警察大河小説の傑作です!「警察署長」

日本の警察小説は、海外並みに、いやいやそれ以上に面白く
なってきています。
横山秀夫さん、佐々木譲さん、今野敏さんなど警察小説の王道を行く作品や、
最近では、特殊警察ものや、警察を舞台にした刑事が探偵役にもなるような
作品などなど・・・多彩です。

しかし、やはり海外の警察小説には凄い作品があります。
ちょっと前の作品ですが警察大河小説も言うべき
スチュアート・ウッズ『警察署長 上下』(ハヤカワ文庫)
この作品があまりにも面白い!!
アメリカ探偵作家クラブ最優秀新人賞を受賞した傑作。
翻訳も素晴らしい!

警察署長上警察署長下

1920年冬、ジョージア州田舎町デラノの郊外で、若い男性の全裸死体が発見された。
就任間もない、デラノの初代警察署長、ウイル・ヘンリー・リーは、
秘密結社K・K・Kの仕業とみて捜査を開始したが、検屍の結果、死体に警察関係者
によって尋問された形跡が残っていると判明。犯人はいったい何者なのか?
捜査を続けるウイルはやがて意外な人物に行き当たるが・・・・。
第2次大戦後、復員してデラノ警察に職を得たサニー・バッツ。やがて署長に抜擢される。
バッツは、前署長・ウィル・ヘンリーの遺したメモから殺人事件のことを知り、
犯人に迫るが逮捕をあせるあまり、犯人の思わぬ陥穽に落ちてしまう。
それから十余年が過ぎ、タッカー・ワッツが初の黒人署長として華々しく就任した。
州副知事でウィル・ヘンリーの息子ビリーの支持を受ける彼は、
前任者二人が解きえなかった事件に挑む。
だが、ビリーの知事選出馬、黒人差別を続ける反動勢力の策謀が絡み、
捜査は複雑な様相を呈してきた・・・・!
人種差別が色濃く残る、南部の小都市を舞台に、40年にも及ぶ殺人事件を、
多彩な登場人物を配して描く警察大河小説。これ以上ない面白さ。

何故この作品が‘あまりにも面白い’と言い切れるのか!?
それは、3代の署長の人物像がしっかりと描かれている。
彼らに絡む登場人物たちが、これ以上ないくらい絶妙のタイミングで
配置されている。さらに、捜査の段階で次第に判明する犯人像。
わかりそうで、わからない、つかまりそうでうまく逃げてしまう
犯人のしたたかさ。それは今までにないハラハラ・ドキドキの展開なのだ。
1920年代~1960年代のアメリカ南部の社会背景が詳細に描かれている。
それが40年もの間、殺人事件が解決しない理由の一つになっているのだ。

全てが計算しつくされ、描かれている。上手い!うますぎる!
とても新人が描いた作品とは思えない。
海外警察小説の醍醐味を思う存分味わうことが出来る傑作中の傑作!!

『警察署長 上下』
著者:スチュワート・ウッズ/真野明裕訳
出版社:早川書房(ハヤカワ文庫)
価格:上下各¥820(税別)