女性監察医が主人公の警察ミステリーが面白いです!『炎の画策』

警察関連のお仕事をされている女性は、女性刑事だけでなく、監察医、あるいは検屍官などもあります。テレビなどでも人気です。

先日あるきっかけで、柚原瑠璃子著『炎の画策』(ポプラ社文庫)を読みました。
『死体は語る』という名著を描かれた、法医学者・上野正彦さん監修です。
不慮の事故、孤独死、事件に巻き込まれて亡くなった人たちの死因を調べることで、事件なのか、事故なのかを明らかにし、無念の死を遂げた人たちを癒す。
そういう思いでずっと、遺体と向き合ってこられた上野先生の監修ということで、この「炎の画策」は、単なる警察ミステリーではないような気がしていました。
そして、読んでみるとやはり想像以上に面白かったです。
シリーズ3作発売中ですが、すぐに全部読みたくなりました。

あるIT企業の社長である男性が、自宅マンションで焼死体となって発見される。
管轄署の上杉刑事は、後輩の正木刑事とともに現場へ急行。そこで焼死体と対面。早速司法解剖が始まった。執刀するのは、新米監察医の如月果林。まだ若い女性監察医。
いつも上杉刑事に軽んじられ、この日も「かりんとう先生」などとからかわれた。
上杉刑事の厳しい目に耐えながら、なんとかわかったことは、病気などなく健康な男性であること。だが火事で亡くなったのではなく、それ以前に亡くなっていたこと。これは事件なのか?
しかし、殺害されたような状況もなく、捜査は事件か事故かどの線で捜査をしていくのか困惑する。結局どっちの線も洗おうということになった。
はっきりした鑑定結果は4か月後に出るということだった。その間、上杉と正木は、ほかの事件とかけもちをしながら、この男性焼死事件の関係者を洗った。母は大物女優、兄は超大手の家電販売店オーナー、兄嫁はマナー教室などを開く美人セレブ。
上杉にはなんとなく事件の匂いがするのだが、具体的なことがなかなかつかめなかった。
しかし4か月後に出た、鑑定結果は事件性ありというもの。
そこから本格的な捜査が始まった・・・・。

上野先生が手掛けた事件をヒントに描かれた、警察ミステリー。監察医の仕事や、警察捜査の状況が非常にリアルに描かれていて、とても面白い。フィクションなのにノンフィクションのようなリアリティがあり、普通の警察小説のようなご都合主義はなく捜査は進展しないのだ。
本当に最後の最後まで犯人に行き当たらない。しかしそういうとき、最後に事件解決に導いてくれるのは、無念の死を遂げた遺体なのだ。そこに驚愕し、ラストは悲しくなった。
すごく面白かったです。
シリーズはこのほかに『刃の献身』『骸の回廊』が発売中。早く読みたい!!!

『上野正彦原案・監修 監察医シリーズ 炎の画策』
著者: 柚原瑠璃子
出版社:ポプラ社
価格:¥680(税別)