謎 解きの逸品?!?乾くるみ「六つの手掛り」

乾くるみ’と言えば、文春文庫『イニシエーションラブ』があまりにも有名です。はまさきもその1作品だけは読みました。
ラストのたった1行で読者を驚愕させる鮮やかな騙しのテクニックに言葉がありませんでした。ただただボーゼン。すごい作家さんです。

その乾くるみさんの最新刊が文庫で発売されました。ロジックを駆使しトリックを解明していく短編集『六つの手掛り』(双葉社文庫)です。

雪の中の一軒屋で起きた密室殺人事件「六つの玉」、十五年前に起きた爆死事件の真相を語る「五つのプレゼント」、大学での
講義中、マジック好きの外国人教授が殺されるESPカード殺人事件「四枚のカード」、

中身を間違えた手紙と留守電が、エリート会社員殺人の謎を解く「三通の手紙」、
特注の掛軸が、凝ったイタズラ大好きな地方の名士が殺された謎を解明する「二枚舌の掛軸」、
決定的な証拠がありありと存在する、ベテラン作家邸殺人事件「一巻の終わり」。

それぞれの謎を鮮やかに突き崩していく、名探偵・林茶父(はやしさぶ)、見た目は‘太ったチャップリン’。
神出鬼没で不思議な風体をしているのになぜか安心感のある彼は、いつでもその場所に溶け込む。事件はそんなに派手でもなく、
地味なんだけどじっくり読んで‘はっ’とする。そして謎が解明されたあとの気持ちの良さ。なるほどと手を叩きたくなるほどのうまさ。
そしてあとがきにも秘密がありますよ~。

本格ミステリーをこよなく愛する人、「謎解きはディナーのあとで」で謎解きの面白さを知った人にもおススメです。

『六つの手掛り』
著者: 乾くるみ
出版社:双葉社
価格:¥600(税別)