お葬式がミステリーに!?『葬式組曲』

天祢涼さんの『葬式組曲』読了。
本書は第13回本格ミステリ大賞候補作、
第1章の「父の葬式」は、第66回日本推理
作家協会賞短編部門の候補作になった。
一度文庫化されたが、今回再文庫化にあたり、
全面改稿されている。
著者の思い入れの深い作品。

20代の女性社長・北条紫苑率いる「北条葬儀社」。
妙な関西弁をしゃべる餡子、寡黙で職人肌の高屋敷、
生真面目な新入社員の・新実。癖が強い社員
ばかりが目立つが、遺族からは絶大な信頼を
得ていた。
それは、彼らが故人の遺した謎を解明するという
意外な一面を持っていたからだ・・・。

父との確執で、実家から距離をとっていた
男性のもとに、父の死の知らせが届いた。
兄にすべてを任せようとしたが、
兄から「喪主は次男のお前が務めること」
それが父の遺言だと言われた。
なぜ・・・?
「父の葬式」

北条葬儀社の新入社員・新実は、生前相談に
来た女性から、祖母が亡くなった時、火葬は
したくないと言われていた。それからしばらく
あと、その女性から祖母が急逝したので、
葬儀を任せたたいと言われた。
彼女の条件は棺に拘ること、そして「火葬」
は絶対に避けたい事だった。
彼女はなぜ頑なに「火葬」を拒んだのか・・・・?
「祖母の葬式」

七歳の息子が亡くなった。父親は与党に所属する
政治家。与党は彼の息子の葬式を大々的に
執り行うと言った。政治家は党の言うことに従った。
ところが妻が反対した・・・。
通夜の前夜、霊安室で妻と息子は二人きりに・・・。
ところが、息子の遺体が消えた!
この夜一体何があったのか!?
葬儀を任された北条葬儀社は、遺体消失の謎に迫る。
「息子の葬式」

妻が友人の家で首をつって死んだ。
事件の可能性もなく、自殺と断定された。
しかし、夫は妻の死を受け入れられない。
それでも何とか生きていかなくてはと・・
夫は北条葬儀社に妻の葬儀の依頼をした。
そのころから、夫は妻の金切り声が聞こえる
ようになったという。
妻の死にまつわる謎を、北条葬儀社の面々が
解明することに・・・!
「妻の葬式」

北条葬儀社の高屋敷が亡くなった。
彼が亡くなったことで、これまでの
葬儀を振り返る・・・。
すると不可解な「謎」が浮かび上がる。
それぞれ、故人が遺した「謎」は解決
したはずなのに・・・・!!!
「葬儀屋の葬式」

一つ一つの短編には、人の死によって
起こる思いもよらない事件が描かれ、
そこには、緻密な「謎」が仕掛けられる。
心に残る4つのミステリー。
「天祢流」と呼びたくなる独特の世界観に
引きこまれる。
そして、思わず「ギョッ!」とさせる
ラストにまたしてもやられてしまう!
異彩を放つ!連作短編ミステリー。

『葬式組曲』
著者:天祢涼
出版社:文藝春秋
価格:¥825(本体\750+税)