8年ぶりの本格ミステリー「貘の檻」道尾秀介

道尾秀介さんの本格ホラータッチのミステリー、「貘の檻」
なんと、ミステリー作品は8年ぶり。
そういえば、しばらく道尾作品を読んでいませんでした。
やはり道尾ミステリーが待ち遠しく、新作ミステリーが
読めてうれしい・・・。

道尾新刊

32年前に父親が犯した殺人事件で故郷を追われた「私」。
その事件に関係し、行方不明だった女性が「私」の目の前で
亡くなった。
過去の事件がもとで心に傷を負った「私」は、社会・家族
から逃げ薬物に頼ることになった。自分の中に巣食った何かを
コントロールできなくなった「私」。
薬を飲んで眠ると必ず見る、悪夢。32年前の事件の真実がその悪夢の中に
隠されているような気がする。
「私」は事件の真相を求め、息子と二人で32年前に追われた故郷へ
戻る。だがそこでまたしても異様な事件に巻き込まれる。

悪夢のような幻想と、現実のシーンを見事に描き分け、
伏線を張る。そして薬物、昆虫、写真、地下水路など
多彩な小道具を使ってトリックを組み立てる。

さらに怪しい人物を絶妙なタイミングで配置。
事件の真相に近づきそうになると、またはぐらかす・・。
この手法・・・・!なんて上手いんだろう。
道尾作品の衝撃作「向日葵の咲かない夏」を彷彿とさせる
恐さとおどろおどろしさ再び!という感じ。

8年ぶりの書き下ろし本格ミステリー、十分に
堪能しました。

『貘の檻』
著者:道尾秀介
出版社:新潮社
価格:¥1,800(税別)