どこまで人を操れるのか?「悪意のクイーン」

「悪意のクイーン」・・・。
女性だったら、ちょっと気になって手にとってしまう。
そしてこの本の帯には「中毒者続出」とある。
へ~・・・?と思いながら読み始めた。
読み始めたら止まらなかった。中毒になったのかな?

悪意のクイーン

キャリアウーマンで自信に満ちた人生を送っていた亜矢子。
素敵な男性と出逢い、幸せな結婚をしたはずだった。
だが、予期せぬ妊娠、出産、育児と慣れないことばかり
続く日々。次第に心がふさぎ込む。
子供のことなら我慢できるが、亜矢子はママ友仲間の中心人物、
麻由による理不尽な嫌がらせに日々消耗していた。
そんなママ友の中で唯一心が許せたのが、独身女性の時恵だった。
そして旧友の志穂の存在も心の支えとなっていた。
しかし、亜矢子の周りで奇妙なことが起こり始める。
そして亜矢子は徐々に追いつめられていった・・・。

亜矢子の転落してゆく過程と、同時進行するように
一人の女子中学生の手記が登場する。
その手記は、家庭崩壊の手記だ。

これは何を意味するのか・・・?
そこには、思いもよらない「悪意」の連鎖が存在していたのだ・・・・。

氷のように冷たい人間の執念と、果てしない嫉妬が一人の女性の破滅を招く。
ゆるやかな破滅の過程が淡々と描いてあるが、驚異のクライマックスは
思わず「えっ?」と叫んでしまうくらい盛り上るのだ。

自信満々で前だけ見て歩くのは危険だ・・時々振り替えって自分の周りを
気遣う心を持たなければ足元をすくわれる。それは二度とはいあがることが
出来ないくらいに・・・。
怖い・・・怖い本だ。

『悪意のクイーン』
著者:井上剛
出版社:徳間書店(文庫)
価格:¥630(税別)