西村京太郎 初期の傑作ミステリー短編集「完全殺人」

最近、西村京太郎さんの初期に描かれたミステリー
作品にとても面白いものが多数あると気がついた。
「華麗なる誘拐」(河出文庫)、「殺しの双曲線」
(講談社文庫)、「七人の証人」(講談社文庫)
などかたっぱしから読んで、この「完全殺人」
(祥伝社文庫)を手にした。
上記の3点は長編だが、「完全殺人」は短編集。
ぶっ飛び展開もありつつ、時代をまったく感じ
させない、斬新な設定のサスペンスミステリー集。

全く知らない美しい女性からいきなりラブレターを
渡された男性。困惑しつつも返事を書いて渡そうと
出会った場所で待つことに。しかしそこに別の女性が
現れて・・・・。ぶっ飛んだ真相に男性は怒り爆発・・・!
「奇妙なラブレター」

釣りを楽しむために温泉宿にやってきた男性。
そこで出会った美しい女性と一夜限りの関係を・・・。
ところが翌日の朝、女性が遺体で発見される。
そして男性は何者かに襲撃を受けた!
男性が導き出した真相とは・・・・。
お~そういうこと!思わず膝を打ちたくなった。
「幻の魚」

空き別荘に集められた四人の男女。彼らは過去に
殺人を犯しながらも逮捕されていなかった、
いわば「完全殺人」の成功者たち。
彼らを集めた男は、「最もすぐれた殺人方法を
示したものに大金をやる」といった。
様々な殺人方法が語られるが・・・・。
男の真意に戦慄する!
「完全殺人」

余命幾ばくも無いがん患者の男性は、同じ病気で
苦しむ男からある提案をされる。
その提案を男性は拒み続けるが・・・
あまりにも理不尽なラスト。声も出ない衝撃。
「殺しのゲーム」

妻を寝取られた男が復讐のために妻の相手の
男性を殺害することを決意し、行動を起こした
矢先、「AMAアリバイ製造協会」と名乗る男から
アリバイを保証するから男を殺せと促される。
驚愕のどんでん返しが凄い!!
「アリバイ引き受けます」

何者かに線路に突き落とされたが生還。記憶が
ないくらい飲んだバーで毒殺されそうになったが
これも生還。誰かに狙われていると感じた
男性は、社内の出世競争に巻きこまれたかと疑う。
そして、怪しい人物を探れと部下に命令するが・・・。
こんな屁理屈で殺されたら、たまったもんじゃない!!!
「私は狙われている」

新婚の夫婦。夫が出張中に妻が殺された。
妻は「S」というダイイングメッセージを残していた。
警察はイニシャルが「S」の関係者を洗うが・・・。
妻が夫に残したメッセージ。妻の愛と夫の執念が
真相を導き出す。切ないラストに涙。
「死者の告発」

探偵事務所で働く男性は、高額の成功報酬付きの
案件を担当することに。しかし、同僚の男の
話を聞いてその案件を同僚に譲った。ところがその
同僚の遺体が発見される。男性は調査はまだ
終了していないとし、独断で調べあげると
信じられない真相に突き当たった。
権力の横暴に巻き込まれたサスペンス。
「焦点距離」

本格推理、サスペンス、どんでん返し、西村京太郎さんの
傑作短編が堪能できる貴重な1冊。

『完全殺人』
著者:西村京太郎
出版社:祥伝社
価格:¥660(本体¥600+税)