ドラマ化好評!「合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明」

柚月裕子さんの『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』
(講談社)読了。
主役の二人をテレビでは天海祐希さんと松下洸平さんが
演じていて、あまりにもはまっているので、
読んでいると二人のイメージが頭に浮かんできて
楽しい読書だった。

不祥事で弁護士資格をはく奪された、
上水流涼子は、「上水流エージェンシー」
を立ち上げた。

請け負う仕事は、ちょっとヤバそうな仕事。
ただ、傷害と殺人だけは絶対に受けない。
それがルールだ。

相棒は、頭脳明晰でモデル並みの容姿を持つ貴山。
人間嫌いだが、動物には愛情を注ぐ。

第一弾では、詐欺師、資産家、ヤクザ、賭博に
からんだ事件を解決。

第二弾は、中編3作品を収録。

謎の積み荷を乗せた車を捜索して欲しいとの依頼。
積み荷は何か尋ねるが、とにかく捜索の一点張り。
高額な報酬に、涼子は依頼を引き受けるが、
貴山は、渋い顔をしている。しかし引き受けた
からには動くしかない・・・調べてみると
とんでもない積み荷だと言うことがわかり・・・。
「物理的にあり得ない」

母親から、息子の親権を取り戻して欲しいとの
依頼が入る。成功報酬は500万円。
しばらく依頼がなかったために、涼子は
飛びつくが、貴山はまたしても渋い顔。
旦那と離婚して6年も経過してから依頼する
とは何か理由があるのでは・・・?
二人が母親の周辺を調べると、案の定
母親の浮気性が原因で旦那から三行半をつきつけられ
離婚に至っていた。
そんな母親は、ある計画を練っていた・・・。
「倫理的にあり得ない」

腐れ縁の丹波刑事から珍しく依頼された。
上司の娘が精神を病んで入院している。
彼女を立ち直らせて欲しいとのことだ。
涼子は精神科医ではない。
そんなことは医者の仕事だと突っぱねたが
丹波は引かない。
メリットもあると言われた涼子は渋々
依頼を受ける。
病院で出会った少女は、生きる気力を無くしていた。
一体、何が原因なのか?
涼子たちが調べると、彼女の病の影には
悲劇が隠されていた。
「立場的にあり得ない」

今回も、悪い奴らにはそれ相当のに罰を与える
涼子たち。
欲に目がくらんだ者たちへの制裁は厳しい。
逆に、心を病んだ少女への想いは温かく
誰にも救えなかった少女を救うのだ。

読後の爽快感は、今作も半端ない。
上水流涼子と貴山コンビ。
ドラマ化されて、天海祐希さんと
松下洸平さんの息もピッタリで、
面白さも倍増!

絶対に読んで欲しい一冊。

『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』
著者:柚月裕子
出版社:講談社
価格:¥1,760(本体¥1,600+税)

火村&有栖シリーズ最新作「捜査線上の夕映え」

犯罪学者・火村英生とミステリー作家・
有栖川有栖コンビシリーズ最新作。
「捜査線上の夕映え」を読了。
新刊で気になっていたのと、このミス3位に
ランクインしたということで読みました。
登場人物とともに、ゆったりと謎解きに
浸る、贅沢な時間でした。

コロナ禍の大阪が舞台。
あるマンションの一室のクローゼットから
男性の遺体が詰め込まれたスーツケースが
発見された。
男性は自室で何者かに殴打され絶命。
そしてスーツケースに入れられたようだ。

大阪府警の要請で、事件解決に協力
することになった、犯罪学者・火村と
相棒のミステリー作家・有栖は
現場へと向かった。

殺害された被害者は元ホストだった。
捜査が進むうち、気になる人物が
3人に絞られる。

しかし、彼らには鉄壁のアリバイがあった・・・。
コロナ禍で旅行が出来なかった分、
新型コロナが一段落し、政府がGOTO~
を押しすすめたことで、そのストレスを
発散させるかのように、みな旅行に
出かけていたのだ。

一見、単純な事件かと思われた。
しかし、3人をさらに詳しく調べることで
複雑な様相を呈してきた。
また、捜査本部の一捜査員の動きも怪しい・・・。

警察に協力しながら、火村と有栖は様々な
推理を展開し殺害動機の解明と
アリバイ崩しに挑戦してゆく。

意表をつく「超絶」トリックで、
登場人物、そして読者を翻弄!、
さらに緻密な人間関係の機微が丁寧に描かれる。
その心理描写が秀逸すぎる。

久しぶりに読んだこのシリーズ。
二人の変わらない友情にホッとする。

『捜査上の夕映え』
著者:有栖川有栖
出版社:文藝春秋
価格:¥1,980(本体¥1,800+税)

バチカン奇跡調査官シリーズ最新作!「秘密の花園」

藤木稟さんの人気シリーズ「バチカン奇跡調査官」
最新刊は、「秘密の花園」(角川ホラー文庫)。
アメデオ・アッカルディ、エレイン&ジュリア、平賀&ロベルト
が登場する三つの短編が収録されている。

アッカルディ大佐は息子から「父さんみたいな
りっぱなカラビニエリの軍人になりたい」と
言われ、とても幸せに感じた。
そんなアッカルディ大佐のもとへ、またしても
不可解な事件の捜査が舞い込んできた。
「ローレン」案件だと思ったが、息子のために
今回は自分一人で捜査をすることに決める。
汚職事件の真っただ中にいる、保険大臣が
殺害された。その殺人を自白したのはなんと
獄中にいる殺人鬼。自分の生霊が脱獄して
犯行に及んだと言っているらしい。
アッカルディ大佐は、ローレンの支援なしに
真相に辿り着けるのか!?
【生霊殺人事件】

ウオール街でいくつも会社経営を行うルッジェリの
第一秘書・エレインは、彼の命令で
ヨーロッパ貴族の血をひくセレブ・ジュリアの
身辺調査をすることになった。周到な準備を整え
ジュリアに面会することに成功するが・・・。
自らもセレブになるべく、人生の全てをかけて
磨き抜いた才能を身につけたエレイン。
彼女の計画は成功するのか?
【エレイン・シーモアの秘密の花園】

奇跡調査官のロベルトは、平賀の誕生日
を祝うために食事に誘った。
その帰り道、何かを探している少女に出合った。
聞けば。飼い猫が行方不明になったという。
泣き出した少女を放っておけず、二人も猫
探しに協力することに!
二人の優しい行動に心が癒される。
【迷い猫】

シリーズ中、人気のキャラクターが登場する短編集。
猟奇殺人事件に挑む、アッカルディ大佐・フィオナ
ローレン。不可能犯罪「ハウダニット」と
犯人あて「フーダニット」。謎解きの醍醐味が
味わえる、短編ながら読み応えあり。
エレインが多彩な仕掛けと駆け引きで
ターゲットに迫る物語は読んでいて「凄い」と
唸ってしまった。
二つの短編は、殺人であったり、誰かを
騙したりという人間の暗い部分が描かれているが
ロベルトと平賀の優しさが炸裂する章で心が
救われた。

『バチカン奇跡調査官 秘密の花園』
著者:藤木稟
出版社:KADOKAWA(文庫)
価格:¥792(本体¥720+税)

イケメン高校生探偵の推理が冴える!「学園の魔王様と村人Aの事件簿」

織守きょうやさんの「学園の魔王様と村人Aの事件簿」
(KADOKAWA)を読了しました。
二人の男子高校生の友情と、彼らの周囲で起こる事件。
二人が協力して事件解決に導くところがとても面白かった。

孤高のクラスメート・御崎は、様々な噂が
飛び交い、とても近寄りがたい存在だった。
しかし、山岸は御崎の存在がとても気になっていた。
ある雨の日、御崎が子猫を助けるところを目撃。
思わず声をかけてしまった。
そこから少しずつ山岸と御崎は距離が縮まってゆく。
御崎が山岸の家に行ったとき、山岸の母親が
会社で妙なことが起きて困っていることを告白。
御崎のアドバイスで事件が発覚し、解決に至る!
(村人A、魔王様と出会う。)

半グレ集団の詐欺事件に巻き込まれてしまった山岸。
学校の前で女子学生の写真を見て目撃者を探す
危ない奴ら。
山岸はある人物と間違えられ、あわや拉致されそうに
なったところを御崎に助けられる。
事件解決の糸口は、山岸のある趣味についての
講釈だった。御崎に感謝され、嬉しい山岸。
(村人A、魔王様の助手になる)

学園の寮で暮らしていた先輩が、アルコールを
飲んで飛び降りた。
ルームメイトから遺品を預かった御崎は、遺族から
調査を依頼される。
先輩の人間関係、そして物的証拠から御崎が
導き出した真相は、とんでもなく切ない、
そして悲しいものだった。
御崎のすごい推理力に舌を巻く!
この物語は悲しいけれどとてもピュアな感情が
表現された素敵すぎるストーリー。
とても好きな章。
(村人A、魔王様と友情を確かめる)

半グレグループの幹部の一人が遺体で
見つかる。その彼女らしき女性が登場。
半グレに近い人間の情報から次第に詳細が
判明する。ところが、山岸が半グレ集団に
拉致される。誰かと間違えられて連れ去られた
可能性が大きい。
それを目撃した御崎は、真犯人を見つけ出すため
一人対決に向かう。
(村人A、魔王様との友情を深める)

とにかく、イケメンの御崎がかっこいい!
物腰は柔らかく、冷静沈着でとてもやさしい。
山岸の言葉にちょっと赤くなったりするところは
めちゃめちゃ可愛い。

日常の些細な違和感を見逃さず、事件の本質に
迫る御崎。その洞察力には目を見張る!
推理小説としても読み応え十分だ。

イケメンの高校生名探偵と彼の友人になりたい男の子。
不器用な二人が周囲で起こる事件を解決してゆく。
その過程で二人の友情がどんどん深まってゆく。
日本の高校生版ホームズ&ワトソンのようで、
読んでいて楽しかった。
また男同志二人の絆が徐々に深まる過程は、
なんだか胸がキュンとなった。

面白いです!

『学園の魔王様と村人Aの事件簿』
著者:織守きょうや
出版社:KADOKAWA
価格:1,815円 (本体1,650円+税)

心霊探偵八雲、高校生時代の事件を描く「青の呪い」

神永学さんの「心霊探偵八雲 青の呪い」
を読みました。

大好きな八雲シリーズ。斉藤八雲が
高校時代に出会った悲しい事件を
描いた作品。
主人公の男子生徒との交流がとても温かい。

早朝の学校の美術室で、顧問の教師が
変死体で発見される。

第一発見者は、人の声が色づいて見える
という共感覚を持った、青山琢海だった。

この事件は、10年前に亡くなった
少女が自分の血で描いたという呪われた
絵が関係しているのではないかと疑われた。
その絵を見たものは呪われるという伝説。

美術部の幽霊部員だった琢海は、数日前に
青い色の声を持つ先輩の女子部員・真希
から一緒に「呪われた絵」の調査をしょうと
持ち掛けられたばかりだった。

両親を交通事故で亡くした琢海の心を救ったのは、
真希だった。琢海は真希が事件に関係してる
のではと疑う。
しかし、琢海は警察に事情を聴かれても
真希のことを庇い続ける。

そんな琢海の前に、孤高のクラスメート・
斉藤八雲が現れる。
琢海を目の敵にするクラスメートともめごと
を起こしたとき琢海を助けたり、
美術部顧問の教師が殺された事件では、
琢海に謎めいた言葉をかけたりする。
そして彼の冷えた眼で見つめられると
琢海は心の底を覗かれたような気になり、
苦手だと感じていた。

琢海が真希のことで思い悩んでいる時、
事件が起こる・・・。

両親を喪い、妹を守る決意をする琢海。
その思いが強すぎるのか、彼の行動は
裏目に出てしまう。
それを指摘する八雲だったが・・・。

心霊現象とミステリーが緻密に絡みあい
ながら物語が進む。
その展開のうまさに引き込まれ
イッキに読まされた。

さらに、苦悩しながら特殊能力に
向き合う琢海と八雲の頑なな姿は読んで
いると切なくなる。
同じ境遇の二人は、事件を超えお互いに
歩みよってゆく過程がなんとなく嬉しくなった。
高校生の八雲が少しだけ自分の心の奥底に
あるものを琢海にぶつけるシーンが心に残った。

『青の呪い 心霊探偵八雲』
著者:神永学
出版社:講談社
価格:¥990(本体¥900+税)

料理も謎解きも一級品!シリーズ第3弾「マカロンはマカロン」

テレビドラマ「シェフは名探偵」があまりにも
良かったので、その原作である、近藤史恵さんの
ビストロシリーズ第3弾「マカロンはマカロン」
を読みました。

商店街の小さなフレンチ・レストラン
「ビストロ・パ・マル」は気取らない
本当にフランス料理が好きな客の心と
舌をつかんで離さない。
シェフの三舟は、無口でちょっとぶっきら棒。
髪を後ろで束ね、髭がなかなか特徴的。
外国人に言わせると「サムライ」だ。
そんなシェフの特技はなんと、謎解き!?
シェフを慕うスーシェフの志村。
ワイン好きが高じてソムリエになった
紅一点・金子、そしてギャルソンの高築。

・コウノトリが運ぶもの
フランス料理と和解したい・・・と
「パ・マル」にやってきた、自然食品を
扱うお店の女性店長。
なにやら理由がありそう。
シェフの三舟は静かに彼女の話に耳を
傾ける。

・青い果実のタルト
ある日、パ・マルに来店したお客さんから
ブルーベリーのタルトを注文された。
パ・マルは、そのタルトは焼いていない。
不思議に思ったスーシェフの志村が
SNSを見ると、パ・マルのブルーベリーの
タルトがおいしいとブログに写真つきで
掲載されていた。
店を間違えたのか・・・?心をざわつかせる結末が。

・共犯のピエ・ド・コション
常連の女性客が、再婚することに。
思春期の息子も相手の男性にすっかり
なついているらしい。
ある日3人でパ・マルにやってきた。
豚肉が嫌いな息子が豚足のガレットを注文した。
その理由が、めちゃめちゃ微笑ましい。

・追憶のブーダン・ノワール
ブーダン・ノワールは、豚の血で作るソーセージ。
男性常連客が、ある日婚約者を連れて来店した。
その彼女にブータン・ノワールを薦める。
婚約者は薦められるまま食べるが・・・。
中国人の婚約者には複雑な思いが。

・ムッシュ・パピヨンに伝言を
ある日、おしゃれな大学教授がランチ終了
間際に来店してきた。
ランチを堪能した大学教授。
厨房でプラリーヌ入りブリオッシュの
話をずっと聞いていたようだ。
そこから彼のパリ留学時代の話に
及んだ。悲しい別れ話・・・。
三舟シェフはあることに気づく。

・マカロンはマカロン
美しい女性が二人連れでやってきた。
マダムっぽい女性と背が高くモデルのように
美しい女性。マダムに話を聞くと、女性だけで
営業するレストランをオープンするらしい。
食事が終わり、二人は気持ちよく帰っていった。
ところが数日後、マダムが困り顔で
やってきた。先日の女性と連絡がつかないらしい。
「マカロンはマカロン」という謎の言葉を残していた。

・タルタルステーキの罠
生肉を使うステーキ料理「タルタルステーキ」
を当日のメニューに載せて欲しいと
奇妙な予約が入った。
そしてその日、3人の女性が来店してきた。
一人は妊婦。三舟シェフはハッとする!

・ヴィンテージワインと友情
二十代のグループの中の女性が食事終わりに
ワインの持ち込みが出来るのか聞いてきた。
持ち込み料は一人1,000円。
納得して帰っていった予約の日、ヴィンテージ
ワインを6本持った女性がやってきた。
友人の誕生日だから奮発したらしい。
その日その友人たちがやってきた。
しかし、ワインを持ち込んだ女性がまだきていない。
そして、ギャルソンたちは、いや~なシーンを目撃
することに!

シリーズ第3弾もシェフの気づきにハッとする。
途中でもしかしてこんな展開?と読めたりするが、
その予想をはるかに超える驚き。

家族の話、恋の悩み、複雑な思い。
心に響く感動するエピソードもあれば、
気づきたくなかったと心がざわめく展開もある。

特に女性の「闇」が垣間見られるエピソードは
ちょっと怖い。

それでも、今回も何度でも読み返したくなる。
そんなお話が多くて癒された。

続きは出るのかな~。期待大。

『マカロンはマカロン』
著者:近藤史恵
出版社:東京創元社(創元推理文庫)
価格:¥792(本体¥720+別)

読み終わると幸せな気持ちになる「ヴァン・ショーをあなたに」

テレビドラマ「シェフは名探偵」があまりにも
良かったので、その原作である、近藤史恵さんの
「ヴァン・ショーをあなたに」を読みました。

とても素敵なお話ばかり・・・。

商店街の小さなフレン・チレストラン
「ビストロ・パ・マル」は気取らない
本当にフランス料理が好きな客の心と
舌をつかんで離さない。
シェフの三舟は、無口でちょっとぶっきら棒。
髪を後ろで束ね、髭がなかなか特徴的。
外国人に言わせると「サムライ」だ。
そんなシェフの特技はなんと、謎解き!?
シェフを慕うスーシェフの志村。
ワイン好きが高じてソムリエになった
紅一点・金子、そしてギャルソンの高築
この4人でお店をまわしている。

●錆びないスキレット
めずらしくシェフと志村が言い争っていた。
原因は、シェフが野良猫に餌付けをしたこと。
幸いにも常連のお客さんに引き取ってもらった。
その代わり、常連さんのスキレットの手入れを
することに・・・。
ある日、引き取られていった猫が同居している
猫と一緒にまたしてもパ・マルに現れた。
2匹の猫の首にはなぜか干し魚の入った袋が
つけられていた。誰が、、何のために?
その真相があまりにも切ない。

●憂さ晴らしのピストゥ
ベジタリアンのお客さんから予約が
入った。結構難題だが、三舟シェフは工夫に
工夫を重ねて出している。
ある日、三舟シェフの元同僚だった
男が店にやってきた。
男の店で彼が作るソースには秘密があった。
それはいったい・・・。

●ブーランジュリーのメロンパン
「ビストロ・パ・マル」のオーナーが
今度は女性二人が作るパン屋を出すという。
軽食も置きたいというパン屋の女性たちは
三舟シェフの料理レシピを習得にやってきた。
こだわりのパンを置きたいと言う女性店長。
「メロンパン」みたいな甘いパンもという
アドバイスを女性店長は頑なに拒否。
何か事情があるようだ・・・・。

●マドモアゼル・ブイヤベースにご用心
常連客の中に、三舟シェフの好きな人が
いるらしい。
いつもブイヤベースをオーダーする、
ニックネームは、「マドモアゼル・ブイヤベース」。
ある日、その女性から予約が入った。
どうも男性連れらしい。
どうする!?金子と高築はヒヤヒヤものだ・・・。
ところが思わぬ展開が待っていた。

●氷姫
ある男性の告白から始まる物語。
それはとてもつらい失恋の物語。
心も体もボロボロになり、パ・マルに
やってきた。結婚するはずだった
彼女はなぜ出て行ったのか?
三舟シェフは、男性の苦悩に心を寄せる。

●天空の泉
ある女性が回想する、若き三舟シェフとの
旅先でのエピソード。
そのたった一度の触れ合いが彼女の
運命を動かす。

●ヴァン・ショーをあなたに
若き三舟シェフの修業時代のエピソード
第2弾。マルシェでとてもおいしい
「ヴァン・ショー」(ホットワイン)
を飲ませてくれるミリアムおばあちゃん。
ところがある時から「ヴァン・ショー」
を作らなくなった。
それは何故なのか・・・?

「タルト・タタンの夢」の第2弾。
謎を解く鍵は料理の中に隠されていて、
三舟シェフがお客さんの話を聞くことで
その謎を解き明かす。

解き明かされた真相に、時に驚き、その想いに
切なくなり、胸がキュンとなる。

そして、シェフが出す料理が、傷ついた心を癒してゆく・・・。

今作では、三舟シェフの修業時代も
描かれる。その意外な一面にほっこりする。

この素敵な物語の数々に、はまってしまった。
何度でも読みたくなる。
何度でも癒されたい。

傑作!フランス料理×ミステリー。

『ヴァン・ショーをあなたに』
著者:近藤史恵
出版社:東京創元社(創元推理文庫)
価格:¥770(本体¥700+別)

美味しくて、ほっこりする「タルト・タタンの夢」

テレビドラマ「シェフは名探偵」があまりにも
良かったので、その原作である、近藤史恵さんの
「タルト・タタンの夢」を読みました。

読んでる途中も読み終わってもとっても
幸せな気分に浸れる、そんな作品でした。

商店街の小さなフレン・チレストラン
「ビストロ・パ・マル」は気取らない
本当にフランス料理が好きな客の心と
舌をつかんで離さない。
シェフの三舟は、無口でちょっとぶっきら棒。
髪を後ろで束ね、髭がなかなか特徴的。
外国人に言わせると「サムライ」だ。
そんなシェフの特技はなんと、謎解き!?

●タルト・タタンの夢
小劇団の人気女優が結婚のため、引退を
決めた。彼女の婚約者は「ビストロ・パ・マル」
の常連。ある日体調が悪いにも関わらず、
接待のため店にやってきた。
そんな中、店の様子をうかがう一人の
女性がいた・・・。

●ロニョン・ド・ヴォ―の決意
極度の偏食がある男性常連客。彼からの予約
が入るとシェフほかスタッフみな緊張する。
予約の日、女性を連れ立ってやってきた。
偏食の彼が注文したのは超癖のある
「ロニョン・ド・ヴォ―」。絶句するシェフ。
しかし皆の心配をよそに結構気に入ったようだ。
閉店後、彼の連れの女性が一人でやってきた。
シェフはそこで彼女の決意を聞くことになるが
シェフは意外な反応をする・・・。

●ガレット・デ・ロワの秘密。
「ビストロ・パ・マル」のスーシェフ
と彼の美しい妻とのエピソード。
フランスで出会った二人。あるクリスマス。
ガレットに仕込まれるべきはずのフェーブが
行方不明に・・・。
いったいどこへ行ったのか?

●理不尽な酔っ払い
店の女性常連客の連れはエッセイスト。
フランス人の彼と別れ、北海道で
エッセイを書いている。
彼との別れ話のいきさつを聞いたシェフは、
あることに気づく。

●割り切れないチョコレート
その日、ちょっと険悪ムードのカップルが。
さらに、男性の方が食事終わり、シェフに
ボン・ボン・オ・ショコラがまずいと
言い放って立ち去った。
その男性は新しくできたチョコレート店の
店長だった。クレームを受けたので
試しにその店のチョコレート買う。
チョコのセットはなぜか奇数ばかり。
後日再び例のカップルが店に訪れた・・・。

こんなミステリーがあったのかと感心した。
フランス料理×ミステリー。
料理の中に謎解きの鍵が隠されていた。
シェフはお客の話を聞くことで、
そこに秘められた思いを解き明かしてゆく。

読み進めると美味しそうなフランス料理が
次々と登場する。まるで自分も味わっている
ような感覚に陥る。

そして、シェフが解き明かした人々の思い。
それに気づかされた時、ハッとする。

読み終わった時に、温かい思いが染み込んでくる。

優しい気持ちになれる、何度でも読みたい
そんなミステリーだ。

『タルト・タタンの夢』
著者:近藤史恵
出版社:東京創元社(創元推理文庫)
価格:¥770(本体¥700+別)

今回の奇跡は本物か!?「バチカン奇跡調査官天使の群れの導く処」

藤木稟さんの「バチカン奇跡調査官」
シリーズの最新刊、「天使の群れの導く処」
を読みました。

今回は、キルギスの教会で起きた
奇跡の調査を行う。
政治情勢が安定しないキルギスで
本当に奇跡は起こったのか・・・?

モスクワ発で香港へ向かうロシアの
旅客機・アエロフロート208便が
キルギス上空で突如エンジンが停止した。
乗客乗員の命を守るため、機長・副操縦士
らは様々に試みるも成す術がない。
もう墜落するという絶対絶命のピンチの中、
突如空が光り、その中から天使たちが現れる。
そして天使たちに導かれた旅客機は、
キルギス国際空港に無事着陸した。

さらに同じ夜、首都郊外のセロ・タシュと
言う小さな町の教会で、巨大なキリスト像が
ひとりでに動いたのだ。
キリスト像が向いた方角こそ、天使たちが
現れ旅客機を救った国際空港だった。

バチカンの奇跡調査官の平賀とロベルトは
その調査のため、キルギスへと向かった。

平賀はバチカンの神父でありながら
優秀な科学者だ。
彼の詳細な調査で、キリスト像が
ひとりでに動いた真相が明らかになってゆく。
しかし、旅客機の奇跡は平賀をもって
しても科学的解明に至らない。
今度こそ本当に奇跡が起こったのか!?

ロベルトは、カミッロ神父にキリスト像の
奇跡申請を勧めるが、カミッロ神父は
頑なに拒否をする。
その態度に疑念を抱くロベルト。

かたや、平賀は教会で偶然手にしたものを
シン博士に調査を依頼するが、シン博士は
危険すぎるからと怒り狂ってしまう。

二つの奇跡を結ぶあまりにも衝撃的な真相。
そして、平賀とロベルトに絶体絶命の
危機が訪れる!

今回際立ったのは、平賀が全く空気を
読まないところ。
シン博士に感謝を伝えなさいとロベルトに
注意され、素直に従うところが可愛かった。

さらに面白かったのは、キルギスの警察が
全く調査に協力してくれず、困った二人が頼った
のは、上司のサウロ大司教。
なんとサウロ大司教は、ロシア正教会
総主教を動かしてしまった。
凄い力業。さすがの警察もロシア正教会
総主教には逆らえない・・・。

平賀とロベルト、この神父コンビの
活躍は、いつも心を癒してくれる。

次回作も楽しみ!

『バチカン奇跡調査官 天使の群れの導く処』
著者:藤木稟
出版社:KADOKAWA(ホラー文庫)
価格:¥792(本体¥720+税)

バチカン奇跡調査官シリーズ、短編集第5弾「三つの謎のフーガ」

「バチカン奇跡調査官」シリーズの短編第5弾は
ミステリー作品3編が収録。
短編だけれど、長編のような読み応え!
難解な謎に挑む、人気キャラたちに思わずニヤリ。

イタリアの次期大臣と目されている
人気の国会議員、ベルージェ氏が
雑誌のインタビュー中、何者かに
狙撃され亡くなった。
多数の目撃者がいる中での殺人。
しかし、誰も狙撃者を見た者はいない。
まるで透明人間による殺人のようだった。
この不可思議な事件の謎を解明するのは
イタリア国家治安警察隊のアメデオ大佐。
しかし、アメデオに解けるはずもなく、
またしても、「あいつ」の力を借りることに。
そして、一番苦手な心理捜査官・フィオナと
ともに事件の捜査を開始した。
【透明人間殺人事件】

チャンドラ・シン博士のもとに、親族の
叔母から連絡が入った。
「夫の遺言を誰も解読できない。解読
できないと息子が相続権を失ってしまう!
知恵を貸して欲しい!」と・・・。
暗号解読と言えば、ロベルトだ。
シン博士は、ロベルトに暗号解読を依頼する。
【ダジャ・ナヤーラの遺言】

休暇を一緒にどうか?と珍しく平賀の方から
ロベルトに誘いがかかった。
そして一緒に「蜘蛛男」が出没するという
村にやってきた。
壁を這って移動したり、車に張り付いたり
と人間ではありえない動きをするという。
平賀は本当に蜘蛛男がいるのではないかと
目をキラキラさせているが・・・。
【スパイダーマンの謎】

身勝手な人間の心の闇に斬り込んだ。
超難解なミステリーあり、
また、緻密な暗号解読の過程が面白く、
さらに親族の絆と愛情の深さに感動したり、
モンスターの意外な正体に驚愕したり・・・。

バラエティに富んだミステリー。
バチカン奇跡調査官シリーズの奥深さに
心が震えた。

『バチカン奇跡調査官 三つの謎のフーガ』
著者:藤木稟
出版社:KADOKAWA(ホラー文庫)
価格:¥720(税別)