爽やかすぎる、胸アツ!青春ミステリー!「図書室のはこぶね」

名取佐和子さんの「図書室のはこぶね」
実業之日本社読了。初読みの作家さん。

高校生活を通し一番盛り上がる、「体育祭」。
その高校では、名物ダンスがあった。
名曲「サタデーナイト」でクラスごとに特色を
出して踊る、「土ダン」だ。
長年続くこの「土ダン」のルールにに異議を
唱える生徒が現れ・・・・。

女子バレー部のエース・百瀬花音(ももせかのん)は、
高校3年生。
高校最後の試合を前に足に怪我を負い、出場出来なかった。
そして、その怪我の影響で高校最後の体育祭も
競技参加できず、暇を持て余していた。

そんな時、親友の紗千から図書委員の仕事を頼まれた。
紗千は、間近に迫った体育祭の準備が忙しく、
図書委員の活動が出来ず、花音に声をかけたのだ。

本とはいっさい無縁の生活をしていた花音。
図書室に行くと、図書委員の俵朔太郎(たわらさくたろう)
がいた。

朔太郎は、妙な距離感で花音に話しかけてくる。
花音はとまどいながらも、朔太郎との距離を縮めてゆく。

学校で一番盛り上がりを見せる「体育祭」はもう間近。
図書館は誰もいないが、きちんと仕事はある。
朔太郎から仕事を教えてもらい本の返却作業をしていた花音は、
ケストナーの「飛ぶ教室」がカウンターに置きっぱなしに
なっていたのを見つける。
蔵書数は1冊なのに、手元には2冊ある。

しかもこの1冊は10年前に貸し出されたもの。
10年後に返却されたのはどういうこと?

朔太郎から読んでみたら?と貸し出され、
花音は久しぶりに「飛ぶ教室」を読んでみた。

次の日、朔太郎と二人、図書館業務をこなしていたら、
まるで女の子みたいな男の子が半裸で図書館に
駆け込んできた。1年生のようでクラスメートから
追われているようだ。二人は彼を匿い、事情を
聞いた。
この1年生のクラスは、今度の土ダンで野球場を
テーマに踊るらしい。彼は客席を回るビールの
売り子で女装をする役になった。花音と
朔太郎は「ピッタリじゃん」と心の中で
思ったけど言わなかった。
しかし、彼は絶対に女装をしたくないと言った。
何か事情があるらしい・・・・。

花音は「飛ぶ教室」に挟まれていた
あるメモを見つけた。
そこには「方舟はいらない、大きな腕白ども
土ダンをぶっつぶせ!」と書かれていた。

「土ダン」をぶっつぶせ・・・?不穏。
一体誰がなぜこんなメモを?

謎めいたメッセージに衝撃を受けた
花音はこの謎をどうしても解明したくなった。
そして朔太郎や1年生の男の子も巻き込んで
謎解明に奔走する!

図書室で繰り広げられる、学園小説だと思ったら
とても爽やかなミステリー。

体育祭まえの1週間の物語の中に、緻密に
伏線が配置され、それが徐々に回収されると、
10年前の悲しい過去が明らかにあり、泣ける・・・。

そして、すべの謎があきらかになるクライマックスは、
ある一つの思いを実らせるために、誰もが一つになる!
感動的なラストだ!

仲間の固い絆、友情以上恋愛未満の切ない心、
素敵な大人たち、ストーリーの面白さに加え、
魅力的な登場人物たち。
しみじみと味わって読んだ。とても面白かった。

『図書室のはこぶね』
著者:名取佐和子
出版社:実業之日本社
価格:¥1,760(¥1,600+税)