るため、被疑者の
家族を聴取する。
しかし、家族はネットの誹謗中傷に
悩まされていた。
さらに、被疑者の父親は、息子の
事件の責任をとり、ワイドショーの
司会の仕事を辞め、テレビの仕事も
引退すると宣言した。
それでもネット上では説明責任が
果たされていないなど、身勝手な中傷が
まるでこれこそが正義だといわんばかりに
拡散されていたのだ。

事件を起こしたのは加害者なのだ。
その家族だからと言って、理不尽に
責められる・・・。そんなことが
許されていいのか?

「正義」という名のもとの「悪意」
がどんどん拡散され、加害者家族を
追い詰める・・・。

事件の真相を探るため、被疑者の家族に
張り付く晶だが、自らの過去と重なり、
いつの間にか心を寄せるようになる。

そして、犯罪被害者支援課の村野たちと
協力し、尽きることのない被害者家族への
「悪意」と闘いながら捜査を続ける晶。

だが、またしても悲劇が起きてしまう!

加害者と被害者の狭間で苦悩する柿谷。
事件の真相にたどり着くことは出来るのか?

事件の被害者に寄り添う村野たち支援課
メンバーの働きから事件の真相に迫った
「警視庁犯罪被害者支援課」シリーズ。

しかし、犯罪被害者遺族と同じくらい
加害者家族にも寄り添う必要がある
のではないかと問題提起をした本作。

加害者家族に向け、ネット内で繰り
広げられるすさじい誹謗中傷。
何の権利があってそこまで貶めるのか?

加害者家族をも護らなければならない。
著者の切実な思いがあふれる。

そして、「警視庁犯罪被害者支援課」が
新たな局面をむかえる。
傑作警察サスペンス!

『聖刻』
著者:堂場瞬一
出版社:講談社
価格:¥1,870(¥1,700+税)