見当たり捜査官の厳しさを描く「心眼」

相場英雄さんの「心眼」(実業之日本社)読了。

指名手配犯の顔を頭に刻み付け、日々街頭に
たち、ひたすら犯人を追う見当たり捜査官。
彼らの激務の過程を描く、傑作警察小説。

警視庁の捜査共助課の新米刑事・片桐は、
見当たり捜査員になってまだ1年足らず。

毎日街頭に立ち続けるが、今だに成果は
上がっていない。

同じ課の先輩刑事の補佐などで、コツは
掴みかけているが、自分の手柄をあげた
ことはなかった。

しかし、同じ課の上司で係長の稲本は1人で
次々と大物手配犯を挙げ、圧倒的な
結果を残していた。
ただ、課の中では一匹狼の彼は浮いて
おり、誰も話しかけなかった。

片桐はそんなことも構わず、稲本に
捜査のイロハを聞きこむ。
だが、軽くあしらわれる始末。

片桐はなんとしてでも手配犯を挙げると
心に誓う。

そんな時、新しい捜査一課長が就任してきた。
一課長は、ハイテク捜査に力を入れ、
非効率極まりない「見当たり捜査」を不要だと
ぶちまける。
「見当たり捜査班」は絶対絶命のピンチに陥る!

見当たり捜査官としてのプライドを傷つけられた
彼らは、稲本始め、チーム一丸となって
犯人確保に邁進する・・・!

犯人確保に情熱を傾ける警察官の地道な努力。
ハイテク捜査も確かに有効だが、それだけに
頼って良いのか?
何十年も積み重ねたベテラン刑事の「眼」は
ただ犯人確保だけではない、その裏にある
事件の本質をも見抜くのだ。

片桐も、稲本の教えによって徐々に成長し、
確かな「心眼」を備えていくだろう・・・。

警察官の仕事について、またハイテク捜査の裏
にある画策や、監視社会についても深いところまで
描いてある、硬派な警察小説。
渋くてとても面白かった。

『心眼』
著者:相場英雄
出版社:実業之日本社
価格:¥1,980(本体¥1,800+税)