SNSの怖さが際立つ!炎上ミステリー!「俺ではない炎上」

「六人の嘘つきな大学生」(KADOKAWA)で
大ブレイクを果たした浅倉秋成さん。
新卒採用をミステリーに仕立て、企業に
翻弄される就活生の姿を描き出した。
今の日本の就活のあり方に一石を投じた作品で
話題をさらった。

そして、本書「俺ではない炎上」(双葉社)は、
SNSの怖さを徹底的に描き切ったサスペンスミステリー。

外回り中の大手ハウスメーカーの営業部長・
山縣泰介に支社長から緊急の電話が入った。
「すぐに帰社しろ、絶対に裏口から入れ!」

突然のことで狼狽する泰介は、自分が
「女子大生殺害犯」にされていることを知る。
すでに、実名、写真付きでネットに素性が
晒され、ツイッターは大炎上していた。
確かに大昔ツイッターのアカウントを作った
記憶はあるものの、使用したことなどなかった。
自分ではないと訴えるものの、上司は信じず、
自宅謹慎を言い渡される。

それでも、きちんと説明すれば誤解はすぐに
解けるだろうと楽観していた泰介だったが、
SNS上ではさらに荒れていた。

そのアカウントは巧妙に作られ、何度確認しても
泰介のアカウントにしか見えない。

誰が、何のために・・・?泰介は戦慄する!
頼りにしていた部下、友人、そして家族でさえも
泰介の言葉を信じてくれなかった。

「これはヤバイかも」とネットに上がっった
写真がリツイートされる。それは僅かな
時間で拡散され、泰介はあっという間に
殺人犯として追われるはめに・・・。

怖い!読んでいてこんなに怖いと思ったことは
あまりない。誰もがSNSをやっている。
だから誰でも起こりうること。他人事では
いられない。いつ自分が巻き込まれるのか
と思うとすごく怖くなった。

また、SNSに上がった写真とわずかな情報
だけで、「犯人」と決めつける安易さ。
それに同調する、正義をふりかざす人たちの
理不尽なまでの暴挙。人間とはここまで残酷に
なれるのか・・・・。

そして、著者がこの作品に仕込んだミステリーの
大仕掛け!
「えッ?」と思わず叫びたくなる、大逆転の展開。
しかし、さらなる罠が待ち構える。
そう簡単には真相にたどり着けない。

二度読み必至の、強烈炎上ミステリー。

『俺ではない炎上』
著者:浅倉秋成
出版社:双葉社
価格:1,760円 (本体1,600円+税)