昨年12月にもドラマ化された、大山誠一郎さんの
「赤い博物館」(文春文庫)。
その第2弾「記憶の中の誘拐」を読みました。
第1弾と同様に息をのむほど鮮やかな推理で解決される。
警視庁付属犯罪資料館、通称「赤い博物館」は、
警視庁管内で起きた事件の証拠品(凶器・遺留品)
・捜査書類など、一定期間の過ぎた物を所轄署から
預かり保管する場所。その中には、迷宮入りした
捜査資料もある。
資料館に勤務するのは巡査部長の寺田。
直属の上司は、博物館の館長でキャリアの緋色冴子。
頭脳明晰で、これまで迷宮入りした事件、5件も
解決に導いている。
寺田の通常の仕事は所轄から回されてきた
捜査資料などのラベル貼りや整理だ。
冴子は、迷宮入りした捜査資料を読み込み、
疑問が発生した事件の再捜査をする。
今回冴子と寺田が再捜査したのは、
二十三年前に学校の屋上で女子高生が殺害された事件。
容疑がかかったのは、同じ部活動の先輩にあたる男子生徒。
しかし、決定的な証拠は見つからず迷宮入りした。
1990年に起きた府中・国分寺・国立・立川連続放火事件。
平成の八百屋お七事件と言われた。
放火犯は放火することで、ある人に逢いたいと願っていた。
1999年に荒川で起きたバラバラ殺人事件。
容疑者は絞られたが、確たる証拠もなく
結局迷宮入りしてしまう。
ところが資料を読んだ冴子は異様な
バラバラ死体に疑問を持った。
1990年、社内で密かに同僚や上司らに
金を貸し、無謀な取り立てをしていた男が
自宅で殺害された。
犯人と思われる名前が書かれたダインイグ
メッセージが遺されていたが、その人物には、
アリバイがあった・・・。
寺田の友人は幼い頃に誘拐されたことが
あった。誘拐したのは、友人の実母
だった。なぜ実母は自分を誘拐したのか
知りたいと願う友人。寺田は冴子に
事件の再捜査を申し出た。
コミュニケーション能力は皆無だが、
ずば抜けた推理能力を持つ緋色冴子。
これまでは、冴子の命令通りに、
寺田が一人で捜査をしていたが、
今回から冴子が捜査に加わると言った。
関係者とうまくコミュニケーションが
とれるのか?ハラハラする寺田をよそに
的確な質問で、資料にはなかった事実を
引き出してゆく冴子。
徹底的に考え抜かれ緻密に設定された
事件の数々がとにかく面白い。
叙述トリックを巧みに使い、
読み手を翻弄し、あっと言わせる、
飽きさせないストーリー展開に
どんどん引き込まれてゆく。
息をのむほど鮮やかな推理で解決される!
『記憶の中の誘拐 赤い博物館』
著者:大山誠一郎
出版社:文藝春秋(文庫)
価格:¥836(本体¥760+税)