復讐の連鎖を描く、薬丸岳『闇の底』

月曜日夜8時から放送中の『刑事のまなざし』は薬丸岳さんの
『刑事のまなざし』が原作。
毎回、ドラマを観ていますが原作に非常に忠実に作られていて、
ドラマの出来にとても好感を持てます。
椎名桔平さんの刑事像はとても合っています。
さて、薬丸岳さんは、「天使のナイフ」で江戸川乱歩賞を
受賞され、ミステリー作家としてデビュー。
その後、ただの謎解きだけでは終わらない、
人間の罪について鋭く抉った作品が多いです。
この『闇の底』もそんな1作です。
闇の底

子どもへの性犯罪が多発し、埼玉県警では犯人を捕らえるため、
刑事たちが寝る間を惜しんで捜査を続けていた。
そんな刑事の一人、長瀬一樹は20年前に性犯罪によって
幼い妹を失っていた。
一緒に捜査する刑事たちも、犯人を憎み、必死で捜査する長瀬に
一目置いていた。
幼女が殺されたタイミングで、性犯罪の前歴者が首を切られて殺される
という事件が起こった!
県警本部のベテラン刑事、村上はそのすさまじい現場を視て犯人の怨念を感じた・・・・。
そしてその犯人は大胆にも、前歴者を殺害するシーンを収めたDVDと
警察への挑戦状を送りつけた!
「警察ではこの事件は解決することができない。もし今後も
性犯罪により子どもが犠牲になれば、前歴者を生贄にする
サンソンより」と書かれていた。
このサンソンはもしかすると、性犯罪被害者の遺族ではないのか・・・?
しかしそれは単純な筋ではなかった・・・。

長瀬の心の傷・・・それは一生消えることはない。
妹を殺した犯人を憎み続けた。サンソンに同調する心が揺れた・・・。

長瀬もサンソンも心に深い闇を抱えている。
長瀬もサンソンになりたいだろう・・・しかし警察官だ。

人間の心の闇と葛藤をこれでもかと抉った問題作。
ラストの衝撃は多分二手に分かれる・・・。

『闇の底』
著者:薬丸岳
出版社:講談社
価格:¥600(税別)