心震える展開!『陽だまりに至る病』

「希望が死んだ夜に」「あの子の殺人計画」で
子どもの貧困や虐待を描いてきた、天祢涼さん。
最新刊「陽だまりに至る病」はコロナ禍、貧困、
ネグレクトを背景に追いつめられる少女たちの
姿を描く、またしても切なさが心をえぐる作品。

新型コロナウイルスの流行による、
緊急事態宣言のなか、小学五年生の
咲陽は、両親から、
「困っている人がいたらなにかしてあげないと」
と言われていた。

日ごろからネットでニュースをチェック
している咲陽は、町田のホテルで起きた
女性殺人事件を気にしていた。
その目撃者が現れたらしいとのニュースが
入っていた。

咲陽は、クラス中で浮いた存在だった
同級生の小夜子が「父親が仕事で帰ってこない」
と聞き、心配して家に連れて帰ってしまう。

ところが、コロナ感染を心配する母親に
小夜子を連れて帰ったことを言い出せない。
仕方なく自分の部屋に匿うことに・・・・。

翌日、小夜子を探しているという刑事が
咲陽の家を訪ねてくる。
咲陽はどぎまぎしながら警察の質問に答えるが・・・。

咲陽は、町田の事件の件で小夜子と話をしたとき、
小夜子が思わずつぶやいた言葉から、あの殺人
事件の犯人は、小夜子の父親でではないかと
疑いを持つ。

たくさんの大きな秘密を抱えてしまった咲陽。
小夜子への思い、殺人事件の犯人、両親に
嘘をついているという罪悪感、さらに父親の
経営するレストランがコロナ禍で営業危機に
なり、貧乏になってしまうという恐怖感・・・。

仲田刑事は、そんな咲陽を心配し、心を
寄せる・・・。

町田女性殺人事件の捜査過程と咲陽と小夜子の
交流の過程が同時並行で交互に描かれる。
その二つが交差したとき、事件は意外な終結を見せる。

それまでお互いに気を使って本音を言えなかった
咲陽と小夜子。二人の気持ちをぶつけあうクライマックスは、
涙腺崩壊・・・。

子どもたちの思いに心が震える、社会派ミステリー第3弾!

『陽だまりに至る病』
著者:天祢涼
出版社:文藝春秋
価格:¥1,870(¥1,700+税)