池井戸潤の最高傑作「空飛ぶタイヤ」

ドラマ「半沢直樹」で大ブレイク中の池井戸潤さんです。
ドラマの原作「オレたちバブル入行組」「オレたち花のバブル組」「ロスジェネの逆襲」などで池井戸さんにはまった方たちに絶対におすすめなのが、この「空飛ぶタイヤ」(実業の日本社)です。
「下町ロケット」で直木賞を受賞される前から、池井戸さんの作品にぞっこんだったはまさき。最初に読んだのが「空飛ぶタイヤ」でした。
あまりの面白さに誰彼かまわずに薦めた作品です。
多少長いですが、長さを全く感じさせないストーリー展開に驚くばかりです。

走行中のトレーラーのタイヤがはずれ、近くを歩いていた母娘を直撃。母親の方が亡くなってしまった。一瞬にして死亡事故を引き起こした運送会社の社長となってしまった、赤松。
大企業のホープ自動車は、「運送会社の整備不良」として責任を全て運送会社に押し付けた。
赤松はその決定に納得がゆかず、自社の整備記録と社員を徹底的に調査。
その結果、赤松の会社には何の非もないことが判明した。
だが、ホープ自動車は大企業の倫理でそれを認めようとはしなかった。
そこから、中小企業社長・赤松の孤独で長い闘いが始まった。

一時期問題となった‘大手自動車会社のリコール隠し’を取り上げ、その欠陥車で事故を起こした中小企業の運送会社社長が、大手企業を相手に企業責任を追求する。
企業人としての誇りを欠いた、無責任で傲慢な態度の大企業があまりにもリアルに描かれていて、読んでいると本当に腹が立つ。そんな腐った大企業に社会正義の信念の貫き、真っ向から闘いを挑む赤松社長がものすごくかっこいい。
家庭を大切にし、社員を家族と同じように愛し、時には弱音もはいてしまう、とてもヒーローとは呼べない、そんな普通の男が一度肚を括るとここまで強くなれるのか!?
読んでいる途中、何度、赤松社長とシンクロしたかわからない。
物語の中盤から、孤独な闘いを強いられていた赤松を応援する人物が現れる・・・。
彼が貫く正義を信じ同じように大企業に向かっていく男たち・・・。
果たして一発逆転なるのか!?
池井戸潤さんが渾身の想いをこめて描いた、圧倒的エンターティメント長編です。
池井戸さんの世界を思う存分堪能できます。

『空飛ぶタイヤ』
著者:池井戸潤
出版社:実業之日本社(ノベルス)
講談社(文庫)
価格:ノベルス¥1,143(税別)
   文庫上下各¥648(税別)