‘戸籍’がテーマの斬新な探偵小説「先祖探偵」

「元彼の遺言状」「競争の番人」など、原作本が
連続でテレビドラマ化されている、今飛ぶ鳥を落とす
勢いのミステリー作家、新川帆立さんの最新作、
「先祖探偵」を読了。

ご先祖様を探す人たちのヒューマンドラマ。
コミカルでちょっとシリアス。心に沁みる
物語。凄く好きになりました。

20年前に生き別れた母を探す傍ら、ご先祖様の
調査を請け負う探偵業の風花。

武田信玄の重臣の末裔だという男性から
先祖の調査を依頼されている風花のところに
ある日、今年110歳になる、日本最高齢の
曽祖父を探して欲しいとの依頼が舞い込む。
出来る限り先祖を遡ることが出来るが・・・。
この調査が意外な展開と結末を呼ぶ。
「幽霊戸籍と町おこし」

夏休みの研究課題を「家族史」とした女子中学生。
母親から依頼され、それを手伝うことになった
風花。パパの先祖から辿ってみると、妙に父親の
先祖に拘る。彼女が本当に知りたいこととは?
女子中学生の切ない本心にグッとくる。
「棄児戸籍と夏休みの課題」

風花が探偵事務所を開いてる下の階は、カフェに
なっている。今は妻に逃げられた夫が一人で
店を回している。そんな妻の方から風花に依頼が・・・。
10歳くらいの男の子が、ある日何かにとり憑かれ
妙なことを言い始めた。ご先祖様の霊がたたって
いるのではと言われ、先祖を調べて欲しいとのことだ。
男の子の姿をみて、心を痛めた風花は調査を引き受けた。
ちょっとホラーテイストな展開だが、その真相は
じわ~と心に沁みる。
「焼失戸籍とご先祖様の霊」

「ドヤ街」と呼ばれる場所に暮らす男性から
先祖調査の依頼でやってきていた風花は、
そこで戸籍のない男性と出会う。
事情があって母親が出生届を出さなかったらしい。
戸籍がないせいで、生活してゆくのに苦労していた。
先祖を探して欲しいとの依頼を受けたがかなり
面倒なことになると思ったら、その通りの展開。
どうなる・・・!?この調査!
「無戸籍と厄介な依頼者」

探偵事務所の調査員から「風子」を探している人が
いると聞き、期待を抱いた風子。それは父親が
自分を探しているのではと思った。父から母の
情報が得られる!と浮きたつが・・・。
風子は途中、日系ブラジル人に襲われるという
危険な状態に置かれる。
風子は母親にたどり着けるのか?
「棄民戸籍とバナナの揚げ物」

様々な先祖調査で次々と浮かび上がる謎!
そして、調査の結果明らかになる、衝撃的かつ
意外な真実。
現役弁護士だからこそ描ける「戸籍」に
ついての詳細な記述。
「戸籍」という斬新なテーマがドラマチックに
組み立てられて面白い。

寂しさを抱え孤独な人生を生きる風子だが、
それでも強く、たくましく生きている。
そんな風子がとても好きになった。

ぜひ、シリーズ化して欲しい!

『先祖探偵』
著者:新川帆立
出版社:角川春樹事務所
価格:1,600円 (本体1,760円+税)