2021年、第67回江戸川乱歩賞受賞作です!
今年は2作品が受賞しました。
10月に発売された伏尾美紀さんの
「北緯43度のコールドケース」。
この作品、著者の伏尾さん、
長編ミステリー初挑戦、そして乱歩賞
初応募で、初受賞の快挙を成した作品。
デビュー作なのに、まるでベテラン作家
のような風格を感じました。
博士号を持ちながら、30歳で北海道警察の
警察官となった沢村依理子は、その異色の
経歴ゆえ、少し浮いた存在だった。
依理子は、北海道警察本部刑事企画課に
所属していたが、警部補昇進を機に
中南署の強行犯係に異動となった。
そこで、ベテラン刑事・瀧本に師事する。
警察は今でも男性優位社会。しかも
異色の経歴を持つ依理子になんとなく
周囲からのあたりはきつい。
しかし、瀧本は依理子に対し男女の区別なく
捜査方法や取り調べのやり方など丁寧
に教えてくれた。
依理子は瀧本を尊敬するようになる。
ところがある事件の被疑者の取り調べで
瀧本の態度が一変する。
それは、5年前に未解決となっていた誘拐事件の
被害者であった少女の遺体が発見されたことが
きっかけだった。
盗犯係が任意で引っ張て来た窃盗犯が
少女の遺体に関する供述を始めたのだ。
瀧本はその取り調べを強引に始めた・・・。
依理子はその姿に激しい衝撃を受ける。
5年前の女児誘拐事件の犯人と思われる
男はすでに死亡している。誰もが共犯者
を疑った。そして再び捜査本部が設置
されたが、またしても未解決に終わってしまう。
しばらく後、5年前の誘拐事件の捜査資料が
漏洩してしまう。
あろうことか、依理子は漏洩犯としての
疑いをかけられる。
自分の身の潔白を証明しようと、必死で
捜査にあたる依理子。
その過程で、依理子は信じがたい事実を知る・・・。
組織の不条理に翻弄されつつも、正義を
追い求める依理子。
それは孤独な闘いだ。
彼女の切なすぎる過去、家族との確執、
同僚との絆、先輩刑事への思い。
誘拐事件の謎解きの過程が緻密な伏線を
配し描かれると同時に、依理子の背景も
丁寧に描かれ、グイグイと読ませられる。
一人の女性の葛藤と、苦悩を乗り越え
刑事として成長してゆく主人公の
姿がまぶしい。
これがデビュー作か!?と突っ込みたくなる
くらい読み応えたっぷりで読後の満足感も
半端ない!
傑作!!!!本格警察ミステリー。
『北緯43度のコールドケース』
著者:伏尾美紀
出版社:講談社
価格:¥1,925(本体¥1,750+税)