宮部みゆき先生の原点『火車』はミステリーの最高傑作!

次々とベストセラーを産み出し、本好きをうならせ楽しませてくれる作家・宮部みゆき。
最新刊は、中学校で起きた事件を生徒たちが裁くという、難しい展開の現代ミステリー『ソロモンの偽証』(新潮社)。
現代の社会問題にも触れ大きな反響を呼んでいる。はまさきも読み始め、読みだしたら止まらない面白さにすっかりはまっています。
その宮部先生の初期のミステリーの最高傑作が、今回紹介する、『火車』(新潮社)です。
山本周五郎賞を授賞し、さらに「このミステリーがすごい!ベストオブベスト」で第1位に輝きました。(20年間のミステリーの中で1位です!)
いまさら紹介しなくても・・・・みんな知っているよ~と言われそうですが、最新刊で宮部先生の作品に出会った読者、まだ読んだことのない読者。
読み出したら止まらない驚異の面白さで、おススメの作品です。

事故で休職中の本間刑事は、銀行員の従弟から、失踪した婚約者・彰子を探してほしいと懇願される。
本間は事情が分からず、従弟にどういう状況で失踪したのか問いただすと、クレジットカードを持っていない彰子にカード契約をすすめたら、審査の段階で彼女が自己破産経験者だと判明した。
従弟に真意を問われた彰子は翌日から姿を消したというのだ。
休職中のため、警察手帳を使えない本間は、雑誌記者を名乗り彼女の身辺を捜査する。
最初は彰子が勤務していた会社の社長に話を聞いた。
彰子の履歴書を見るとその容貌の美しさに驚く。
夜の仕事には手を染めていず、慎ましやかで清楚な雰囲気が漂っていた。
次に本間は彰子の自己破産の手続きをした弁護士に話を聞く。
そこで聞いた彰子は、先の会社で聞いた彰子とは似ても似つかない女性だった。
明らかに別人・・・。
本間は、従弟の婚約者の彰子は、偽物の彰子ではないかと疑い始める。
もし彼女が偽物ならば本物の彰子はいったいどこへ消えたのか・・・・?

本間刑事が彰子の身辺を調べれば調べるほど食い違う彰子像。
はっきりしない、でもなにかとても怖いことが起こっているという、不気味な感覚がひたひと忍び寄ってくる・・・。
追い詰められた人間の怖さと、平凡な幸せを追い求める女性のはかなさ、悲哀を見事に描いている。そして現代社会の病理をも鋭くえぐる。
巷にあふれる女性があこがれてやまない商品の数々。
欲しいものを手に入れるために安易にクレジットカードを使う。
クレジットカードの魔力に取りつかれ、社会から脱落し、借金地獄にあえぐ若い女性たちの生態をも生々しく描いている。

現代社会の病理とサスペンスを見事に融合させた、社会派サスペンスミステリーの最高傑作です。

『火車』
著者: 宮部みゆき
出版社:新潮社
価格:¥990(税別)