上野正彦監修「監察医」シリーズ第3弾は3作中で一番面白い!

『炎の画策』『刃の献身』に続き、上野正彦先生監修、監察医シリーズ第3弾『骸の回廊』を読みました。実際に上野先生が扱った事件を元に描かれているので、非常にリアルな事件を警察小説仕立てで堪能できます。

世田谷署管内のマンション建設現場で、首つりした男性の遺体が発見された。
現場に臨場した、世田谷署きっての敏腕刑事・上杉と相棒の新米刑事・正木。上杉は他殺ではないかと疑う。
そして若き女性監察医・如月の解剖によって他殺と判明。
その殺害手口に冷酷な計画性を見出した、上杉と如月は犯人はただものではないと感じる。
同時期に別の場所で発見された水死体。
上杉と正木たちが地道に捜査するうちに、二つの遺体に共通点を見出す。
そこから浮上した有名外科医の存在・・・・。彼の過去とは・・・?

最初の遺体の身元がなかなか判明せず捜査が進まない状況、ひとつの証言から捜査の突破口が開ける瞬間、関係者から聞き取った証言を検証し、裏を取る。そういう過程で次第に明らかになる事件の全貌。
推理小説とはまた違う、警察の事件捜査の過程を小説で読める。
また詳細にとった解剖所見から、水死体がどのように殺害されたのかが判明。
そこが把握できなければ、二つの遺体の共通点は見い出せず、事故で片づけられ、恐ろしい連続殺人を暴くことは出来なかっただろう・・・。
詳細な検屍と地道な捜査で事件の全貌を暴き、無念にも生を絶たれた人を救う。
上野先生のその思いは小説の中でも常に感じることが出来る。
シリーズ3作中で一番面白かった、おすすめの作品です。

『上野正彦原案・監修 監察医シリーズ3 骸の回廊』
著者: 柚原瑠璃子
出版社:ポプラ社
価格:¥680(税別)